政治ジャーナリスト・泉 宏
4月の統一地方選・衆参5補選を巡り、野党は立憲民主党が苦戦する一方、日本維新の会が大躍進し、くっきりと明暗が分かれた。
これを受け、自民党内では「次期衆院選での野党第1党争いの結果が、野党再編やその先の新たな政権枠組みづくりにも影響する」(長老)との見方が広がり、岸田文雄首相の解散戦略とも絡んで「立民VS維新」のせめぎ合いが、永田町で注目の的となっている。ただ「二大野党」と位置付けられた両党の勢力争いが激化すれば、「結果的に岸田政権の安定化につながる」(自民長老)ことにもなりかねないのが実態だ。
立民と維新はここに来て、1カ月後に迫った通常国会の会期末をにらんだ与野党攻防も見据え、昨秋から基本的に維持してきた共闘関係を実質的に打ち切った。野党第1党として次期衆院選を経て「自公政権の受け皿」となることを目指す立民が、そのライバルとなる維新を「自民寄り」と批判し、維新が猛反発した結果だ。立民の泉健太代表は5月12日の記者会見で「幾つかの法案を(維新との)政策共闘の中で提出するが、これが最後だ」「わが党は独自の道をしっかり歩んでいく。自民と似通った考え方では政権交代の選択肢にはならない」と共闘解消を宣言した。
立民と維新は通常国会でも国対委員長らで構成する連絡会を開くなど連携を強化し、立民側には衆院選での選挙協力への期待もあった。しかし維新が統一選で議席を大幅に増やし、衆院和歌山1区補選で勝利すると、立民内の空気は一変。次の衆院選で野党第1党の座を奪われかねないとの危機感から、5月10日の両院議員懇談会では「維新との違いを明確にすべきだ」との意見が噴出し、これが泉氏の「決別宣言」につながった。
解散にらみ、虚々実々の会期末攻防へ
両党は国会審議中の重要法案への対応でも、足並みの乱れを露呈した。
与野党各党が終盤国会の最重要課題と位置付ける防衛財源確保法案について、立民は共産党などと連携して採決遅延を狙った衆院財務金融委員長の解任決議案を提出。しかし維新は「昭和のやり方」(遠藤敬国対委員長)と批判し、国民民主党と共に協力を拒否した。これに対し、立民の安住淳国対委員長は「昭和の何が悪いんだ。都合良く自民の後ろを付いていって金魚のふんみたいになったら終わりだ」と口を極めて維新をののしり、対立は決定的に。
こうした「二大野党」のいがみ合いを横目に、「岸田1強」の政局運営を掌中にしつつある首相は、地元・広島で19日から3日間の日程で開催された先進7カ国首脳会議(G7サミット)での成果を内外にアピール。この間、主要メディアの政治報道はサミット一色で、本来なら緊迫するはずの重要法案を巡る国会会期末に向けた与野党攻防も「サミット休戦」となり、自民内では解散断行論が加速している。
一方、有力週刊2誌は5月の連休大型企画で「6・21会期末解散」を前提に、各党の獲得議席予測や選挙後の政局展望を掲載し、「大増税解散で永田町激震」「岸田自爆解散で『維新大連立政権』爆誕」といった刺激的な見出しを掲げた。「防衛増税」などへの批判で自公が大幅に議席を減らすという予測に基づくものだが、選挙アナリストの多くは「注目集めの企画で、実態と懸け離れている」と指摘する。
いずれにしても会期末まで、あと1カ月。立民と維新の主導権争いが自公政権に利するかどうかを含め、サミット後は虚々実々の会期末攻防が展開されることになりそうだ。
(2023年5月29日掲載)
次回【点描・永田町】 表向き「総主流態勢」で政権支持 は6月5日(月)掲載予定