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前途多難な安倍派の新体制移行【点描・永田町】

2023年09月04日

政治ジャーナリスト・泉 宏

 自民党の最大派閥・安倍派(清和政策研究会)が会長空席のまま、塩谷立会長代理を座長とし、萩生田光一政調会長ら内閣・党の要職を占める、いわゆる「5人衆」を中心とする集団指導体制に移行する方針を決めたことが、永田町に波紋を広げている。派内には新体制に反発する声があり、分裂含みの状況が深刻化するとの見方もあるからだ。

支持率続落で早期解散困難に【点描・永田町】

 今回の措置には、9月中旬にも想定される内閣改造・党役員人事に向け、派の結束ぶりを示して岸田文雄首相に〝圧力〟をかける思惑もにじむ。ただ「仕切り役は首相と連携している森喜朗元首相」との見方も多く、最大派閥の会長不在が今後の党内権力争いでの波乱要因になる可能性は少なくない。

 昨年7月の安倍晋三元首相の非業の死以来、後継会長選びで揺れ続けてきた安倍派(100人)は、お盆明けの8月17日に党本部で開いた総会で、引き続き会長は空席とし、塩谷元文部科学相を座長とする新体制移行を了承した。ただ会長が決まらない状態が続くことで、同派の党内影響力の低下は避けられず、内閣・党人事で冷遇されれば派内の混乱拡大も想定される。

 新体制は、トップの塩谷氏を支える「常任幹事会」を新設し、集団指導体制で派閥を運営する形になった。幹事会メンバーなどは塩谷氏に一任され、萩生田氏のほか、西村康稔経済産業相、松野博一官房長官、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長の「5人衆」を中心に、閣僚経験者で構成した。

 塩谷氏は「(会長候補が)具体的に出てこない中、派閥をしっかり運営していかなければならない」と新体制の下で結束する必要性を力説するが、塩谷氏と共に会長代理を務めてきた下村博文元政調会長は会合後、「納得できる結果ではない」と不満を漏らし、「早期の会長決定」を主張し続ける構えだ。

首相らは「安倍派分裂」に期待?

 派の絶対的支柱だった安倍氏の死去後、新体制を巡って混乱が続いてきた安倍派にとって、首相が断行する内閣・党人事に向け、新体制の構築は不可欠だった。しかし衆目が一致する後継者がいないため、「次善の策」として集団指導体制の選択を余儀なくされた。このため「安倍派」の呼称も維持する。内閣・党人事を受け、次期臨時国会での衆院解散も取り沙汰されるだけに、派内では「健全な形での後継体制づくりができなければ、他派閥からばかにされる」(閣僚経験者)との不安は募るばかりだ。

 そもそも同派の「仕切り役」とされる森氏は、2012年12月の衆院選に出馬せずに「政界引退」したが、その後も東京五輪・パラリンピック組織委員会会長を務めるなど、中央政界への影響力を維持し、「安倍派の事実上のオーナー」(自民長老)とみられている。岸田政権の発足後は首相の相談相手となり、「内閣・党人事での安倍派の扱いは俺が決めた」と公言するなど、「今後も人事の窓口は森氏」とされる。このため新体制移行を受け、20日に長野県軽井沢町で開催された同派の研修会では、参加議員の間で不満と不安が隠せなかった。

 その一方で、首相や麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長は、安倍派の混乱に「高みの見物」(自民長老)を決め込む。新体制移行後も「5人衆」の後継争いが続くことは確実で、「安倍派が混乱していれば、人事で気を使う必要もない」(首相官邸筋)からだ。 首相周辺からは「巨大派閥が空中分解すれば、長く続いた清和会支配も崩壊する」との声が漏れてくるだけに、新体制に移行する安倍派の前途は極めて多難だ。

(2023年9月4日掲載)

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◆時事通信社「地方行政」より転載。地方行政のお申し込みはこちら

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