新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的に政府は4月7日、東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、兵庫、福岡の7都府県に緊急事態宣言を発令。これらの地域では、「生活の維持に必要な場合」を除く外出自粛だけでなく、人の集まるイベント開催の自粛が要請された。このため、劇場や映画館、ホールなどの施設は多くが閉鎖され、予定されていた映画の公開や舞台公演など各種興行は中止や延期となっている。
公演が中止、延期になれば興行収入もなくなり、関係者の生活にも直接の影響が出る。特に、舞台芸術の関係者を取り巻く状況は深刻で、3月30日には劇作家、演出家、音楽家ら舞台芸術関係者が内閣府・文化庁に公演自粛の損失補塡(ほてん)を要請した。政府はフリーランスを含む個人事業主に最大100万円を給付する方針だが、16日には緊急事態宣言が全国に拡大され、感染の終息が見通せない中で関係者の間には不安が広がっている。
舞台芸術の原資となる興行収入は、チケット単価×会場座席数(収容人数)×公演回数が基本。これに加え、パンフレットや関連のCD、DVD、グッズなど物販の売り上げもあり、漫画やアニメ等を原作とする2.5次元と呼ばれる舞台公演では、関連グッズの物販が盛んに行われている。また、テレビ局などが公演収録を行う場合はそれに対する対価が、パンフレット広告や会場でのチラシ配布を行う場合には広告収入、ツアー公演がある場合はその公演料などもプラスされる。スポンサー企業からの協賛金、文化庁や文化財団などからの助成金が付く公演もある。こうしたものの合計が興行収入となる。
チケット売り上げの入金は公演終了後
一方、舞台芸術の必要経費は、大きく分けると以下のようになる。(1)演出や脚本等にかかる文芸費(2)出演者に支払う出演料(3)劇場の使用料(4)稽古場の使用料(5)大小道具、照明、映像、音楽、音響、衣装、ヘアメークなどの作成や購入、機材のレンタル費用、それらにかかわる人々の人件費が含まれる舞台費(6)広報宣伝費(7)制作費(1~6以外の公演制作全体にかかる費用全般)―が基本だ。海外からオーケストラを招くような公演では、出演料を含む、移動費、宿泊費(まとめて「招聘(しょうへい)費」と呼ばれる)が加わり、それらが必要経費の大部分を占める。
ただし、こうした経費の原資となるチケットの売り上げが、チケットエージェントから入金されるのは公演の終了後というのが基本的な仕組みになっている。規模の大きな公演になると、すべての精算が終わって収支が出るのは終了3カ月後くらい、文化庁や文化財団などからの助成金が出る場合、それらを含めた精算は年度末になるという。