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西武の外崎修汰が見せた「打球に触れていない」ファインプレー 走攻守で引っ張る名手

2023年07月28日12時00分

 名手とは、華麗なグラブさばきやエラーの少なさ、広い守備範囲を示すことに限らないのだろう。プロ野球西武の外崎修汰内野手に、そう感じさせる一瞬のプレーがあった。7月22日、オールスターゲーム明けの後半戦初戦となった本拠地ベルーナドームでの楽天戦。1―0で迎えた五回の守り、無死満塁のピンチで二塁手として見せた「打球に触れていない」好守備だ。(時事通信運動部 岩尾哲大)

無死満塁で右ゴロ

 この場面、楽天の村林一輝が放ったライナー性の当たりが、右前へ抜けた。西武の右翼手、岸潤一郎が二塁ベースカバーに入った遊撃手の源田壮亮へ素早く送球し、一塁走者が進塁できずアウトに。記録は「右ゴロ」。その間に三塁走者が生還して同点。もし二塁封殺がなければ、追い付かれてなお無死満塁が続くところだったが、1死一、三塁に。西武の先発、今井達也が後続を断ち、この回を1失点にとどめた。

 その裏すかさず、源田が勝ち越しの適時三塁打。これが決勝点となった。源田はヒーローインタビューの後、五回の右ゴロについてこう説明した。「トノ(外崎)が機転を利かせて、捕るふりをした。それでランナーが止まった。岸に『来い!』と言ったら、しっかりと投げてくれた」。プレーの肝になっていたのは、実はボールに触れていない二塁手の外崎だったという。

「トノの機転」が生きた

 映像を見返すと、外崎と打球には距離があるにもかかわらず、確かに一瞬、ライナーで捕るようなそぶりを見せた。その「ジェスチャー」が視界に入る一塁走者の足が途中で止まっており、そのため二塁への再スタートが遅れた。

 このプレーについて、外崎に聞くと「自分がランナーの時も、打球の奥行きの判断が結構難しいことがあり、野手の足の動きとか、雰囲気を見ることがある。自分が守備をしている時も、それは意識している」と答えた。「まあ、見ているかどうか分からないですけど」とも言ったが、効果は結果が物語っている。ハイレベルな、これぞプロと思わせるような奥の深い「妙技」だった。

盗塁はキャリアハイ視野に

 チームの副主将を務める外崎。今季は7月27日現在、87試合を消化した時点で欠場が2試合だけ。打撃では10本塁打と持ち前のパンチ力を示し、出塁率はリーグ5位の3割4分7厘。俊足を生かしての18盗塁はリーグ2位タイの数で、キャリアハイだった2018年の25盗塁を視野に入れる。昨季2度目のゴールデングラブ賞を受賞した守備力も、もちろん健在。源田と組む二遊間コンビの流れるような連係は、野球ファン全体をうならせる。

 今季は同学年で主将の源田が、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で右手小指を骨折した影響により5月下旬まで1軍に合流できなかった中、若手の多いチームを支え続け、球宴にはファン投票で選出された。疲れがたまり、厳しい暑さにも耐えることが求められる夏場。コーチやスタッフからは「きついはずだ」と気遣う声が聞かれる。フル回転している本人は「体的には大丈夫」と言う。

 最近、打率は下降気味。状態が良い時の打撃では球に逆らわず打ち返し、中堅から逆方向にも強い打球が飛ぶ。この意識に関し「しているつもりではあるが、やっぱり試合になると慌てているというか、しっくり来ていない。結果が出てこなくなると、どうしても。感覚的なものがちょっとずつずれてきている感じ」。そう率直に述べ、目を背けることなく連日課題に向き合っている。

「今は一勝一勝を」

 前半戦に7連敗や8連敗があったチームは、球宴を挟んで7連勝をマークした。苦んだ時期との打線の変化に対しては「チャンスをつくれてきている。1死三塁とか、一、三塁とか。それが前はつくれずに、無死二塁でも(その後)凡退ということもあった」と話す。

 7月26日のロッテ戦では、自身が起点となって似た状況をつくった。五回に1―1と追い付かれ、その裏の攻撃。先頭の外崎が2球で追い込まれながらも、しぶとく二塁への内野安打。続く栗山巧がフルカウントから中前打を放つと、外崎は三塁へ進み、次のペイトンの内野ゴロの間に勝ち越しのホームを踏んだ。西武は5―3で勝利。連打や本塁打などで得点を重ねるのは容易ではない。凡打でも得点を挙げられる機会を多くつくることが、佳境を迎えるシーズンで競り合いを制すのにつながってくるのだろう。

 投打がかみ合う試合が増えてきたチーム状態について問うと、外崎は「勢いはあると思うが、完全にチーム力が上がっているとか、そういう感じではない」と冷静に言った。「まだ借金がたくさんあるので、返し切ったぐらいでチーム力が上がってきたなという感じがすると思う。今は順位は関係なく、一勝一勝することが大事」。18、19年はリーグ連覇の一員となり、優勝争いもAクラス争いも経験している30歳。逆襲に向け、走攻守でチームを引っ張っていく。

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