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「女性が多いと会議が長い」抗議署名の発起人に聞く◆国際女性デー【news深掘り】

2023年03月08日08時30分

 3月8日は女性への差別をなくし、地位を高めることなどを目的に国連が制定した「国際女性デー」です。東京五輪・パラリンピック組織委員会の会長だった森喜朗元首相が女性蔑視の発言をした際に15万筆超の抗議署名を集め、現在は4月の統一地方選に向けて女性候補予定者などの支援をしている慶応大大学院生の能條桃子さん(24)に話を聞きました。(時事通信社会部 余村由茉

 【news深掘り】

 ―2021年2月、森元首相が「女性がたくさん入っている会議は時間がかかる」と発言しました。

 
こんなことを言ってしまう人が国際イベントのトップなのか、とびっくりしました。NSを見たらみんなすごく怒っていましたが、「元首相本人には届いていない」と感じました。元首相にけんかを売るようで怖かったのですが、「可視化した方がいい。誰かがやった方がいい」と考え、知人2人と署名集めを始めました。もともとジェンダー平等に関心があったので、活動を始めるいいきっかけになりました。

 ―それまでは若者の政治参加を呼び掛ける活動をされていました。

 
小学生の頃から社会の授業が好きで、政治への関心はありました。 地元の公立中学では勉強をする人、しない人、できない環境にいる人などさまざまでしたが、進学した私立高校では、みんなが東京大や有名私立大を目指していました。教育格差を感じ、学校や社会を批判的に見るようになりました。

 大学生になり、社会勉強のつもりで選挙ボランティアに参加したのですが、活動していたのは男性と高齢者ばかり。そして誰も、若い人が少ないことを気にしていなかった。一方、友人にボランティアの話をすると、「意識高いね」と飲み会のネタにされました。若い世代が生きづらいのも、子育てしづらいのも、「これだからか」と思い、どうしたらみんながもっと政治に参加できるようになるのかを考え始めました。

 ―デンマークに留学した理由は。

 
デンマークでは若い世代の投票率も80%を超えていると聞き、全寮制の学校に3カ月間通いました。そこは「民主主義のための学校」と言われていました。今後自分がどんなふうに生きていきたいのかを考える場、という意味です。

 デンマーク人の友人に「日本の政治は男性ばかり、高齢者ばかりだ」という話をしたら、「モモ(能條さんの愛称)は何をしているの?」と言われました。デンマークには「政治家は国民の鏡」という言葉があります。「政治家が悪い」イコール「有権者も悪い」という考え方です。何をしているのかを問われ、何もしていないな、と考えさせられました。

 留学中だった19年7月に日本で参院選があり、学んだことをアウトプットしたいと思いました。デンマークの若者たちは各政党の違いを分かっていて、意見を言うことができます。意見を言えるようになるには、まず知ることだと思い、インスタグラムで選挙について分かりやすく解説するアカウントを作りました。

 ―反響はありましたか。

 
2週間でフォロワーが1万5000人に達しました。求めている人がいることが分かったので、一般社団法人「NO YOUTH NO JAPAN」を設立し、続けていくことにしました。今では、インスタグラムでの発信以外に、自治体の選挙管理委員会と一緒に投票済み証明書やパンフレットを作成したり、高校で選挙に関する授業を行ったりしています。

 ―ジェンダー平等に向けては、どのような活動をしていますか。

 2022
年8月に「FIFTYS PROJECT」を立ち上げ、女性の地方議員を増やしていく活動をしています。このままでは、私が生きていく社会はずっとジェンダーギャップがある。それは耐えられないと思いました。

 活動には二つの軸があります。一つは「立候補しよう」。23年4月の統一地方選では、12都道府県の約30人が賛同してくれているのですが、地域で孤立しがちな女性候補予定者たちをつなげるネットワークをつくったり、スピーチの仕方や公職選挙法に関する勉強会を開いたりしています。もう一つは「応援しよう」。立候補予定者がどのようなボランティアを必要としているかをまとめたサイトを作っています。知ることで問題意識が深まると思うので、投票以上のアクションをしてくれる人が増えることを願っています。

 ―ジェンダー平等の実現に必要なことは何でしょうか。

 制度や法律の力は本当に大きい。例えば、候補者や議席の一定割合を女性に振り分けるクオータ制の導入などに、もっと関心を持つべきではないでしょうか。ジェンダーの問題だけでなく、例えば国籍、出身地、学歴、性的嗜好(しこう)などでも、マジョリティー側の「当然」が、マイノリティー側の「困り事」になっていることがあります。男性の方が政治家になりやすい社会だ、ということを認識することだと思います。

 能條桃子(のうじょう・ももこ) 1998年生まれ、神奈川県平塚市出身。慶応大大学院経済学研究科修士2年。若者の政治参加を促す一般社団法人「NO YOUTH NO JAPAN」の代表理事で、2022年8月、政治分野のジェンダー不平等解消を目指す「FIFTYS PROJECT」を立ち上げた。

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