都民が「仕分け」、蓮舫氏を3位 知事・議会補選の分析(1)【解説委員室から】

2024年07月09日16時00分

 7日に投開票された東京都知事選は当初、自民、公明両党などが水面下で支援する小池百合子知事(71)と、立憲民主党を離党した蓮舫前参院議員(56)の「2強」を軸にした戦いと見られたが、組織を持たない完全無所属の石丸伸二前広島県安芸高田市長(41)がブームを起こし、2位に食い込んだ。同時に9選挙区で行われた都議補選で、8選挙区に候補者を立てた自民党は2勝にとどまり、逆風の強さを裏付けた。両選挙で示された民意を分析し、次期衆院選への影響など、政治の行方を3回に分けて展望する。(時事通信解説委員長 高橋正光)

立民、共産前面が裏目

 都知事選の投票率は60.62%(前回比5.62ポイント増)で、小池氏が初当選した2016年(59.73%)も上回った。主要候補の得票は、小池氏約291万8千、石丸氏約165万8千、蓮舫氏約128万3千。小池氏が現職の強みを生かし、4割を超える得票率の圧勝で、3選を果たした。対照的に、立民、共産、社民3党が組織を挙げて支援した蓮舫氏は失速。石丸氏に37万5千票の差をつけられて3位に沈んだ。

 蓮舫氏は旧民主党政権で、個別事業ごとに予算の無駄をチェックする「事業仕分け」の中心人物だったことから、「仕分けの女王」と言われた。世界一を目指すスーパーコンピューター「京」の事業費について「2位じゃダメなんですか」と、削減を迫った場面を覚えている都民も多かっただろう。都のリーダーを選ぶ選挙で蓮舫氏は1位を目指したが、都民から2位どころか、3位に仕分けられた形だ。

 蓮舫氏は出馬に当たり、「反自民政治」「非小池都政」を掲げた。小池氏と自民党を結び付けることで、国政の対立構図を知事選に持ち込み、自民党政権に批判的な票を取り込む狙いだ。

 このため、立民の泉健太代表(49)、共産の田村智子委員長(59)ら党幹部が蓮舫氏の応援演説に立ち、自民党の裏金事件を徹底的に批判した。この結果、蓮舫氏は、両党の候補とのイメージが定着した感は否めない。こうした争点設定、選挙戦術が裏目に出たのは間違いない。

 このことは、蓮舫氏の得票数と前回21年衆院選や22年参院選の結果を見れば分かる。前回衆院選の比例東京ブロックでの得票は、立民約129万3千、共産67万、社民9万3千で計205万6千。前回参院選東京選挙区では、立民2候補の得票が104万2千、共産68万5千、社民8万6千で計181万3千。3党で190万前後の基礎票がある。

 今回、連合東京が小池氏を支持した分を差し引いても、蓮舫氏の得票が128万超にとどまったことは、3党の基礎票すら固められなかったことを意味している。

 報道各社の出口調査によると、蓮舫氏の無党派層からの得票は、石丸、小池両氏に遠く及ばなかった。3党の支持層すら固めきれず、無党派層にも浸透できなければ、勝利など望めるはずがない。投票率が前回より5.62ポイントも増加した状況下、無党派、若年層に支持を伸ばした石丸氏にも水をあけられ、3位となったのは当然の結果と言えよう。

都議補選も振るわず

 一方、都議補選で、立民、共産両党は7選挙区で候補者調整し(立民3、共産4)、互いに支援し合った。このうち、江東区は衆院東京15区と選挙区が重なり、今年4月の同補選で共産が立民新人を全面支援し、勝利に貢献。今回は、立民が共産新人の支援に回った。

 また、品川区では共産が候補者を立てず、立民を支援。品川区が地元の共産・小池晃書記局長は「生まれて初めて、わが党以外の候補者に一票を入れた」と両党の選挙協力をアピールした。

 結果は、立民は自民との一騎打ちとなった足立区で僅差で勝利したが、1勝2敗の負け越し。共産は4選挙区で全敗。特に共産は、裏金事件で党員資格停止の処分を受けた下村博文元文部科学相の地元・板橋区で、自民元職に敗れた。少なくとも東京では、立民、共産両党が衆院小選挙区の候補者を一本化しても、議席を確保するのは容易ではない現状を浮き彫りにした。

 立民は4月の衆院3補選で、共産の支援も得て全勝。与野党対決となった5月の静岡県知事選でも、推薦した前浜松市長が、自民推薦の元副知事を破った。都知事選に蓮舫氏を立てたのは、「首都決戦」を制することで、次期衆院選へさらに弾みを付け、自公両党を過半数割れに追い込むことも狙ってのこと。

 しかし、想定外の3位と惨敗。都議補選でも負け越し、二重のショック。立民は次期衆院選に向け、共産との協力の見直しを迫られることになるだろう。

共産、トップ交代の効果見えず

 共産党は前回の衆院、参院選でいずれも議席を減らし、昨年4月の統一地方選でも後退。今年1月の党大会で、23年ぶりに委員長が志位和夫氏(69)から田村氏に交代した。100年以上の歴史がある共産党において、女性の委員長は初。しかし、党勢の退潮傾向に歯止めがかからない状態が続いている。

 6月の沖縄県議選で、改選7議席から4議席に大きく後退。立民と選挙協力した今回の都議補選で、議席を得られなかった。「田村体制」誕生の効果は見えないままだ。

 都知事、都議補選中の今月4日午後。東武東上線ときわ台駅の北口広場で、石丸氏と共産の都議候補が背中合わせでそれぞれ、街頭演説会を開催。都議候補の応援には、小池書記局長が駆け付けた。共産の聴衆は目算で、石丸氏陣営の5分の1程度。猛暑の中、高齢者が目立った。党員の若返りが依然、大きな課題であることを印象付けた。

 共産は1月の大会決議で、次期衆院選比例での目標を「650万票、得票率10%以上」と掲げた。前回実績(約416万票)からすると、非現実的と思える極めて高い数字。もし、得票数、議席ともに減らせば、田村氏の指導力がいきなり、問われかねない。

 蓮舫氏を全面支援した都知事選、立民の協力を得た都議4補選それぞれでの敗北は、このままでは次期衆院選でも苦戦は避けられない党の現状を示している。

 高橋 正光(たかはし・まさみつ)1986年4月時事通信社入社。政治部首相番、自民党小渕派担当、梶山静六官房長官番、公明党担当、外務省、与党、首相官邸各クラブキャップ、政治部次長、政治部長、編集局長などを経て、2021年6月から現職。

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