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木戸愛34歳、復活への手応えと「懸ける思い」 ジャンボ尾崎の下で若手と汗

2024年07月10日

 新鋭からベテランまで、年齢を問わずに同じ舞台で戦う女子プロゴルフツアー。それぞれの立ち位置で、誰もが懸命に力を尽くしている。今季、ラウンド中の姿や本人の言葉から「懸ける思い」がひしひしと伝わってくるのが木戸愛だ。ツアー初勝利から12年。プロ17年目の34歳は、勢いのある若手プロからも刺激をもらいながら、ひたむきにクラブを振っている。(時事通信社 小松泰樹)

8年ぶりの自己ベストタイ

 木戸は昨季、メルセデス・ランキング99位と厳しい結果に終わったものの、今季前半戦の出場優先順位を争ったクオリファイング・トーナメント(QT)ファイナルステージでランキング6位につけた。7月第1週まで全19試合に出場。開幕から5試合で予選落ち4度とつまずいたが、6戦目からは9週続けて決勝ラウンドへ。その後は一進一退の状況で、優先順位を組み替える第1回リランキングでは14位。これからの夏シーズンで踏ん張り、9月下旬になる次のリランキング順位、さらには7月第1週終了時点で63位のメルセデス・ランキングを上げていきたいところだ。

 4月下旬のパナソニック・オープンレディース第1日。首位に1打差の2位で好発進した。インスタートからの最終9番(パー5)では2オンに成功。2~3メートルのイーグルパットをきれいに決め、8アンダーの64でフィニッシュ。ギャラリーを沸かせた。パー72での64は2016年6月のサントリー・レディースオープン最終日以来、8年ぶりの自己ベストタイ。「100点満点です」。笑顔がはじけた。

 昨年12月11日、父で元プロレスラーの修さんが亡くなった。享年73。修さんはアントニオ猪木が旗揚げした新日本プロレスに参加。玄人受けするテクニックや戦いぶりが人気を博し、関節技を駆使するなどして「いぶし銀」と称された。木戸は長女。報道陣とのやりとりは自然の流れで、その思いに及んだ。5秒、10秒…と沈黙。その間も視線を落とさず、声を詰まらせながら言った。「強い気持ちで頑張ります」

尾崎将司の教えを請う

 昨季を終えたオフから、新たな環境に身を置いた。尾崎将司への師事だ。かねて面識のあった長男の尾崎智春さんにアテンドしてもらう形でジャンボ邸へ。智春さんには、パナソニック・オープンレディースで初めてキャディーを務めてもらった。初日のイーグルにつなげた9番の第2打は、2オンにはぎりぎりのクラブ選択に。「智春さんに『いけるよ』と言われて。いいショットを打てて自信になりました」。リズムよくラウンドできたようだ。

 男子ツアー94勝を誇る尾崎将は、原英莉花や「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」で腕を磨いた西郷真央、佐久間朱莉らの師匠としても知られている。そのレジェンドからは「積極的にいけばいい。チャレンジャーなのだから―。その言葉を頂いています」。シンプルで重みのあるアドバイスは、木戸のキーワードでもある。「しっかりと(体の)前で振る、振り切る。素振りをする時からそこを意識しています」

 伸ばし合いの中で第2日は4位、最終日は11位。トップ10入りこそ逃したが、3日間とも60台(64、69、69)を並べた。パー72の大会で初日から3日続けて60台で回ったのは、18年の宮里藍サントリー・レディースオープン(66、69、68、71)以来。確かな手応えを得た。

22歳で初Vも、近年は下降線

 172センチの長身。神奈川県横須賀市出身で、宮里藍の母校として知られるゴルフの強豪、東北高(宮城)に進学。2学年先輩に有村智恵と原江里菜、1学年上に菊地絵理香がいた。08年7月の最終プロテストに合格。22歳だった12年7月、サマンサタバサガールズコレクション・レディースでツアー初勝利を挙げた。

 16年は獲得賞金が4500万円を超え、女王争いの指標(今はメルセデス・ランキング)だった賞金ランキングで自己最高の19位。だが、そこからは下降線をたどり、19年は賞金ランク74位にとどまって12年から維持していたシード権を失った。若手の台頭が著しいここ数年は、もどかしいシーズンが続いていた。

若き飛ばし屋と一緒に

 6月中旬のニチレイ・レディース。再び尾崎智春さんとタッグを組んだ。その初日、トップに2打差の5位とまずまずのスタート。首位に並んだのはプロ3年目の小林夢果だ。ジャンボ尾崎ゴルフアカデミーで鍛えられた20歳。下部のステップアップツアーで経験を積み、今季はQT8位の資格で前半戦を戦いトップ10入りが5度。第1回リランキングで2位に上がった。ティーショットの平均飛距離を示す「ドライビングディスタンス」が現時点で258.12ヤードの5位という飛ばし屋でもある。ちなみに木戸は238.87ヤードで45位だ。

 木戸は日頃、一回り以上も年下の小林とジャンボ邸で一緒に練習。昨秋はステップアップツアーの試合で同組になったこともある。「夢果ちゃんはとてもパワフル。すごいですね」と感心しつつ、自身を奮い立たせているようだ。智春さんも「飛距離の違いを痛感していると思います。それが肥やしになるでしょうし、若い選手の積極的に攻めていくゴルフなども刺激になっているはずです」と語る。

 木戸の近年のドライビングディスタンスを見ると、23年はランク対象外で231.31ヤード。22年は69位で233.32ヤード。コロナ前の19年は38位の238.70ヤードだった。それらの数値だけで単純に判断できないとはいえ、数年前の飛距離に戻りつつあるのかもしれない。

「いぶし銀」の輝きを報告したい

 ニチレイ・レディースは2日目に74と落としたが、最終日に69で回って21位。智春さんは「期待しています。まずは優勝争いをしてほしいですね。それが自信になると思います」とエールを送る。「一試合一試合、緊張感をすごく抱きながら、強い気持ちで戦っています。何かをつかめそうな気がします」と木戸。視線の先には優勝がある。1988年のツアー制度施行後、最長ブランクでの復活優勝は、22年10月に金田久美子が記録した11年189日ぶりの勝利。勝てばそれを更新する。

 「そこを目指します」。亡き父へ、その成就を報告したい―。「それが一番、強いですね」と素直に胸の内を明かす。娘もまた「いぶし銀」の輝きを放つことができるか。携帯しているツアーメモ帳には、柔和な笑顔の修さんと一緒の写真を忍ばせてある。

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