「許して」悲嘆に暮れる母 並ぶ遺体、見つからない親族―民間人多数死亡のブチャ・ウクライナ
2022年04月08日07時15分
【ブチャ(ウクライナ)AFP時事】ロシア軍の撤収後、民間人とみられる多数の遺体が発見されたウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャは、愛する人を失った住民らの悲しみに包まれている。家族の死を嘆く人や、安否の分からない親族を捜す人。惨状を前に、住民の心は深くえぐられている。<下へ続く>
「許して」。テティアナ・ウスティメンコさん(65)は、殺害された息子セルヒーさん(25)を思い、声を詰まらせた。ささいな口げんかが、今でも頭から離れない。
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セルヒーさんは、退避を渋る母を迎えに車で向かっていた。銃撃音が聞こえた時、ウスティメンコさんは「息子はそこにはいない」と信じていたが、友人2人と命を落とした。1人は頭、もう1人は足、セルヒーさんは背中を撃たれていた。
遺体は3日間野ざらしにしておくしかなかったが、かつてスイセンが咲いていた庭に埋葬した。「どうやって生きていけばいいの」と自問している。
ブチャでは日々、新たな犠牲者が確認されている。墓地には黒い袋に収められた遺体が積み重なるように並べられている。
オレフ・オニシチェンコさん(49)は、14歳のめいとその母を捜しに墓地へやって来た。ブチャを離れたはずだったが、その後、2人の乗る車が燃え上がる映像が流れた。
袋を開けるたび見える遺体は、焼け焦げ、一部しかないこともある。「1カ月前、こんなことが起き得ると誰が想像できただろう」。オニシチェンコさんは、2人の身分証や出生証明書のコピーを手に、消息を追い求めている。