ラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会で、8強入りを狙う1次リーグD組の日本が正念場を迎える。28日(日本時間29日未明)にサモアと1勝1敗同士の対決。負ければ突破が絶望的となるサバイバルマッチだ。通算の対戦成績は日本が5勝12敗と大きく負け越しているが、最近2大会のW杯ではいずれも勝利。今年7月の対戦では前半に退場者を出し、2点差で敗れている。実力は伯仲しており、緊迫した一戦となりそうだ。(時事通信運動部 鈴木雄大)
サモア、過去に8強2度
サモアは1990年代からW杯で存在感を示してきた。初出場だった91年の第2回大会でウェールズを破り、8強入り。95年大会も準々決勝に進んだ(この大会まで国名は西サモア)。5大会連続で出場したトライゲッターのリマ、ニュージーランド代表のキャップも持つツイガマラら名選手も多数。強豪も脅かすほどの力強いコンタクトプレーが、今も昔も大きな武器だ。
99年大会では日本と対戦し、43-9と圧倒した。しかし、この大会以降は一度も8強に届いていない。激しいプレーと危険なプレーは表裏一体で、反則を繰り返してしまうのがサモアの典型的な負けパターン。協会の資金不足などが影響して長期の合宿が組めず、細かいコンビネーションが要求されるスクラムとラインアウトが弱い傾向にあったことも、勝てない原因になっていた。
日本が南アフリカから歴史的勝利を挙げた2015年大会では、3戦目でサモアと対戦。スクラムで優位に立った日本が完勝を収めた。19年大会の対戦では日本がキックをうまく使って地域を取り、4トライを奪ってボーナス勝ち点1も獲得。史上初の8強入りへ大きく前進する試合になった。
代表条件緩和で戦力アップ
ただ、今大会のサモアは甘くなさそうだ。昨年から代表資格条件が緩和され、元オーストラリア代表のSOリアリーファノら経験豊かな選手が新たに加入。さらに、南半球最高峰リーグのスーパーラグビーに昨年から参戦している太平洋諸国の連合チーム「モアナ・パシフィカ」に中心選手を送り込み、レベルの高い試合を経験することで組織プレーが磨かれた。
その成果は確実に表れている。今年8月にW杯前最後の試合で世界ランキング1位のアイルランドに4点差で惜しくも敗れた。16日のチリとの初戦はしっかりとモールを押し、スクラムでもプレッシャーをかけて危なげなく勝利。22日のアルゼンチン戦は落としたが、スクラムは互角で組織的な防御も機能して終盤まで食い下がった。反則で自滅していた過去とは異なる戦いぶりを見せている。
カギ握るセットプレー
屈強でプレー精度も上がったサモアを相手に、日本はどう戦えばいいのか。防御を担当するミッチェル・アシスタントコーチは「力強くボールを運んでくる。スクラムでもプレッシャーをかけてくる。しっかり対処しなければならない」と警戒している。やはりスクラム、ラインアウトのセットプレーの出来が勝負を分けるだろう。日本が15、19年W杯で圧倒できたポイントであり、ここで主導権を握れれば余裕を持って戦える。そしてサモアは激しいプレーによる反則はいまだに多い。日本は規律を乱さずに戦って相手の反則を誘い、PGで得点を積み重ねていくことも重要だ。
日本のキープレーヤーは稲垣啓太(埼玉)、具智元(神戸)らFW第1列、ワーナー・ディアンズ(BL東京)、アマト・ファカタバ(BR東京)らロック陣、そして司令塔のSO松田力也(埼玉)といったところか。イングランド戦から中10日と休養は十分。ベストのコンディションでライバルとの大一番に臨めるだろう。