昨年、埼玉県営大宮球場での西武戦3試合には、全て満員に近い2万人前後の観客が集まった。西武が大宮で公式戦を主催するのは3年連続だ。
本拠地以外での公式戦開催は以前から珍しくない。多くは親会社の事情や興行主らとの縁によるものだった。広島が地元を重視して呉など県内で試合をする一方で、昨年は米子、今年は富山、福井と県外へ出るのは「マツダスタジアムの方が収容人員も収益も大きいが、昔からの関係を大切にしているから」(松田元オーナー)だという。
西武は違う狙いからだった。2007年、ドラフトをめぐる裏金問題で揺れ、観客数は両リーグ最少。危機感を覚えた球団は地域密着を重視した改革を図った。球団名に「埼玉」を付け、08年は地元の所沢で初めて優勝パレードをした。今年は大宮開催も4試合に増やし、「もっと大宮の人にライオンズを感じてもらえるよう、試合数だけでなく営業面も強化したい」と小林信次球団社長。
日本ハムは1軍が毎年、函館や帯広、旭川などで、千葉・鎌ケ谷が拠点の2軍も稚内などで試合をしている。今年道内で行う2軍戦4試合は、会場を公募し、設備などを確認して選ぶ手法を取った。道内に広く観戦の機会を提供するとともに、野球を通じて地域活性化に貢献する狙いがある。
対照的に、ロッテは千葉マリンスタジアムの指定管理者になった06年から他球場で主催試合をしていない。「球場を管理している以上、1試合でも多くやるのが筋」と瀬戸山隆三球団社長。観客が千葉マリンでこそ味わえる楽しみを充実させ、本拠地で張った根を太くすることも、地域密着のあり方だと考えている。
(取材・プロ野球取材班、文・藤井隆宏)
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