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政党最大のイベント「党大会」 そこに込められた狙いとは【政界Web】

2023年02月17日

 各政党が定期的に開催する「党大会」は、党の最高意思決定機関に位置付けられる最も大きなイベントだ。国会議員や地方組織の代表者らが一堂に会し、年間の活動計画などを決定する。そこにはさまざまな狙いが込められており、各党は通常の議事に加えて趣向をこらす。近年は新たな党大会の在り方を模索する動きも出ている。(時事通信政治部 水谷洋介)

【政界Web】前回は⇒岸田首相にリーダーシップはあるか 先崎教授に聞く政治の展望

【目次】
 ◇党運営の透明性確保
 ◇選挙へ総裁演説で結束
 ◇党大会がフェスに
 ◇会場飛び交う怒号

党運営の透明性確保

 自民党は党則で「党大会は、党の最高機関」と明記している。「毎年1回、総務会の議を経て、総裁が招集する」と規定。出席者は党所属国会議員や各都道府県連4人ずつの大会代議員を中心に最も多いときは3500~4000人規模に達したこともあったという。

 近年の当日の流れは国歌、党歌に始まり、来賓のあいさつ・紹介と続く。その後は幹事長が昨年の選挙結果や政策活動、予算・決算など「党務報告」を行い、組織運動本部長が年間の活動計画に当たる「運動方針」を起草委員長として説明。優秀党員などに対する表彰のほか、党則の改正案が諮られることもある。

 こうした党大会の様子は報道機関に全て公開されるほか、近年はインターネットを通じて一般有権者も視聴することができる。「政党として運営の透明性を担保する」(関係者)狙いがある。

選挙へ総裁演説で結束

 「選挙への一致結束を確認する」(同)のも党大会の重要な目的で、その一つの機会となるのがクライマックスの「総裁演説」だ。結党以来、⾃⺠党総裁はほぼ⾸相を兼ねており、総裁としての考えを党員が聞く貴重な機会でもある。

 安倍晋三元首相にとって最後となった2019年の総裁演説。この年は4月の統一地方選、夏に参院選と二つの重要選挙が重なる12年に1度の「亥(い)年」だった。安倍氏は「厳しい戦いになるが、まなじりを決して戦い抜く先頭に立つ決意だ」と結束を呼び掛けた。

 安倍氏はまた、憲法改正について「いよいよ立党以来の悲願である憲法改正に取り組むときが来た」と強調。「憲法にしっかり自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とう」と訴えた。

 自民党大会にはゲストとして著名人が招かれることも多々ある。野党転落時の10年は、プロ野球監督として弱小チームの立て直しに手腕を発揮した野村克也氏を招待。「『負けに不思議の負けなし』だ。勝って反省しないところに、皆さんの落とし穴があった」とのスピーチに皆が耳を傾けた。

 著名人の経験談や要望を聞いて今後の党活動の参考にすることが狙いだが、これもまた「同じものを見て、その空間を共有する」(関係者)という一体感を醸成するための一つの仕組みだ。

党大会がフェスに

 目指す政治を発信する場として、党大会を活用した例もある。17年の衆院選直前に結党した旧立憲民主党がそれに当たる。同党は代表に就いた枝野幸男氏がボトムアップ型の「草の根民主主義」を掲げて市民の結集を呼び掛け、躍進を果たした。

 幹事長を務めた福山哲郎氏は「議員と市民が対等に時間と場所を共有し、党の1年間の方向性を確認し合う場をつくりたかった」と振り返る。そうした思いから開催されたのが、18年と20年の「立憲フェス」だ。

 同党の法案を紹介する展示、NPO・NGOの活動紹介ブース、党の主要政策「原発ゼロ」「ジェンダー」のトークイベント、フェスグッズの販売―。会場内のさまざまな催し物の間を議員と参加者が行き交い、交流が生まれるようにした。議員にはスーツではなくカジュアルな服装での参加を呼び掛けた。服の持ち合わせがなく、購入に走った議員もいたという。

 福山氏はフェスの効果について、「NPO・NGOから要望や現状を伝えてもらいやすくなった。党のイメージを伝えるのに一定の役割を果たした」と語る。

会場飛び交う怒号

 透明性の確保、一体感の醸成、目指す政治の発信―。党大会は通常、こうした前向きな目的の場となるが、危機に直面した政党にとってはむしろ逆となる場合もある。国政政党としての存続が危うい状態が続いていた社民党が20年11月に開いた臨時党大会では、旧立民が呼び掛けた合流を巡り、激論が交わされた。

 合流に反対する党首の福島瑞穂氏に対し、容認する照屋寛徳氏は「先輩方が築いた遺産を全て食いつぶした」と厳しく批判。会場内には怒号が飛び交った。福島氏も答弁で「私のみが食いつぶしたと言われるのは極めて残念」と反論した。

 反対派は、賛成派で幹事長だった吉田忠智氏の解任動議を出して抵抗。しかし、最終的には社民の存続と立民への合流、いずれの選択も「理解し合う」との議案が可決され、党の分裂は確実となった。

 党大会の結果に、初代党首の村山富市元首相はコメントを発表し「やむを得ないこととはいえ、社民党が分かれてさらに小さくなることは残念でならない」と嘆いた。

(2023年2月17日掲載)

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