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過去10戦全敗の高い壁…「ラグビーの母国」イングランドとは伝説の名勝負も

2023年09月15日12時30分

 ラグビーのワールドカップ(W杯)フランス大会で、1次リーグD組の日本は初戦で初出場のチリに快勝し、好スタートを切った。17日(日本時間18日)の2戦目で、前回大会準優勝の強豪イングランドとぶつかる。この「ラグビーの母国」に勝てば1次リーグ突破へ大きく近づくが、過去の対戦成績は10戦全敗。高い壁に挑む。(時事通信運動部 鈴木雄大)

伝説の「3-6」

 両チームの歴史をひもとくと、初対戦は1971年9月。日本を率いていたのは大西鉄之祐監督で、68年に23歳以下のニュージーランド代表、オールブラックス・ジュニアを敵地で破る快挙を遂げた名将だ。イングランド戦でも、再びの番狂わせが期待されていた。

 大西監督はイングランドの攻撃パターンを詳細に分析した。そして大型FWに対抗できる体の強さを持ち、タックルが得意な選手を合宿に集め、徹底的に鍛えて決戦に臨む。9月24日、大阪・花園ラグビー場での第1戦は19-27。残り5分まで同点という大接戦を演じた。

 その4日後、東京・秩父宮ラグビー場で迎えた第2戦には、日本の勝利を信じた観客が殺到。スタンドに収容できないファンをグラウンドの中に入れ、タッチライン際に座らせる異例の措置が取られた。午後7時過ぎキックオフのナイトゲーム。日本はイングランドの猛攻を粘り強いタックルでことごとく止める。展開攻撃でゴールラインに迫る惜しい場面もあったが、双方ノートライ、日本の得点はフランカー山口良治のPG1本だけで3―6の惜敗。勝利に届かなかったものの、壮絶な試合に感動したファンの拍手はやまない。日本ラグビー界にとって伝説の夜となった。

大型FWを誇るイングランド

 79年5月にも19-21と食い下がったが、その後は力の差を見せつけられての敗戦が続く。87年の第1回W杯では10トライを許し、7―60。2003年にも2連敗を喫した。昨年11月の敵地でのテストマッチは13-52。いずれの試合も、大型FWを止められずに失点を重ねた。

 日本がイングランドといい勝負に持ち込むには、71年のようにFW戦で負けないことが大前提。今回のW杯でも同じだろう。日本の攻撃を担当するブラウン・アシスタントコーチは「イングランドはここ100年くらい、同じスタイル。フィジカルで重圧をかけてくることは分かっている」。日本の素早い攻撃の起点となるスクラム、ラインアウト、密集戦でいかに互角に戦うかがポイントになりそうだ。

勝てば三たびの衝撃

 今大会、イングランドはアルゼンチンとの初戦で前半早々に退場者を出して14人での戦いを強いられたが、強力FWを生かして冷静に戦った。トライを奪えなくても、SOフォードが6PG、3DGで27得点を稼いで快勝。大会前の実戦で黒星が先行して不調が伝えられても、やはり底力はある。ボースウィック監督は2015年W杯で日本代表のコーチを務めており、こちらの戦い方を熟知している。厳しい戦いになるだろう。

 ただ、日本のFWにもいくつかの好材料はある。チリ戦でフランカーのリーチマイケル(BL東京)は攻守にわたって激しくプレー。前回大会の主将が心身ともに充実ぶりを示した。ロック陣はアマト・ファカタバ(BR東京)が故障から復帰して2トライを決め、今年は代表戦に出ていなかったワーナー・ディアンズ(BL東京)も途中出場で1トライ。左脚を痛めてチリ戦を欠場したFW第3列の姫野和樹(トヨタ)も、イングランド戦には出場できる見通し。個人能力が高い面々でFWを構成できそうだ。

 もしイングランドを倒せば、前々回大会の南アフリカ戦、前回大会のアイルランド戦に続く歴史的な勝利。71年の「3-6」を上回る衝撃を世界に与えることになる。

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