【点描・永田町】「増税・減税メガネ」が〝大喜利〟状態

2023年11月20日14時00分

政治ジャーナリスト・泉 宏

 岸田文雄首相が満を持して打ち出した「減税」策が、意に反して国民から批判と反発を浴び、内閣支持率の下落で政権危機が拡大する事態を招いている。巨額の防衛費と少子化対策の財源確保に絡めた「増税メガネ」とのあだ名を嫌っての減税アピールと、次期衆院選に向けた選挙対策だと見透かされたためだ。

 首相は2日、総合経済対策の閣議決定を受けた記者会見で、不名誉なあだ名について「どんなふうに呼ばれても構わない。やるべきだと信じることをやる」と強がり、ささやかれる〝減税解散〟に関しては「先送りできない課題に一意専心に取り組む。それ以外のことは考えていない」とかわしたが、笑顔の陰にいら立ちもにじんだ。

 首相が表舞台で減税に言及したのは9月26日。閣議で総合経済対策の策定を指示した際に「税収増を国民に適切に還元すべきだ」として、減税実施の可能性を示唆した。これを受け10月3日の会見で、自民党の茂木敏充幹事長が「ダイレクトに減税措置等々によって還元することもあり得る」と発言し、世耕弘成参院幹事長は「所得税の減税も当然、検討対象になる」と踏み込んだ。当初は減税に慎重だった公明党も、同6日に石井啓一幹事長が「所得税の方が国民がより実感できる」と軌道修正し、与党の足並みがそろった。

 しかし同17日に自公が首相に示した総合経済対策の提言に、所得減税は盛り込まれなかった。その理由は「所得税に手を付けても、なかなか効果は出てこない。今、必要な緊急の経済対策を優先しようというのが党のマインドだ」(自民の萩生田光一政調会長)というものだったが、首相は翌18日に初めて開催した自民の麻生太郎副総裁、茂木氏、森山裕総務会長、萩生田氏、小渕優子選対委員長との6者会合で「所得減税を経済対策に盛り込みたい」と、慎重論を押し切る形で決意表明した。


政務官・副大臣の不祥事辞任も痛撃

 こうした首相の対応について、自民内には「自ら減税を主導することで『増税メガネ』から『減税メガネ』へのイメージチェンジを狙った」(閣僚経験者)との見方が広がった。ただ国民の反応は極めて厳しく、インターネット上には「選挙目当ての増税隠し」といった辛辣(しんらつ)な書き込みがあふれ、直後の世論調査でも内閣支持率が軒並み政権発足以来の最低を記録する事態に。このため、減税を主張してきた野党は国会審議で「対応が遅く、内容も不十分だ」と首相追及を加速させる一方、主要メディアも減税策を「分かりにくい」「効果が期待できない」などと批判した。

 しかも、この〝減税騒ぎ〟と同時進行の形となった政務官・副大臣の連続辞任が、政権批判をさらに拡大させた。辞任の理由が「不倫」と「選挙違反」で、後者の柿沢未途衆院議員は法務副大臣だっただけに「首相の任命責任は重大」(立憲民主党幹部)と野党は勢いづく。こうした状況を受け、「さらに支持率が下がれば自民内の〝岸田降ろし〟が本格化する」(同党長老)との見方も出始めた。

 折しも11月2日に発表された「2023ユーキャン新語・流行語大賞」の候補で、「増税メガネ」「減税メガネ」が外れたことから、ネット上には「首相への〝忖度(そんたく)〟!」といった書き込みがあふれ、「まさに首相の『メガネ』ネタで〝大喜利〟状態」に。自民内にも「政権は完全な末期症状」(閣僚経験者)との危機感が広がり、笑顔で岸田外交をアピールし続ける首相とは対照的に「もはや来秋まで解散など、できる状況ではない」(安倍派若手)との声が多数派になりつつある。


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◆時事通信社「地方行政」より転載。地方行政のお申し込みはこちら

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