アジの開きは韓国産、米国産のシマホッケ…干物の原料に輸入魚浸透【大漁!水産部長の魚トピックス】

2024年06月03日09時30分

 日本の伝統食とも言える魚の干物に、外国産の原料がじわり浸透している。製造するのは国内各地の水産加工業者だが、かつて地元でたくさん取れていた魚の水揚げが少なく、原料を確保できなくなっており、輸入魚を使う機会が増えている。(時事通信水産部長 川本大吾)

韓国産など輸入原料が7割

 干物の名産地、神奈川県小田原市の加工業者「山安」では、古くからアジの開きを作ってきた。しかし、近場の漁港でアジを調達できなくなったため、「今は韓国産を中心に、北欧産などを含めて輸入原料が7割近くを占めるようになった」という。

 静岡県の沼津市の加工業者も、輸入原料への依存度は高い。沼津市の業者によると、「地元で取れるアジはごくわずか。良質のアジをコンスタントに仕入れることはできない」という。国産の干物に向く原料を求めて、遠く長崎県などの漁港で水揚げされたアジを扱っているが、それでも十分な原料な確保できないことが多く、輸入で調達することで生産を継続してきた。沼津市の加工業者は「オランダやアイルランド産のアジが減産などの影響で仕入れにくくなっているため、韓国産を仕入れるケースが多い」と話す。

文化干しはノルウェー産のサバ

 干しサバも外国産が主流となっている。サバの主産地である千葉県銚子市の水産加工業者「丸安」によると、乾燥機を使った「文化干し」の原料は「銚子港の水揚げが不安定なため、かなり前からノルウェー産を使っている」と話す。同社では、十数以上前に銚子に揚がったサバを使ったことがあるが、加工に向く質と量が賄えずに継続的な仕入れはできなかった。「国内の他産地のサバも探したが、見つからずノルウェー産のサバで、ずっと文化干しを作り続けている」という。

 急激な円安により、仕入れ値は高くなっている。それでも、丸安は「十分な量が確保できることと、脂の乗りが良いことなど、ノルウェー産のサバにはいい干物を作るのに必要な条件がそろっている」と説明する。高品質のサバの干物を安定的に生産するには、今や国産の原料では賄えないようだ。

人気急上昇、米国産のシマホッケ

 首都圏の台所、東京・豊洲市場(江東区)の加工品専門卸、丸千千代田水産によると、アジやサバのほか、ホッケの開き干しも外国産が目立つという。ホッケはかつて国産のマホッケが中心で、米国産のシマホッケは「水っぽくて不人気だった時期があった」という。ところが、同社は「最近は、焼いて食べるときに身離れが良くて食べやすく、脂が乗っておいしいと人気が上がり、居酒屋を中心に料理店からの注文が絶えない」と明かす。

 このほか、同社によると「干したシシャモは国産原料が少なく、ノルウェーやアイスランド産が使われている。ハタハタやカマスは国産が少ないものの、外国産の代替原料がなくて品薄気味」となっている。

輸入原料で伝統の味を継承

 干物原料に輸入魚を使うことが増える一方、カタクチイワシなどを使った目刺しや煮干し、シラス干し、ムロアジなどを使った「くさや」といった干物については、十分な国産原料があることなどから、輸入魚を使う必要もないようだ。

 水産加工物には製造者(加工業者)の所在地のほか、原料原産地の表示が義務付けられており、干物などを買う際、輸入魚を使った干物などの情報もラベルなどで確認できる。表面に「○○加工」などとされていても、原料が外国産であるケースは今後も増えそうだ。

 円安に加え、世界的に魚需要が高まっているため、日本も簡単に安く魚を輸入できる環境ではなくなっている。各地の加工業者は、かつては地元の魚を使った保存食として干物を生産してきたが、状況は大きく変化した。輸入魚をうまく活用しながら、自慢の干物を作ることで伝統的な製法を守り続けている。

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