ラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会で、日本が大一番に臨む。8日のアルゼンチンとの1次リーグD組最終戦は、勝った方が準々決勝に進出。アルゼンチンはこれまでW杯で1次リーグを4度突破しており、最高成績は2007年大会の3位。8強が前回大会の1度だけの日本は、挑戦者としてぶつかることになる。(時事通信運動部 鈴木雄大)
99年W杯以降、日本と差
サッカー大国で知られるアルゼンチンは、ラグビーでも強豪国の一つだ。昨年はニュージーランド(NZ)とイングランドを敵地で撃破した。NZ、南アフリカ、オーストラリアが参加する南半球4カ国対抗で毎年しのぎを削り、フランスなど欧州でプレーする選手も多く、トップレベルでの経験値は高い。
プレースタイルは情熱的。FWは気迫のこもった突進を見せ、バックスは果敢に相手防御を抜きにいく。そしてサッカー王国らしく、多種多様のキックを繰り出して局面を打開する。過去にはケサダ、コンテポーミら名キッカーを生み出してきた。
1990年代まで、アルゼンチンと日本はさほど実力的には変わらなかった。W杯での成績で差がつき始めたのは99年大会。アルゼンチンは1次リーグで日本とサモアを破り、アイルランドとのプレーオフも勝ち抜いて初めて8強入りを果たした。2003年大会では1次リーグで敗退したが、統括団体の国際ラグビーボード(現ワールドラグビー)は世界トップレベルを意味する「ティア1」にアルゼンチンが入ると認定。07年大会は開幕戦で開催国フランスに勝利。初めて準決勝まで進み、3位決定戦でまたフランスを破った。11年大会でも8強入りし、15年大会では再び準決勝まで勝ち進んだ。
ジョセフHCとの因縁
W杯で低迷が続いていた日本は、15年大会で南アフリカからの歴史的勝利を含む3勝を挙げ、ようやく上昇機運に乗った。自国開催の19年大会で堂々の8強入り。先を行っていたアルゼンチンの背中は近づいてきている。日本ラグビー協会の岩渕健輔専務理事は今年、「4強を目指すとなると、アルゼンチンは越えなくてはいけない壁」と話していた。8日の試合で日本が勝ち、2大会連続の準々決勝進出を決めれば、世界に与えるインパクトは大きくなりそうだ。
今大会、日本は1試合ごとに内容が上向いてきている。主将の姫野和樹(トヨタ)、リーチマイケル(BL東京)、ピーター・ラブスカフニ(東京ベイ)のFW第3列は盤石で、SO松田力也(埼玉)はキックの好調を維持。スクラムは3試合を通して安定感を見せた。
対するアルゼンチンはチリ戦で主力を休ませながらも大勝した。初戦でイングランドに完敗し、2戦目もサモアに辛勝だったが、本来の動きが戻りつつある。上り調子の両チームが激突する最終決戦は、競った展開が予想される。注目はファーストスクラム。ここで日本が主導権を握れば、勝利に近づくだろう。
日本のジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)にとって、アルゼンチンは因縁の相手でもある。現役時代、日本代表として出た99年大会で敗北。そして日本代表HCとしては16年11月のアルゼンチン戦で初めて指揮を執り、これも完敗に終わっている。勝って借りを返せるか。