昨年、ソフトバンクは7年ぶりでパ・リーグ優勝を果たしたのに、小林至取締役編成・育成部長は強い危機感を口にする。「今が過渡期と言わずにいつが過渡期なのか」
4番の小久保裕紀が39歳、エース杉内俊哉は30歳。和田毅と川崎宗則が今年、海外フリーエージェント(FA)権を得て去る可能性もある。「常勝軍団をつくる」という親会社の方針を受け、オフに内川聖一、アレックス・カブレラらを獲得したが、同時に新たな若手育成システムの確立に乗り出した。
一つが今年新設する「3軍」。人材の裾野を広げ、試合出場機会を増やすのが主な狙いだ。独立リーグや社会人と試合を組み、競争意識を高めるため、2軍と3軍を対戦させて選手を入れ替えることも検討している。
FAや大型トレード頼みの強化から脱却を図る巨人も、今年から育成選手中心の「第2の2軍」をつくる。「フロントの仕事は一過性ではなく、いかに継続して戦力を供給できるか。育成もおざなりにはできない」と清武英利球団代表。近年、育成出身の山口鉄也と松本哲也が活躍したことで、一段と意を強くした。
他球団もイースタン・リーグで混成チームの「フューチャーズ」や「シリウス」に参加するなど出場機会を増やす取り組みはしているが、単独で「3軍」を持てば抱える選手数は80人を超える。経費がかさみ、効果が確実に上がるとは限らない。中日の井手峻編成担当は「先頭を切ってやろうとは思わない。他球団もその方向になれば(考える)」と言う。既存の2軍の運営にさえ苦慮している球団もあり、潮流の行方は不透明だ。
(取材・プロ野球取材班、文・小野田有希)
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