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元松茂樹・熊本県宇土市長

◇まちおこしの経験を生かして

 今年3月、熊本県中央に位置する宇土市(3万8400人)の市長に、市職員を19年間務めた元松茂樹氏(もとまつ・しげき=45)が当選した。1991年に入庁し、総務課で人事行政などを担当した。現在、課長補佐以上の職員は全員年上の元先輩だけに「やりにくいですよ」と苦笑い。それでも「ずっと人事係として、職員を見てきた。自慢ではないが、他の人よりは圧倒的に職員のことを知っている」と胸を張る。

 市長の基礎を築いたのが「ライフワーク」と語る、地域の祭りやイベントへの参加だ。職員時代、市民や職員の有志で、まちおこしイベントを開催。この中で「住民の望むことと、職員がやりたいことは全然違う。市民のやってほしいことを知れば、おのずと自分の仕事も変わってくる」と感じたという。職員の間にも共感が広まり、最初は10人ほどだった職員からの有志も、今や30人ほどに増えた。「一緒に活動して、腹を割って話せる仲になることが大切」と強調する。

 また、庁内でもさまざまな取り組みで職員をリードしてきた。新たな市の名物を作ろうと、自ら発起人となって職員から有志を募り、地元の飲食店に創作お茶漬けを作ってもらうイベント「お茶漬けプロジェクト」を実施。また、人事係長時代は、給与に反映される人事評価制度を、全職員を対象に導入した。先進的な取り組みに、当時は周囲からの風当たりも強かったという。それでも「自分が間違っていなければ、遠慮することはない。職員には『出るくい』になってほしい」と力強く語る。

 市長が目指す次の目標は、「人が集まる町」だ。熊本市周辺の市町村の人口が増加傾向にある中、宇土市は年々減少を続けている。「前市長の行革で、財政的に一番厳しい時は乗り越えられたが、その分基本的な整備が遅れてしまった」と分析。切り詰め財政から一転、農業や漁業などの一次産業に積極的に投資していきたいと意気込みを示す。

 「職員の時は『どうやったらできるか』だが今は『何をやるか』。まちづくりはライフワークだが、市長がやるのは究極のまちづくり」と目を輝かせる。職員時代に培ったまちづくりへの思いを、次のステージへとつなげる。

〔横顔〕大学1年の長男、高校2年の長女、小学5年の次男の父。選挙と長男の大学受験とが重なったが、それでも「突き進んでいく人間なんで、出なかったら後悔する」と出馬を決意した。

〔市の自慢〕歴史と文化。市内には九州内でも古い貝塚や古墳、遺跡が点在する。

〔宇土市ホームページ〕

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