新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日に「2類相当」から「5類」に引き下げられます。これによって、コロナ下の「ニューノーマル」として定着した感染対策や個人の費用負担も一部変わります。何がどう変わるのか、素朴な疑問とその回答をまとめました。(記事の情報は2023年4月末時点のものです)
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Q.そもそも「2類」とか「5類」って何?
A.危険度による感染症の分類。数字が小さいほど危険
感染症法は、ウイルスや細菌といった病原体による病気を、感染の広がりやすさや感染した時の重症化リスクといった危険度によって主に5段階に分類しています。その分類に応じて、国や自治体が講ずる措置の範囲を定めています。
例えば、危険度が最も高い1類には、エボラ出血熱やペストといった感染すれば命の危険性が極めて高い感染症が該当します。それだけに国や自治体の措置も、入院勧告や建物の立ち入り制限・封鎖、交通制限、汚染された場所の消毒など、極めて強いものになっています。続く2類は結核やSARSといった強力で危険性の高い感染症が該当し、入院勧告や汚染場所の消毒といった強い措置が取れます。
新型コロナウイルスは、1~5類とは別の「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、「2類相当」の扱いとされてきました。
一方、5類は季節性インフルエンザなどと同じ分類で、感染しても行動制限を伴うような強力な措置が取られることはありません。学校や会社から出席・出勤停止を求められることはありますが、自宅療養で完結するケースがほとんどです。
Q.検査やワクチン接種は無料だったけど、「5類」でこれからは?
A.検査は有料、ワクチン接種は2024年3月まで無料
検査は原則有料になります。これまでは医療機関や街中のPCR検査場で無料の検査が受けられましたが、これからは各自で費用負担して受ける形になります。抗原検査キットも自分で購入することになります。
ワクチンの無料接種は2024年3月まで延長されることが決まっています。ただし、年齢などによって接種回数が違うので注意が必要です。
重症化リスクが高い65歳以上の高齢者や基礎疾患がある人、医療従事者などは年2回の追加接種(3回目以降)を受けられます。それ以外の追加接種対象者は9~12月に1回の追加接種が受けられます。
2024年4月以降は、自己負担への移行が検討されていますが、詳細はまだ決まっていません。
Q.感染したら医療費はどうなるの?
A.3割負担で初診料は最大4170円。治療薬は当面無料
これまで治療にかかる費用は公費で賄われ個人負担はありませんでしたが、窓口負担3割を基本とする通常の保険診療に切り替わります。政府の試算によると、窓口負担3割の場合、初診料は最大4170円となり、インフルエンザの初診料4450円と同程度になります。
入院が必要になったり薬が処方されたりすると、別途費用がかかりますが、医療費負担が急激に増えないように軽減措置が講じられます。例えば、入院する場合は高額療養費の自己負担限度額から、最大月2万円が減額されます。薬は、一般的な解熱剤やせき止め薬は自己負担ですが、「ゾコーバ」などの新型コロナ治療薬は高額のため全額が公費負担(無料)となります。
これらの軽減措置は2023年9月末までで、その後は感染状況などを踏まえて延長可否を判断することになっています。
Q.感染したら療養生活はどうなる?
A.自宅療養が基本。発症翌日から5日間は外出は控えましょう
政府・自治体から入院や外出自粛を求めることはなくなり、原則として自宅療養になります。隔離も求められないので、外出を控えるかどうかも含めて個人の判断です。インフルエンザにかかった時をイメージすると分かりやすいでしょう。
個人が外出を控えたり、会社が従業員に出勤停止を要請したりする際の目安として、厚生労働省は次のガイドラインを示しています。
・発症翌日から5日間は外出を控える
・症状が軽快してから24時間程度は外出を控える
・発症翌日から10日間はマスク着用
・高齢者など重症化リスクが高い人との接触は控える
これを踏まえて、文部科学省は、学校が児童生徒に出席停止を求める期間として、「発症の翌日から5日間で、なおかつ症状が軽快後1日経過するまで」という方針を示しています。
ちなみに、同居家族などが「濃厚接触者」として、感染者と同様の行動制限を求められることはなくなります。身近な人が感染すれば、自分も感染しているリスクが高いことは変わりませんが、あくまで各自の判断になります。
Q.感染対策は今後も続けないとダメ?
A.基本的な感染対策は継続しましょう
国や自治体から求められる制限はなくなりますが、感染リスクがなくなるわけではないので、引き続き各自で対策をしましょう。厚労省の専門家会合のメンバーは、感染対策として「5つの基本」を提言しています。
(1)体調不安や症状がある場合は自宅療養や医療機関を受診
(2)その場に応じたマスクの着用やせきエチケットの実施
(3)3密回避や換気
(4)手洗いや手指消毒
(5)適度な運動と食事
「ソーシャルディスタンス(2メートル以上)」などという言葉もよく使われましたが、こうした具体的な指標は示されていません。各自が状況に合わせて基本的な対策を行うことになります。
Q.マスクの着用はどうなる?
A.引き続き「個人の判断」
マスク着用は3月13日から「個人の判断」となっていましたが、引き続き同様です。厚労省は、混雑した電車やバスに乗るときや、医療機関や高齢者施設を訪問するときなど、状況に応じた着用を呼び掛けています。また、感染した場合、発症翌日から10日間のマスク着用を推奨しています。
Q.なぜ「5類移行」は5月8日なの?
A.人の動きやイベントを考慮
政府関係者によれば、自治体の準備期間を確保した上で、年度変わりの4月初めは入学や転勤などで人の移動が多く、その後は統一地方選があり自治体の業務が混乱する、ゴールデンウイークは休診する医療機関が多い―ことなどを考慮したということです。
(2023年5月2日掲載)