「入梅イワシ」が千葉・銚子の名物に きっかけは保存用の「熟成塩たれ」【大漁!水産部長の魚トピックス】

2023年07月09日10時30分

 「入梅イワシ」と呼ばれるほど、梅雨時に脂が乗っておいしくなるイワシ。初ガツオや秋のサンマに比べると人気は落ちるが、イワシの水揚げがトップレベルの千葉県銚子港(銚子市)では、今年も順調な水揚げ量を示しており、地元の料理店や水産加工業者の需要が例年になく高まっている。(時事通信水産部長 川本大吾)

 銚子市などの6軒の料理店では、毎年6、7月の2カ月間、「入梅いわし祭」と銘打って、イワシづくしのセットメニューを格安で提供。イワシの漬け丼や天ぷら、フライ、つみれ汁を基本メニューにし、さらに店自慢のイワシ料理を合わせて「入梅いわし おまかせ御前」として販売している。

 各店には特に週末、イワシ料理を求める来客が多いという。今年も7月上旬まで順調な売れ行きで、銚子プラザホテル内の和食レストラン「廣半」では、6月中だけでセットメニューが200食以上と、昨年よりも大幅に売り上げが増えたという。他の店ではイワシ料理が早々に売り切れるケースもあるといい、銚子の名物として定着している。

「熟成塩たれ」で半年おいしい

 十数年前から始まったこのイベントは、飲食店などで組織する「銚子うめぇもん研究会」(鈴木政人会長)を中心に行われている。冬には「銚子極上さば料理祭」も開催し、銚子自慢のイワシやサバを目玉に銚子市を活気付けようと実施されてきた。

 イベント開催のきっかけとなったのが、銚子市に隣接する旭市で地魚料理店と宿泊施設を経営する渡辺義美さんが、試行錯誤の末に作り上げた特製の「熟成塩たれ」だ。渡辺さんは、地元で大量に取れる岩ガキの殻を高温で焼き、できた粉末を水に溶かし、塩とタマネギ、ショウガなどの香味野菜と一緒に数週間熟成させ、完成させた。

 三枚下ろしにした水揚げ直後のイワシやサバをこのたれに短時間漬けた後、真空パックし、マイナス60度で保存すると、約半年間も鮮度や身質を保つことができる。渡辺さんは「解凍しても、臭みが消えて鮮度が保てるばかりか、うま味も増す」と説明する。その言葉通り、熟成塩たれには青魚などの鮮度落ちや魚特有の臭みを抑える効果があることが分かり、2009年には特許を取得した。寄生虫・アニサキスの心配もなく、安心して「取れたて」の新鮮な刺し身として味わえる。

イワシ、サバがじわり銚子名物に

 銚子港は昨年まで12年連続で魚の水揚げ日本一を誇っている。銚子のさまざまな魚を仕入れる渡辺さんは「銚子と言えば○○という名物が乏しいため、熟成塩たれを使って名物を作り、県外から銚子へたくさんの人が足を向けてもらえるようになれば」と考え、同研究会に加入する料理店へ熟成塩たれを提供している。

 イワシやサバなどの青魚は、鮮度落ちが早いばかりか、旬の時期でも水揚げは不安定。渡辺さんは「せっかく来店した客が残念に感じないよう、熟成塩たれを使って安定的に銚子自慢の魚を味わってもらおうと考えた」と話す。

 銚子市漁業協同組合によると、今年1~6月の同港のイワシの水揚げ量は、合計約14万6000トンで、既に昨年1年間の水揚げ(約18万8000トン)の8割近くに達し、銚子市や渡辺さんの店がある旭市などの料理店で入梅イワシが大人気となっている。

小型イワシも缶詰原料に

 銚子港でのイワシの漁獲量は比較的高水準だが、漁業関係者は「6月中旬ごろから、刺し身などに向かず、生鮮出荷されない小型魚ばかりになっている」と説明する。冷凍在庫があるとはいえ、刺し身や漬け丼に使う大型魚の品薄は、飲食店にとっては心配だが、小型魚の需要もこれまで以上に伸びている。

 銚子漁港の関係者によると、近年は「缶詰で人気のサバの水揚げが減って、周辺の水産加工場では原料不足に悩まされている」という。小型のイワシは「缶詰用を中心に漁業用の餌として、冷凍加工向けの需要が増している」といい、以前より魚価が上昇している。

 全体に占めるウエートが高い小型魚の需要増に伴い、今年1~6月の同港でのイワシ全体の価格は、平均で1キロ当たり83円と、昨年同期(キロ42円)の2倍近くに上昇。漁業関係者からは、梅雨明け以降の水揚げにも期待する声が高まっている。

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