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リーチマイケルが2023年ラグビー・ワールドカップで掲げる「目標」とは?

2023年01月25日08時00分

 ラグビー世界一の座を争う4年に1度の祭典、ワールドカップ(W杯)フランス大会は2023年9~10月に開催される。日本代表の顔、FWリーチマイケル(34)=BL東京=が時事通信のインタビューに応じ、目標や日本代表への思いを語った。(時事通信運動部 安岡朋彦)

 日本代表は2019年日本大会で、初めて8強による決勝トーナメントに進んだ。「前回ベスト8までいけたので、次の大会はベスト8を超えるようにやっていきたい。でも、先を見ずに1試合1試合にフォーカス(集中)できるかがカギになってくるので、1試合1試合ベストを尽くすことを一番考えないといけない」

 その一方で、「勝ちにこだわらないとだめ」と強調する。

「目標は何ですか」

 W杯が迫ると、記者に決まって聞かれる質問がある。

 「目標は何ですか」―。

 「W杯に行きたいです」。そう口にしてはいたが、「正確な答えを出せていない」と感じていた。自身4度目のW杯を控え、自分の目標は何なのかを「真剣に考えていた」という。

 やはり今回も同じ質問をぶつけられた。

 「2023年の個人の目標は何ですか」―。

 「個人」という言葉が含まれていたのにもかかわらず、リーチはあえて「最高の日本代表、最強の日本代表をつくること。それが個人の目標」と答えた。

 さらに言葉を続ける。

 「よく考えてみると、僕は(自分自身が)ワールドカップに行きたいとは思っていない。どちらかというと、どれだけ強いチームをつくるかが大事。練習は(自分が代表に)生き残るためじゃなくて、今まで以上に強いチームをつくるため。いつか日本代表がW杯で優勝できるようにしたい。今回(フランス大会)はそうじゃないかもしれないが、次の大会か、次の次の大会で可能性はあると思う。今はどれだけチームを強くするかが大事」

 最強の日本代表に「僕はもしかしたらいないかもしれない」。だが、そこは問題ではないという。「ここまでの考えに至るのには時間がかかった」。日本代表への思いが強いリーチだからこそたどり着いた結論と言えるだろう。「強い日本代表をつくって、その結果、僕が行くことになったら、それでいい」

代表への変わらぬ思い

 日本代表でプレーしたいという強い思いは変わらない。だから34歳で迎える今年のW杯も、自ら「最後の大会」と宣言することはない。

 「自分からはやめない。呼ばれなくなったらそれで終わり。自分で『最後です』とは言わない。呼ばれたら行く、呼ばれなかったら行かない。高いレベルでやりたいし、日本代表でやるのは楽しいし、勝つのも楽しい。まだまだ日本代表は強くなれるし(その一員として)強くなりたい。代表にいられるのはすごく限られた時間。キャリアの中で限られた時間だから、できるだけ選ばれるようにしたい」

 ベテランの域に入ったものの、日本代表は今も中心選手としてリーチを必要としている。グラウンド内外での存在感は別格。昨秋の代表活動では、国内で行われたオーストラリア代表に準じる同国A代表との3試合にニュージーランド戦、そして欧州遠征でのイングランド戦、フランス戦の全てに出場し、フランカー、ナンバー8としてグラウンドを駆け回った。

進化を求める34歳

 昨秋の代表活動期間中の10月に34歳の誕生日を迎えたが、衰えは見えない。

 「全然34歳っていう実感はない。27、28歳くらいの感じ。自分が年だと思い始めたら、姿勢も悪くなるし、言い訳ばっかり考えちゃうから『周りの選手とあんま変わらないっす』と思ってる」

 日本代表で見つけたライバルは、同じフランカーで23歳の下川甲嗣(東京SG)。リーチをして「すごい選手」「(同じポジションの選手として)プレッシャーを感じる」と言わしめる有望株で、代表の練習では全地球測位システム(GPS)で計測した走行距離やスプリント(短距離ダッシュ)の回数を競っていたという。

 数値はリーチが劣っていたそうで、「下川のおかげで、僕も必死にGPSのデータを上げていきたいと思った」。選手としてはもちろん、年齢が物を言う体力面でもまだ負けるつもりはない。

 欧州遠征でのイングランド、フランスとの試合では、強豪の選手と体をぶつける中で「ラグビーの原点」(リーチ)のフィジカル面の重要性を改めて痛感した。

 「大きい相手に対して(攻撃では)どれだけ前に出られるか、(守備では)止められるかで大きく変わる。体を一回り大きくしたい」

 34歳になってなお、選手として進化するための道を探っている。

優勝できるチームへ「今、卵を育てている」

 日本代表は、15年のW杯イングランド大会で優勝候補の南アフリカ代表を破る番狂わせを演じた。19年大会はアイルランド代表やスコットランド代表に勝って8強入り。着実に力はつけているが、ラグビーに憧れる子どもを増やして裾野を広げ、かつ日本代表に憧れるアマチュア選手を増やさなければ、W杯で優勝を争うようなチームをつくれるだけの人材はそろわない。「憧れ」のチームであるためには、結果を残し続けるしかないと考えている。そして何よりも、日本代表は将来的に優勝する可能性があると信じている。

 リーチは力説する。

 「日本の選手は上手だし、タフで、世界で一番練習している。日本のいいところは、外国人もたくさんいて、交ざって、同じ方向に向かっているところ。力を借り合って、同じ一つの目標に向かっている世界で唯一のチームかなと思う。もう一回、日本にワールドカップを呼んで、優勝、っていうのが見たい。そのためには、今が大事。今は卵を育てている感じ。日本代表でプレーしたいと思う選手をどれだけ増やせるかが大事。常に日本代表を憧れのチームにしないといけない。ちょっと失敗したら一気に弱くなる」

 今年のW杯では1次リーグでイングランド、アルゼンチンの両強豪とぶつかる。2大会連続の8強入りは容易なことではない。

 「やっぱり勝ちにこだわらないと駄目。いろんな人が結果ばかりを見るなとか言うけど、勝たないと駄目。難しいことだけど。準備の段階から勝ちにこだわらないといけない。結果を見ないのはすごく簡単。勝ちにこだわってやらないと駄目」

 だから、胸に秘める目標はベスト8よりもはるかに高い。

 「僕は優勝したい。難しいと思うけど、それくらい高い目標を持って準備していきたい」

父としての目標

 リーチにはラグビー以外にも目標がある。まな娘が本格的にテニスを始めたそうで、「テニスのスキルを上げていきたい。娘と公園でテニスをできるようにしたい」と目を細める。

 子どものテニススクールの日程と合わせて、マンツーマンのプライベートレッスンを受けているという。ラケットを握るのは、大学の体育の授業以来だったが、そこは一流アスリート。「だいぶよくなってきましたよ。バックハンド」。ラグビー選手としてだけでなく、父としても、今年もまた全力を尽くす。

◇ ◇ ◇

 安岡 朋彦(やすおか・ともひこ) 北九州市生まれ。東京都練馬区、カイロ、東京都立川市で育つ。青山学院大卒。2008年12月、時事通信社に入社。社会部、鹿児島支局、運動部(プロ野球ヤクルト担当)、大阪支社編集部(オリックス、阪神担当)、ロサンゼルス特派員を経て、22年1月から再び運動部。

(2023年1月25日掲載)

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