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「ポスト岸田」という不思議 「表紙」替えに報道が加担◇政治アナリスト 伊藤惇夫【コメントライナー】

2024年07月02日18時00分

過去の問題?

 永田町(中央政界)にいたころから感じていたが、政治マスコミの特徴の一つは、選挙と人事が「大好物」なことである。もちろん、政治の世界でこの二つがビッグイベントであることは言うまでもない。

 だが、それにしても…。「解散・総選挙はいつか」といった予測記事や、内閣改造の時期や顔ぶれに関する報道は途切れることなく続いている。通常国会が閉会し、焦点だった裏金問題と、それへの対応としての政治資金規正法改正が一段落(?)した途端、新聞やテレビ、週刊誌では一斉に、「ポスト岸田」に焦点を当てた報道が目立ち始めた。

 国民の政治不信は一向に解消されていないのに、あたかも裏金問題が過去の問題だったかのようだ。果たして多くの国民は、現段階で自民党内の権力争奪戦に、それほど関心を寄せているのだろうか。

 現時点で予測不能

 さまざまな報道によれば、自民党内では既に次期総裁に向けた動きが加速しているらしい。そこでカギを握るのが麻生太郎副総裁と菅義偉前首相だとか。「ポスト岸田」の候補として名前が挙がっているのは、石破茂元幹事長や茂木敏充幹事長、それに上川陽子外相、小泉進次郎元環境相、加藤勝信元官房長官らの面々だ。

 関連して、「〇〇と××が会食した」だの「△△が意欲を示した」といった報道も目立つ。だが、岸田文雄首相が続投するかどうかも含め、9月の総裁選がどんな展開になるのかなど、誰が予測できるのだろう。その時点で自民党が置かれた環境がどんなものかで展開は大きく変わる。

 例えば、ギリギリの状態まで追い詰められていれば、党内の力関係にかかわらず、国民的な支持を得られそうな人物が選ばれるだろうし、逆にそれなりに落ち着いた状態であれば、外部の人気は低くても党内の支持が多い人物となる可能性が高い。現時点での予測、臆測にどんな意味があるのだろうか。

「表紙を替えても…」

 リクルート事件の責任を取って、当時の竹下登首相が辞任した後、後継総理への就任を要請された伊東正義総務会長(当時)は、「表紙を替えても中身が変わらなければ駄目だ」と固辞した。

 あれから35年。裏金問題の解明に対する後ろ向きの対応を始め、小手先どころか「小指の先」ほどの対応で終わった政治資金規正法の改正。これらはすべて、岸田首相以下、自民党全員が総ぐるみで行ったことだ。岸田首相に不満をぶつける前に、自民党議員全員が自らの対応を自省してみる必要はないのか。

 「表紙」を替えることで国民の批判をかわそうとしているようだが、自民党の「中身」は全く変わっていないように見える。それを平然と報道して「表紙」の張り替えに加担する一部マスコミを、国民はどんな思いで眺めているのだろうか。

(時事通信社「コメントライナー」の一部を加筆修正しました)

【筆者紹介】伊藤 惇夫(いとう・あつお) 1948年生まれ。自民党本部の広報担当、新進党総務局企画室長、民主党結成・事務局長などを経て2001年より政治アナリスト。政界の裏事情に通じ、明快な語り口に人気が高い。テレビ・ラジオ出演のほか、「国家漂流」「政治の数字」「情報を見抜く思考法」「政党崩壊」など著書多数。

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