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野党転落前夜?麻生政権末期に近づく 岸田内閣、止まらぬ支持率低下【解説委員室から】

2023年11月17日17時00分

 時事通信社の11月世論調査で、岸田文雄内閣の支持率は21.3%(前月比5.0ポイント減)、自民党の支持率は19.1%(同1.9ポイント減)で、いずれも岸田政権発足以来の最低を更新した。特に、自民党の支持率が20%を切ったのは、2012年12月の政権復帰後、初めて。岸田政権に対する有権者の厳しい評価は、衆院選惨敗で野党に転落した麻生太郎政権末期に近づきつつあることが、調査結果から読み取れる。(時事通信解説委員長 高橋正光)

【目次】
 ◇政権復帰後初の20%割れ―自民
 ◇「民主主義の危機」菅政権より進む
 ◇自民支持層の内閣支持、麻生政権と同水準

政権復帰後初の20%割れ―自民

 調査は10~13日に、全国18歳以上の2000人を対象に個別面接方式で実施。有効回収率は57.2%。それによると、岸田内閣の不支持率は53.3%(同7.0ポイント増)、「わからない」が25.5%(同1.9ポイント減)。世代別の支持率を見ると、「18歳~29歳」で若干持ち直したが、それ以外の世代では全て減少。50歳代以下の世代はいずれも2割に届かず、60歳代も22.0%(同10.4ポイント減)と大きく落ち込んだ。不支持率は全世代で上昇した。

 性別では、男性の支持率は21.8%(同8.1ポイント減)、不支持率は56.2%(同9.3ポイント増)。女性の支持率は20.7%(同1.8ポイント減)、不支持率は50.3%(同4.6ポイント増)。男性の支持が大幅に低下した結果、男女がほぼ同水準となった。

 自民支持層の内閣支持も50.0%(同10.7ポイント減)と大きく減り、「支持政党なし」(無党派層)の内閣支持も13.9%(同3.2ポイント減)で、低下した。

 一方、自民党支持(19.1%)の性別では、男性22.5%(同2.3ポイント減)、女性15.5%(同1.5ポイント減)。女性の支持が低い。世代別では、50歳代以下は全て2割に届かず、15%前後。60歳代が20.1%、70歳以上が28.4%。このうち、60歳代は、前月比9.9ポイント減で、内閣支持率と同様に大幅に下落した。

「民主主義の危機」菅政権より進む

 今回の結果を、菅義偉前首相が党総裁選への不出馬を表明する直前の菅内閣(21年8月調査)、衆院選を控えた麻生内閣(09年7月調査)とそれぞれ比べると、菅内閣よりはるかに厳しく、麻生内閣に迫りつつあることが分かる。それによると、菅内閣の支持率は29.0%、不支持率は48.3%。自民党支持率は23.7%で、同党支持層の内閣支持率は59.4%だった。

 政界では、内閣支持率と自民党支持率を足した数字が50%を切ると、政権維持に早晩行き詰まる、との説(青木の法則)が広く知られる。菅政権は1回も「青木の法則」を下回ることがないまま、退陣に追い込まれた。岸田政権は、「青木の法則」から約10%も割り込んでおり、政権運営がはるかに厳しい状況にあると言える。

 岸田首相は21年9月の党総裁選で、当時の菅政権を「国民の声が自民党に届いていない。民主主義の危機」と断じ、厳しく批判した。調査結果は、岸田政権で「民主主義の危機」が、菅政権より進んだことを示している。

自民支持層の内閣支持、麻生政権と同水準

 一方、麻生内閣の支持率は16.3%(不支持64.2%)、自民党の支持率は15.1%。「青木の法則」から、2割近く割り込んでいる。また、自民支持層の内閣支持率は48.0%、無党派層では11.1%。内閣、自民党の支持率とも、麻生内閣より若干高いが、自民支持層、無党派層の内閣支持率は、麻生内閣時の水準に迫りつつある。今後、内閣、自民党の支持率低下に歯止めがかからなければ、政権交代前夜の麻生内閣の様相を呈することになろう。

 もっとも、岸田内閣と麻生内閣で、決定的に異なる点が一つある。それは、野党の支持率だ。岸田内閣の支持率低下が進んでも、野党の支持率は低迷したまま。これに対し、麻生内閣当時、野党第1党・民主党の支持率は18.6%で、自民党を上回っていた。政権批判票の受け皿ができていたことが、直後の衆院選で自民党の惨敗、野党転落につながった。

 今回11月の世論調査での、自民党以外の支持率は、維新4.6%(前月比0.7ポイント増)、公明4.1%(同1.0ポイント増)、立憲民主2.7%(同0.4ポイント減)の順。これに、れいわ新選組の1.6%(同0.5ポイント増)が続き、共産(1.1%)と国民民主(0.9%)を上回った。「支持政党なし」は62.5%(同1.4ポイント増)。

 政党支持率は、「自民1強」「他弱野党」の状態。自民支持から離れた有権者は、既成野党には向かわず、野党全体で支持の分散化が進みつつあることがうかがえる。岸田首相は年内の衆院解散を断念し、経済対策の実行に全力を挙げる考えだ。

 こうした状況を踏まえ、次期衆院選を占うと、カギを握りそうなのは、野党側の候補者調整と無党派層の動向。岸田首相が現状で解散しても、小選挙区で野党の候補者が乱立し、投票率(前回21年10月は55.93%、自民が惨敗した09年8月は69.28%)が上がらなければ、自民党の議席(262、過半数は233)は、それほど減らないかもしれない。

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