「ポイント禁止」反応割れた大手4社◆誰が損?ふるさと納税規制の裏側【時事ドットコム取材班】

2024年07月06日10時00分

 ふるさと納税の寄付者に対する仲介サイトのポイント付与が禁止されることになり、波紋が広がっている。仲介サイト大手4社の反応は割れており、中には規制撤回を求める署名を集め始めた企業も。総務省が規制に踏み切った背景には何があり、誰が損をするルールなのか。仲介サイトや専門家に取材した。(時事ドットコム取材班キャップ 太田宇律

 【取材班 これまでの特集】

「断固反対」猛反発した楽天G

 総務省は2024年6月25日、利用者にポイントを付与する仲介サイトを使って自治体が寄付を募ることを、25年10月以降は禁止すると発表した。主な理由は、ポイント付与をめぐる仲介サイト間の競争過熱。各自治体がサイト側に支払う手数料がポイントの原資に含まれているとすれば、規制によって自治体の手数料負担が減ることが期待されるという。

 発表に対し、ふるさと納税の仲介サイト大手4社の反応は割れた。反対の立場を鮮明にしたのは、「楽天ふるさと納税」を運営する楽天グループ。三木谷浩史会長兼社長は自身のX(旧ツイッター)で「地方に恩返しという思いをぶっ潰そうとしている。断固反対する。傲慢すぎる」と猛反発した。

 楽天ふるさと納税のサイト上では、総務省の発表について「自治体と民間の協力、連携体制を否定するもの。地方の活性化という政府方針にも大きく矛盾する」と批判する声明を公開。「政府、総務省に強く申し入れたい」として、ポイント付与禁止の撤回を求めるオンライン署名を呼び掛けている。

賛成?静観?大手サイトに温度差

 他の大手仲介サイトは、それぞれ温度差のある反応を見せた。

 「ふるなび」を運営するアイモバイル(渋谷区)は、ポイント禁止について「制度の適正化および当社や寄付者にとっては一長一短あると受け止めている」と取材に回答し、賛否には言及しなかった。楽天ポイントなどに交換できる「ふるなびコイン」については、「既に付与済み、または付与予定のものは引き続き利用できる」とサイト上で説明しているが、25年10月に向けた具体的対応については明らかにしていない。

 「さとふる」(東京都中央区)は、「ふるさと納税制度が安定的に運用され、今後の健全な発展につながる良い整備であると考えている」と賛成の立場。禁止される25年10月までに、PayPayポイントなどに交換でき、利用実績に応じて付与率や交換率が段階的に変わる「さとふるマイポイント」をどうするかについては「決定していない」と述べるにとどめた。

ポイント制早期撤退、なぜ?

 大手4サイトの中で唯一、現在ポイント付与をしていないのが「ふるさとチョイス」だ。23年4月、他社ポイントに交換できる「チョイスマイル」がもらえるサービスを開始したが、半年ほどで付与を終了していた。運営企業の「トラストバンク」(品川区)に経緯を取材した。

 同社の宗形深執行役員は、「寄付者の方からすると、どの仲介サイトを使うか判断する上で、やはりポイントは一つの基準になる」と説明。国内初のふるさと納税ポータルサイトとして、ふるさとチョイスを2012年9月に開設したが、後発の仲介サイトが次々にポイント付与を始めてシェア争いが激化する中、同社でもポイント制の導入を検討することになったと振り返る。

 ただ、宗形氏は「利用者が少しでも高いポイント還元率を求めて寄付先を探すようになると、どこのどんな自治体に寄付したのか覚えてもらえないという問題意識が当初からあった」と明かす。応援する自治体とさまざまな形で関わる「関係人口」を増やし、地域活性化を図るというふるさと納税の趣旨に、ポイント制はそぐわないのではないか。そうした社内議論の末、チョイスマイルの付与は短期間で終了することにしたという。

誰が得で誰が損?専門家解説

 今回のルール変更では、仲介サイトだけではなく、寄付者や自治体も影響を受ける。誰が得をして、誰が損をするのか。ふるさと納税に詳しい慶応大学総合政策学部の保田隆明教授に話を聞いた。

 ―今回の「ポイント禁止」をどのように見ていますか。

 制度の健全化に向けた、良い動きだと受け止めています。ふるさと納税は住民税が原資ですから、寄付額が1兆円規模に膨らんでいる現状で「住民税が個人のポイントに化けている」と受け止められてしまうと、批判が高まって制度維持が難しくなる恐れがある。総務省はそこを懸念したのでしょう。

 ―新規制では誰が得をして、誰が損をするのでしょうか。

 まず、寄付者にとってみれば、それまでもらえていたポイントがもらえなくなるので純粋に損です。一方、自治体にとっては大きな変化はありません。自治体が寄付を募るのに使える経費は、寄付額全体の5割までで、返礼品に使えるのは経費の6割、つまり全体の3割までと定められています。経費枠の残る4割、全体の2割の一部が仲介サイトの利用手数料などとして支払われているわけですが、ポイント禁止になってもこの負担額はおそらく変わらないとみられるからです。

  ―仲介サイト側はどうでしょうか。

 仲介サイト側は、これまで自社の利益を削る形でポイントを付与して、寄付者の囲い込みを図ってきました。ポイント禁止によって、各社は身銭を切った「チキンレース」に参加しなくてよくなる一方、自治体から支払われるサイト手数料が減らないとすれば、「寄付者が損をして、仲介サイトが得をする」構図だと言えます。ただ、大手4社の反応が分かれたのは、ポイント制が自社のシェア獲得に有利に働いていたかどうかが異なるためでしょう。

  ―ポイントでアピールできなくなると、各サイトはどう変化するでしょうか?

 どのサイトも扱っている返礼品がほとんど同じで、ポイントはもらえないとなれば、ポイント以外のキャンペーンを行って競合サイトと差別化を図る可能性はあると思います。寄付者にとっては、確定申告の手間を考えると、利用する仲介サイトは一つにした方が利便性が高い。今後も何らかの形でサイト間の競争は続くでしょう。

  ―ふるさと納税制度は今後どうなっていくと考えられますか。

 大きくは変わらないと思います。ポイントはあくまで「付加価値」でしたので、ポイント禁止によって寄付者がふるさと納税をやめることはないでしょう。ふるさと納税は「推し括」のようなもので、ポイントや返礼品をもらえるからではなく、「推し」の自治体を応援することに本来の意義がある。仲介サイト側も、寄付者が「推し」を見つけやすいよう、各自治体の魅力をプロデュースしていってほしいと思います。

時事コム取材班 バックナンバー

話題のニュース

オリジナル記事

(旬の話題を掘り下げました)
ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ