レコード人気なぜ?生産額12年前の25倍◆若者もハマるアナログの魅力 #データの深層

2023年12月21日10時00分

 レコードの人気が高まっている。2022年の生産金額は43億円を超え、過去最低だった10年の約25倍に伸びた。デジタル化が進み音楽配信サービスなどを通じ、いつでも、どこでも音楽を聴ける時代。なぜアナログなレコードの存在感が増しているのか。(時事ドットコム編集部 川村碧

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ハマったきっかけは…

 23年11月上旬、音楽ソフト販売大手「タワーレコード」のアナログ専門店「タワーヴァイナルシブヤ」を訪ねた。中古品も含め、国内最大級の7万枚の品ぞろえを誇る店内はお目当てを探す客でにぎわっている。

 20代の男子大学生は、1~2年前、好きなアーティストがレコードを出したことを機に聴くようになったという。「レコード店に通ううち、他のアーティストや古い曲にも興味が出てきた。特に昔の曲は音がぜいたくで心地よく感じる。夜にリラックスしながら聴いている」と話す。

 一緒に来ていた幼馴染みの男子学生は「デザインがかっこいいので、ジャケットを部屋に飾っている。レコードをセットして、針を落として、と準備に手間がかかる分、聴くのが楽しみになる」と語った。半年前にプレーヤーを購入し、ロックやジャズなどの20枚ほどを集めたという。この日は5000円ほどの海外ロックバンドのアルバムを選んだ。「少し高いけれど、好きなので。これからもコレクションを増やしたい」と笑った。

生産額は12年で約25倍

 日本レコード協会(東京都港区)によると、レコード最盛期の生産額は1980年の1812億3800万円だ。CDの登場で減少し、2010年に1億7000万円まで落ち込んだが、徐々に伸び始め、22年には、1989年以来の40億円超えとなる43億3600万円に。2010年の約25倍だ。

 タワーレコードでも11年から21年のレコードの売り上げは約25倍に跳ね上がったという。バイヤーの田之上剛さんによると、10年前の客層は40代以上が大半だったが、近ごろは30~40代が中心で、高校生や大学生も増加しているそうだ。「初心者からの問い合わせが増えた。スピーカー内蔵の使いやすいプレーヤーや、おすすめの輸入盤を手頃な価格で提供することで、初めての人でも気軽に聴けるようにしている。以前はレコードを買いに来るのは50代以上やDJ志望者というイメージだったが、裾野は広がっているようだ」と話す。

アーティストがレコードを出す理由

 レコードを出すアーティストも増えていた。日本レコード協会のアニュアルレポートをひもとくと、レコードの年間邦盤新譜数は2022年は462タイトルで、10年前(38タイトル)の約12倍だ。

 新曲を音楽配信サービスなどでリリースするのが一般化している中、あえてレコードを選ぶのは、なぜなのか。

 アナログレコードなどを取り扱う「ソニー・ミュージックレーベルズ レガシープラス」の兼平裕巳副代表によると、若手アーティストの動きが盛んになったのはここ2~3年のこと。「デジタルとは異なる音の良さや、昔の曲をレコードで再発売する先輩を見て、『かっこいい』という雰囲気が生まれたようです。レコードのジャケットを使って自らの音楽を表現する楽しみを味わいたいという思いもあるのではないでしょうか」と推し量る。

50年前の曲、売り切れ続出

 ソニーミュージックグループが売り出した最近の新譜では、YOASOBIの「アイドル」の人気が高く、完全生産限定で完売したそうだ。過去作品の再レコード化も好調で、山下達郎さんが1970~80年代に出したアルバム8作品のレコードは売り切れが続出し、追加で生産。70年代のロックバンド「はっぴいえんど」の再発売レコードもすぐに売り切れてしまったという。「50年前の作品なのに前代未聞の人気が出た。昔からのファンはもちろんいるが、若い世代も買っている」と話す。

 若い世代を引き付ける魅力はどこにあるのだろう。兼平氏は「リアルタイムで知らなくても、サブスクやYouTubeで昔の音楽に触れることができます。70~80年代の音楽は完成度も高く、今聴いても『古い』と感じないのではないでしょうか。今はSNSやサブスクでたまたま出会った音楽をいくらでも調べて聴ける時代。好きなアーティストを突き詰めていくと、最後に行き着くのがレコードなのかもしれません」と分析した。

海外客も支える売り上げ

 今回の取材で驚いたのは、レコード店を訪れる外国人観光客の多さだ。先に取り上げたタワーヴァイナルシブヤでは、客のほとんどを外国人が占める時間帯もあり、洋盤のほか、日本人アーティストのコーナーを巡る姿が見られた。バイヤーの田之上さんによると、円安の影響か、一度に10枚以上購入していくことが多いという。

 30代の外国人の男女は、洋楽の中古レコードなど8枚を購入していた。男性は「圧倒的な品ぞろえで、選ぶのが楽しい。じっくり見て、これだと思うものを選んだ」。女性は「新譜は自分の国と同じくらいの値段だけど、中古品は日本のほうが質が良くて安い」と満足げだ。

 オーストラリア人の30代男性は3度目の来日で、そのたびにレコード店を訪れるという。「日本で売っているレコードのジャケットの保存状態が良いことは有名。日本語で曲の説明が書かれた帯が付いているところも興味深くて魅力」と話す。

 田之上さんは「昔から日本にはいろいろな洋楽を聴く土壌があり、世界中のレコードが集まっている。ネットやサブスクの普及で海外の人も日本の音楽を聴けるようになったことで、外国人ファンも増えている」と語った。

川村碧(時事ドットコム取材班)

 2013年入社。社会部、広島支社、岡山支局、内政部、仙台支社を経て23年2月から時事ドットコム取材班。取材テーマは知人との会話、街中を歩いていて気付いたことなどから掘り下げています。

 趣味は映画、読書、美術館巡り。

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