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ジョージア大使つぶやき、人気の秘密は? 「徒然なるまま」フォロワー21万人

2023年04月07日11時30分

 「徒然なるままに…」。こんな文章で始まる駐日ジョージア大使、ティムラズ・レジャバ氏(34)のツイッターが人気だ。在日ジョージア大使館の公式ツイッターのフォロワー数は約3万人だが、大使個人のフォロワー数は実に7倍の約21万人。公務や日常を知的に、ユーモラスにつづったつぶやきに加え、時に過熱気味になるネット空間のやりとりに臆さず意見するところが人気の秘密のようだ。レジャバ氏は「ジョージアの認知度を高めたい」と、多い時で1日に20本以上ものツイートを投稿。大使人気と同国への関心はじわじわと広がっている。(時事通信外信部 羽太康裕)

幼少期を広島で

 ジョージアは、旧ソ連の構成国で、南でトルコ、西で黒海、北でロシアと接する人口400万人の国。かつてはロシア語読みで「グルジア」と呼ばれていた。日本にはなじみが薄いとも言われるが、同国出身の力士や、2019年のラグビー・ワールドカップ日本大会に代表チームが参加したことなどでも知られている。

 レジャバ氏は、学者だった父親の転勤で幼少期を広島で過ごした。早大国際教養学部を卒業した後は、キッコーマンに入社し、営業・マーケティング部門に勤務。15年に帰国し、18年にジョージア外務省に入省した。日本での生活は約20年に及び日本語にも堪能で、19年に公使兼臨時代理大使、21年11月には現在の特命全権大使に就任した。

始まりは「ジェダイの騎士」

 レジャバ氏のツイートが注目を集めたのは、19年10月の天皇の即位の礼がきっかけと言われている。出席したレジャバ氏が着ていた民族衣装が映画スターウォーズの「ジェダイの騎士」のようだと話題になった。どこの国の人なのか?という疑問がツイッター上で上がると、いきなり本人が「ジョージアに1票」と返答、さらにズラビシビリ大統領も「これはジョージアの(民族衣装である)チョハです」と続けて投稿した。臨時代理大使(当時)と大統領が一般のツイートに応じたやりとりがネット記事で紹介されると、大きな話題となった。

 その後も、大手牛丼チェーンで提供された期間限定のジョージア料理(790円の定食)を大使館員らと連れ立って食べに行く姿や、20年7月には、「家族と喧嘩して家出することを決めた」と投稿しながら、「(新型コロナで)外出自粛が呼び掛けられていたからあきらめた」とするつぶやきなどを次々にアップ。気さくでユーモラスな人柄を思わせるツイートは徐々に評判が広がり、フォロワー数も右肩上がりで上昇していった。

 ツイッターにはレジャバ氏個人だけでなく、家族や親族も登場する。今年1月中旬頃から約1カ月間にわたり続いた「親戚の子」を巡る一連のツイートでは、ジョージアから来日した少年を日本のさまざまなものでもてなし、その様子や反応を投稿。例えば、「日本の味」として少年にふるまわれたのは、白米と梅干し、昆布の3品。少年が3品を前に浮かべた何とも微妙な表情にはおかしみがあり、フォロワーからのコメントが相次いだ。

 昨年12月には、レジャバ氏が弟と街を歩いていたとき、民放テレビ局関係者と思われる人から「Youは何しに日本へ?」との質問を受けたと紹介。特命全権大使という立場だけに、「国家機密です」と回答したというツイートも笑いを誘った。

スシロー騒ぎでも

 レジャバ氏のツイートの魅力は、面白いだけでは終わらない。昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻では、隣国の大使としていち早くウクライナ支持の姿勢を表明。 昨夏、安倍晋三元首相の国葬を巡って世論が割れていた際には、故人に対する目に余る言動に心を締め付けられているとし、「たったひとりでも国外からの来賓があるならば、国民が一丸となって対応することが日本の懐(の深さ)ではないのでしょうか」と投稿した。

 今年2月に大手回転ずしチェーン「スシロー」で迷惑動画を投稿した少年に対する批判が過熱した時もツイート。「少年にただならぬ批判が浴びせられております。(中略)しかし、ここでは少年の精神が崩壊するまでの過分な追い詰めを未然に防ぐことも大切です」とし、「SNSでは、津波のごとく、言葉の波に制御が効かなくなることがあります。今こそ、言葉がもつ怖さも優しさも同時に思いたい」とつぶやき、共感を呼んだ。

 レジャバ氏のツイートはSNSを中心に話題となり、氏は各種イベントに招かれたり、テレビに出演したり、さらに歴史や文化、観光地、グルメなど、ジョージアを紹介する本を出版するなど、活躍の場を広げている。ジョージアについて発信し続ける思いなどを聞いた。

子ども時代から母国説明

 -どんな思いでツイッターを使っているのですか。
ツイッターは多くの人に自分の声を伝え、自分の国について知ってもらう上でとても効率がよいので、積極的に使っています。子どもの頃から日本にいて、ジョージアがどういう国なのかについて説明する場面が多くありました。今も大使として、ジョージアのことを知ってもらい、その先に価値を創造できたらいいと思っています。ジョージアの認知度を上げるため、ということがツイッターを活用する一番の理由です。
変なバリアーを持たず、極端な話、ばかだと思われても良いから積極的に発信するのが大事だと考えています。「こんなことを言ったらおかしいと思われるかも」というときも別にいいやと思って投稿しています。

 -安倍氏の国葬を巡るツイートが大きな話題となりました。
私は、国葬に関してどうこう言える立場ではないけれど、悪意を感じる投稿や発言が目立ち、式典の品位や意義が問われていたように感じました。宗教の問題も絡み発言が非常に難しかったですが、参列者の一人として、式典を行うと決めたのなら、しっかり全うしてほしいと考え、意見を申し上げました。

 -印象に残っている反応はありますか。
「ジョージアに行きたい」「ジョージア料理やワインが好き」といったリアクションは、本当にありがたいし、この上なくうれしい言葉です。ネガティブな反応は、実はそれほど多くないです。ネガティブなコメントをされるような内容は発信していないし、両国関係が非常にポジティブということもあると思います。

 -フォロワーが20万人まで増えましたね。
初めの頃は要領も分からず、他国に駐在している1000人くらいのフォロワーがいる大使のツイッターをすごいと思って見ていました。私のフォロワーは当初、何十人というレベルで、自分がこのような状況になるとは全く思っていなかったです。

 -ここまで増えた理由をどう見ていますか。
少しくらい大げさになっても自分の気持ちを純粋に伝えようという思いで、がむしゃらに投稿しています。また、フォロワーの声をしっかり聞くようにしています。コメントを読み、何に関心があるのか考えています。需要に応えられるような、双方向の関係を意識しています。
自分は外国人として日本で育ち、人一倍自分の国について考え、また、日本人がどのように物事を捉えているのかを考える機会が多くありました。どう工夫すれば自分の気持ちや思いが、相手の国の中で伝わるのだろうとたぶん無意識にずっと考え続けてきたのだと思います。

 -今後ツイッターを続けていく上で何か目標はありますか。
これまで築いてきたフォロワーとの信頼関係を生かし、ジョージアの名産品であるワインやその他の商品の普及について、日本に進出している業者をサポートしていきたいと思っています。オンラインをうまく活用できていない業者も多く、彼らを支援していければと考えています。

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