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「ダルビッシュ効果」で沸いた宮崎から、侍ジャパンいざWBC

2023年03月02日10時00分

 野球の国・地域別対抗戦、第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に臨む日本代表「侍ジャパン」が最終調整している。2月にメンバーの多くが初めて集結し、ひなたサンマリンスタジアム宮崎で強化合宿を実施。全国各地から大勢のファンが駆けつけ、リーダー格のダルビッシュ有(パドレス)ら14年ぶりの世界一を目指す選手たちに熱いエールを送った。1次リーグB組の日本は、3月9日に東京ドームで中国との初戦を迎える。(時事通信運動部 小島輝久)

 2月17日の合宿初日から、ひなたサンマリンスタジアムは大フィーバーの様相を呈した。イチロー(マリナーズ)が出場した2009年の第2回大会前の合宿では、球場に向かう道路で大渋滞が起きるなど想定外の事態も招いたが、今回は宮崎県が中心となって万全の対策を講じた。

 自家用車両を減らすため、海外でもおなじみの「パークアンドライド方式」を導入。宮崎市内に複数の臨時駐車場を設け、シャトルバスに乗り換えてもらってスタジアムまでファンを運んだ。JR九州は球場最寄りの駅への臨時列車を増発。入場整理券や有料の駐車整理券を発行したこともあり、混乱は起きなかった。関係者は「(19年の)ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会など、過去のさまざまな大規模イベントの成功例も参考にした」と明かした。

毎日のようにサイン会

 盛り上がる熱気に、侍ジャパンの面々も呼応した。強化合宿に初日から合流してチームを鼓舞した最年長、36歳のダルビッシュは、球場に詰めかけて声援を送るファンに向けて手を振り、毎日のようにサイン会を実施。スマートフォンを向ける若いファンに「ちゃんと撮れている?」と声をかけるなど、気配りも忘れない。当初は遠慮気味だった他の選手たちも、尊敬する大先輩の後に続いた。

 侍ジャパンのスタッフもファンサービスに工夫を凝らした。グラウンドでは体験型の「合同自主トレーニング」と称して、子ども対象に松井裕樹(楽天)ら選手との短距離走を開催。イベント後はサインと記念写真撮影に応じた。滅多にない超一流選手との創意あふれるふれ合いは、プロ野球界のさらなるファン拡大にもつながりそうだ。

「初陣」の壮行試合に長蛇の列

 2月25日。侍ジャパンの「初陣」となった同スタジアムでの壮行試合、ソフトバンク戦には全国から2万6212人のファンが集結。今でしか手に入れられないグッズを求めようと、売り場は長打の列で身動きができないほどの盛況ぶりだった。

 東京都府中市から来た会社員の堀江守さん(24)と広島市の自営業、河原遼人さん(24)は野球が縁で友人になった。稲葉篤紀監督の頃から侍ジャパンを応援し、日本戦は国内はもちろん海外でのトーナメント全ての試合を自腹で観戦したという「つわもの」だ。今回のWBCについて、堀江さんは「侍ジャパンが(ライバル国の)メジャーリーガーをなぎ倒す場面が見たい。大谷翔平対マイク・トラウト(ともにエンゼルス)を直に見たい」と興奮気味に話し、河原さんは「今大会はレベルが高くて楽しみ」と目を輝かせた。

大リーグと日本球界の精鋭集う

 豪華メンバーが集う侍ジャパンのチーム全体に活力を与えているダルビッシュに続き、今後は投打二刀流の大谷が加わる。ともにトップクラスの大リーガーだ。左脇腹の張りを訴えた鈴木誠也(カブス)は出場を辞退したが、吉田正尚(レッドソックス)や日系人メジャーリーガーとして初選出されたラーズ・ヌートバー(カージナルス)もいる。

 日本球界からは令和初の三冠王、村上宗隆(ヤクルト)や岡本和真(巨人)、山川穂高(西武)らタイトル獲得経験者のスラッガーがずらり。機動力を発揮できる要員も、2019年のプレミア12で代走の切り札として初優勝に貢献した周東佑京(ソフトバンク)、ルーキーだった21年に成功率9割以上で盗塁王となった中野拓夢(阪神)が控えている。

 投手陣もそうそうたる顔触れだ。昨季まで2年連続で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の部門の4冠に輝いた山本由伸(オリックス)、昨春に日本で28年ぶりの完全試合を達成した佐々木朗希(ロッテ)と、大リーグ球団も注目する両右腕が闘志を燃やす。さらに昨年ノーヒットノーランを達成した左腕の今永昇太(DeNA)、新人最多記録に並ぶ37セーブをマークした大勢(巨人)らも意欲満々。19年のプレミア12、21年の東京五輪など国際大会の経験が豊富な捕手、甲斐拓也(ソフトバンク)が扇の要としてマスクをかぶる。

東京ドームにメジャーのスカウト集結も

 侍ジャパンの布陣について、栗山英樹監督は「日本野球の魂を最大限に生かせる形を考えた」と自信に満ちた表情で語る。WBCに向け「必ず頂点に立てるように全力で戦っていく。『世界一になりたい』ではなく、『世界一になる』という強い思いで向かっていく」と鼻息も荒い。

 宮崎合宿までは「ダルビッシュ効果」で沸いた。次は一足後れて日本チームに合流する大谷が話題の中心となるだろう。吉田やヌートバーもユニホームを着て、侍のピースを埋めていく。

 タレントぞろいのチームは、日本だけではなく本場の大リーグでも話題になっているようだ。カージナルズの日本駐在スカウト、大慈彌功さんは「(東京ドームでの)東京ラウンドではメジャーをはじめとするスカウトが大挙集まる。みんなが一番気にしているのが、ダルビッシュや大谷だけではないと評判の侍ジャパンのメンバー。大品評会みたいな雰囲気になると思う」。将来、大リーグ挑戦がうわさされる山本、佐々木朗、村上ら若き侍たちが、真っ向勝負で世界に挑む。

(2023年3月2日掲載)

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