「ガーシー除名」で残された難題【点描・永田町】

2023年04月03日

政治ジャーナリスト・泉 宏

 芸能界のスキャンダルなどを暴く「暴露系ユーチューバー」として、昨年7月の参院選で当時のNHK党(現・政治家女子48党)から比例代表で出馬し、個人で28万票余りを獲得して当選したガーシー(本名・東谷義和)参院議員が、3月15日の参院本会議で除名処分となり、議員の身分を剥奪された。

【点描・永田町】前回は⇒憲政53年「壊し屋」小沢氏の落日

 最も重い懲罰となる国会議員の除名は、現行憲法下では72年ぶり3例目で、国会欠席が主たる理由となるのは初めて。擁立した旧N党の立花孝志党首は除名処分に先立ち引責辞任し、党名変更した政女党(大津綾香党首)は、N党比例名簿で4位の得票だった斉藤健一郎副党首の繰り上げ当選を決めた。15日午前10時過ぎに始まった参院本会議で、前日に除名処分を全会一致で決めた参院懲罰委員会の鈴木宗男委員長(日本維新の会)が結果を報告。これに対し政女党の浜田聡政調会長がガーシー氏の代理として弁明し、各党代表が賛成討論を行った。

 その中で、浜田氏は「除名処分は憲法違反」「ガーシー氏は(処分を)永遠に受け入れない」などと主張。各党代表はそろって「ルールを守らないのは有権者への裏切りだ」などと厳しく批判した。記名投票での採決結果は賛成235票で、反対は浜田氏の1票だけだった。

 ガーシー氏は昨夏の参院選前からアラブ首長国連邦(UAE)に滞在し続け、「海外で活動すると公約した」「帰国すると不当逮捕の恐れがある」などとして、当選議員に義務付けられた登院を拒否。4段階の懲罰のうち、3番目に重い「議場での陳謝」を参院から要求されても応じず、除名処分に至った。

国会議員から容疑者に転落

 インターネット上の人気者を比例代表候補に据え、得票拡大によって議席を獲得する選挙戦術は、公職選挙法など関係法規の〝抜け穴〟を巧妙に突いた手法だ。このため今回の除名騒動は旧N党だけでなく、同様の手法を駆使する他の小政党の在り方や、足の引っ張り合いばかりで有権者の期待に応えられない〝多弱野党〟、さらには想定外の事態に対応できない国会の政治的責任が問われる事態となった。

 ガーシー氏に対しては、2月末までに①歳費が月額129万4000円②調査研究広報滞在費が同100万円③期末手当が188万5681円──と、総額約1833万円が支給された。これに3月15日までの日割り支給分を加えると、在任中の支給総額は約1944万円にもなるという。「まさに国民の税金の無駄遣い」ともみえ、与野党から「支給額を制限する新たな対応が必要だ」との声が相次ぐ。

 同氏が国会議員としての「不逮捕特権」を失った直後、司法当局も動きだした。警視庁捜査2課は3月16日、「動画投稿サイトで複数の著名人らを繰り返し脅迫、中傷した」として、暴力行為法違反(常習的脅迫)や威力業務妨害などの疑いで、ガーシー容疑者の逮捕状を取った。併せて警察庁を通じ、外務省や国際刑事警察機構(ICPO)に旅券返納命令と国際手配を要請するなど、「できるだけ早く逮捕すべく、手続きを進める方針」(警察庁幹部)とされる。

 こうして初当選以来、国民の間でもその立ち居振る舞いが注目され続けたガーシー氏は、8カ月余りで国会議員から容疑者に転落。捜査関係者の間では「いずれ逮捕され、実刑となって社会から抹殺される」との見方が支配的だ。

 一方で、残された「多くの難題」に国会がきちんと対応しないと、選挙の在り方も含めた国民の政治不信がさらに深刻化することは間違いなさそうだ。

(2023年4月3日掲載)

【注記】外務省は3月23日、海外に滞在中の東谷容疑者に旅券返納命令を出しました。

次回 首相「キーウ電撃訪問」の舞台裏 は4月11日(火)掲載予定

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