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「再改造内閣」を巡る〝権謀術数〟【点描・永田町】

2023年10月02日

政治ジャーナリスト・泉 宏

 第2次岸田再改造内閣が9月13日、発足した。年内解散説も飛び交う中での新体制スタートとなったが、岸田文雄首相が期待した内閣支持率アップにはつながらず、「何のための改造か」(自民党若手)との声も少なくない。首相と麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長(いずれも続投)の〝権謀術数〟も絡めた水面下での駆け引きとその結末が、3年目を迎える首相の今後の政局運営に不安を広げる原因となったのは否定できない。

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 今回の内閣改造・自民役員人事で首相が狙ったのは「政権発足以来の念願だった自前の人事体制」(側近)で、最側近には「最後の人事のつもりで、幹事長も含めた内閣・党要職の大幅入れ替えと党中枢への岸田派送り込みを目指す」との意向を伝えていた。そのため、インドでの20カ国・地域首脳会議(G20サミット)閉幕後の9月11日朝の帰国時まで「一人で熟考」(側近)し、同日昼からの麻生、茂木両氏や萩生田光一政調会長ら内閣・党要人との協議に臨んだ。

 しかし首相の意向に危機感を強めた麻生氏が、茂木氏と連携して「〝茂木外し〟を含めた大幅人事」の封じ込めを狙い、結果的に首相が両氏の続投を含めた「政権の骨格維持」と派閥順送り人事を余儀なくされたのが実態だ。そもそも首相にとって、党内第2、第3派閥領袖(りょうしゅう)の麻生、茂木両氏を取り込んだ「3頭体制」は「政権安定の生命線」(自民長老)で、「自前人事にこだわれば政権が動揺するとの不安が『大胆な新体制』への越えられない壁になった」(同)とみられる。

 岸田政権は10月4日で発足から2年を迎える一方、来年9月末の自民総裁任期まで1年を切る。総裁任期までの政権運営では、衆院解散断行の可否が最大の焦点となるため、首相は次期臨時国会での冒頭解散も含め、解散風を吹かせ続けて主導権維持を狙うが、「麻生・茂木連合の〝足かせ〟からの脱却が今後の課題」(岸田派幹部)となりそうだ。

「茂木派分断」狙った小渕氏起用だが…

 首相は9月13日午前、まず麻生、茂木、萩生田3氏の続投、そして小渕優子選対委員長(組織運動本部長から昇格)、森山裕総務会長(選対委員長から横滑り)ら党役員人事を決定。この後、臨時閣議で閣僚の辞表を取りまとめ、午後に公明党の山口那津男代表との与党党首会談を開き、組閣本部を設置して新閣僚を首相官邸に呼び込み、皇居での認証式を経て同日夕に再改造内閣を発足させた。首相が新体制づくりでアピールしたのは、過去最多タイとなる女性閣僚5人で、小渕氏も含めると内閣・党での女性登用は6人となった。

 その中で永田町が注目したのは小渕氏の党4役入りだ。茂木派に強い影響力を持ち、「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄元官房長官(6月に死去)の強い「遺志」と、安倍派の〝仕切り役〟である森喜朗元首相の後押しで実現したとされる。特に青木氏は死去直前まで茂木氏を要職から外すよう主張していたため、政界には「茂木派の分断を狙った、したたかな人事」(自民長老)との見方が広がった。

 ただ、小渕氏起用には危うさも付きまとう。同氏は2014年秋に政治資金問題で経済産業相を辞任したが、証拠となるパソコンのハードディスクがドリルで破壊されていたことから「ドリル優子」とやゆされた過去があるからだ。

 小渕氏は就任の記者会見で涙をにじませながら「忘れることのない心の傷」と悔悟の弁を繰り返したが、今後も野党やメディアの追及は避けられず、支持率低迷に苦しむ首相にとって「茂木氏へのけん制より、自らのダメージの方が大きくなる」(自民長老)との厳しい声も少なくない。

〔写真特集〕小渕優子氏

【図解】第2次岸田再改造内閣の顔触れ

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◆時事通信社「地方行政」より転載。地方行政のお申し込みはこちら

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