女優・杏、子育ては「一人じゃ無理」 映画「キングダム」などでも母性あふれる役【インタビュー】

2023年07月17日12時00分

 女優・杏が、3人の子どもと愛犬1匹と共に、「なんとなく面白そう」という期待感を抱きながらパリに拠点を移してから1年がたとうとしている。シングルマザーでフランス語もままならず、慣れない環境での生活だが、「人の助けを借りて、のたうち回って生きているのですが、間違いなく充実しています」と語る。SNSでもその様子を積極的に発信。これまで見せてこなかった大ざっぱな一面もさらけ出している。7月末に映画『キングダム 運命の炎』、9月に『私たちの声』も上演が予定されている中、忙し過ぎる日々を追った。(時事通信大阪支社 中村夢子)

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深夜にコーラとポテチも…「大ざっぱな自分」伝える

 パリと日本の二重生活を始めた頃、始めたのがユーチューブ番組『杏/anne TOKYO』だ。料理をはじめとした日常のほか、ルーブル美術館を自身が鑑賞する様子などを投稿している。企画はほとんど自身で行っている。「思いが詰まった内容だからといって再生回数につながるとは限らない」と苦笑いするが、「やってみたかったこと、伝えてみたかったことがかなって楽しい。『毎週投稿する』とかノルマを決めちゃうとネタ探しに走ってしまうので、無理なく続けようと思います」と語る。

 素顔をさらけ出すのには理由がある。元々、「オタク」気質で、自分の興味のある物事について聞かれると話が止まらなくなる性分。しかし、これまでそういったイメージを持たれることは少なかった。

 「自分では特に意識していませんが、『ミステリアスで、完璧で、しっかりしている人なんじゃないか、ポテトチップスなんか食べたことがなくて、無添加のハーブティーしか飲まないんじゃないか』とイメージされることが多いようです。でも、私だってコーラとポテチを深夜に食べたくなる時もあるんです。料理も適度に大ざっぱだし、キッチンは動画撮影の時だけきれいにしているんですよ」

 しかし、あえてそういった内容を配信するのは、「お子さんがいらっしゃる方に『良い意味でのアバウトさ』を共有し、『子育ては、これぐらい適当でいいよね!』と思ってもらいたい」との思いがあるからだ。

 「どうしても日本は『子育ては女の仕事で、女が頑張る』という考え方が根強い。みんなが声高に『子育ては、一人じゃ無理』と声に出していくことが大切だと思います。フランスでは、みんながベビーシッターを頼んでいるし、朝ご飯用のビスケットもある。うちも、そのビスケットに牛乳というのはよくやります。ご飯を炊くことは愛情としては大事かもしれませんが、毎日じゃなくてもよいのでは」と投げ掛ける。

 ただ、そうは言っても生真面目な性格。息抜きの方法について尋ねると、「子どもが寝た後の数時間に漫画やドラマ、ゲームをしている。あとはネタ帳のような『誰にもみせない日記』を付けています」と言いながら、はにかんだような笑顔を浮かべる。

「キングダム」現場に原作持参するファン魂

 7月28日公開の『キングダム 運命の炎』で杏が演じるのは闇商人・紫夏(しか)という重要な役。元々、原作漫画の大ファンで、「圧倒的なアクションとスケール感。キャストも大河ドラマみたいで、発表されるたび『神配役』だと思っていた。そこに呼んでもらえたのはすごくうれしい」―淡々としながらも熱のこもった言葉がその口からあふれ出る。

 「キングダム」の原作は、原泰久氏が2006年から「週刊ヤングジャンプ」で連載を開始して大ヒット。映画も19年に『キングダム』、22年に『キングダム2 遥かなる大地へ』と重ね、今作はシリーズ3作目だ。紀元前の春秋戦国時代の中国を舞台に、戦争孤児の少年・信(山﨑賢人)と秦の若き王である嬴政(えいせい、吉沢亮)が中華統一を目指す物語で、紫夏はかつて隣国・趙の人質となっていた嬴政に手を差し伸べる母性あふれる役柄だ。

 撮影現場には紫夏が登場する漫画本を持ち込み、何度も見返した。「原作のファンにも見ていただきたいので、ちょっとした絵のトーンでも気になってしまうんですよね」とこだわりを見せる。「前髪も少し固くしないと馬車(に乗った)シーンなどで『パカーン』と上がってしまう。こうなると漫画のイメージがなくなってしまうんです。メイクさんと相談しながら、リアリティーと漫画のギリギリの段階を保てるようにしました」と明かす。

 杏は紫夏を、「癖のある登場人物ばかりの中で、真っ直ぐで輝く月みたいな存在」と話す。紫夏自身も元々、戦争孤児で闇商人の「父」に育てられたという設定。「父」から伝えられた「受けた御礼は全て次の人へ」という教えを守り、嬴政を手助けする。

 「紫夏は身よりのない中で、『父』に何かをしてもらえた。それを見ず知らずの子どもに渡してあげる。これは、人が社会で生きていくうえで大事なメッセージ。うちもたまたま子ども達とは血がつながっていますが、だから世話しているわけではない気もする」と語る。

 「子育てとか日々の生活も家族だけでしているわけではなく、ベビーシッターやドッグシッター、同級生など他人に手伝ってもらっています。次に彼らが困った時は全力で助けたい。『家族じゃないから放っておこう』とか、『彼らには彼らの道があるよね』ではなくて、何か自分にできることはないかと考えているんです」と自身の境遇を重ねる。

 実際、今作の地方ロケの際は、同級生の家族と泊まり込みの“合宿”をして、そこから撮影現場に通ったという。「いつも頼んでいるシッターさんに泊まりで頼むことが難しかったので、同級生を頼りました。そういう意味でも思い入れのある作品で、同級生とも『映画が完成した時、泣いちゃうよね』と話しているんです」と感慨深げに話した。

「大変だ」「つらいよ」ではなく

 9月には、2児を抱えるシングルマザーを演じた映画『私たちの声』も上演される。さまざまな国の女優や女性監督による七つの短編が詰まった映画で、ジェニファー・ハドソンなど著名なキャストが出演する中、日本からは杏が『私の一週間』に出演する。

 同作ではユキが朝食を作り、掃除や洗濯をし、子ども達を保育園へ送り出した後に、経営する弁当屋へ向かって働くというシーンが繰り返される。「母親は『大変だよ』『つらいよ』と伝えるのではなく、ただその日常を描いている。あんなに短いのに泣ける。そういう意味でも『私たちの声』というタイトルは秀逸」と話している。

(2023年7月17日掲載)
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