V奪還へ、強いこだわり
今年3月、野球の国・地域別対抗戦、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が6年ぶりに開催される。2009年の第2回以来、3大会ぶりの優勝を目指す日本代表「侍ジャパン」のメンバーの一部が1月6日に発表された。東京都内で行われた記者会見では、米大リーグで投打二刀流の活躍を見せる大谷翔平(エンゼルス)が栗山英樹監督とともに、侍ジャパンのユニホームに身を包んで登壇。王座奪還への強いこだわりを示した。(時事通信運動部 浦俊介)
2017年の前回大会は代表に選ばれながら、けがのため出場できなかった大谷。自身初のWBCに向け、「優勝だけを目指す」と並々ならぬ意欲を口にした。その上で、日本ハム時代から自分を見てきた指揮官に対する厚い信頼感ものぞかせた。
―栗山監督からの出場オファーについて。
大谷「向こう(米国)でも話をして、その時はシーズン中で、翌年のWBCについて考える余裕があまりなかった。シーズンが終わってから、自分の考えをまとめて連絡させていただいた」
―監督の存在は大きいか。
大谷「本人を目の前に本当に申し訳ないですけど、おそらく誰が監督でも出たいなという気持ちは前向きだった(笑)。ただ、自分のことを知っている監督が指揮を執ってくれるのか、そうではないのかは大きい。決断しやすさは栗山監督だったからこそ、というのはあった。いい選手が集まってくれているのは、そこに要因があるのかなと思う」
―監督の選手に対する愛を感じた場面はあるか。
大谷「あまり感じたことがないですね(笑)、冗談ですけど。本当に一人ひとりの選手と対話する監督なので、一緒にプレーしたことがない選手も数日でお互いを知ることができると思う。そういう雰囲気を持っている監督だから、集まる選手は何の不安もなくプレーできると思う」
―自身の起用法については。
大谷「選手は使われる立場だし、自分で他の選手の起用法をタッチできるわけではない。自分のできることを精いっぱいやりたい」
―チームの中での立ち位置は。
大谷「言葉で引っ張っていくタイプではない。やることだけ、しっかりやりたい。(球界を代表する)このレベルの選手が集まってくるので、誰かに言われてやるような選手たちではない。自分の役割を個人個人がこなしていくのがいいチームの要因」
―若手選手が大谷選手とのプレーを楽しみにしている。
大谷「(今の)プロ野球を見ても、僕の知らないような選手がたくさん出ている。代表の中にも、僕が知らない人たちもいる。まずはコミュニケーションが第一じゃないかと思う。僕はダルビッシュさんとやるのは楽しみだけど、勉強したいなという気持ちは二の次で、勝つことだけを考えてやっていきたい。他の選手もそういう気持ちを持ってプレーするのがベスト。大会が終わってみて、ここは勉強になったなと感じることはあると思うけど、やっている時はそういうこと抜きに頑張りたい」
―勝ちたいという思いが強いのはなぜか。
大谷「野球を始めてからきょうまで、1位以外目指したことはない。負けていいと思ったことがない。その中で、自分の目標の一つである大会で勝ちたいと思うのは自然の流れかなと率直に思う」
栗山監督「必ず世界一に」
先行発表されたのは大谷のほか、大リーグでプレーするダルビッシュ有(パドレス)や鈴木誠也(カブス)、さらにプロ野球で昨季三冠王に輝いた村上宗隆(ヤクルト)や完全試合を達成した佐々木朗希(ロッテ)、投手4冠の山本由伸(オリックス)ら計12人。経験豊富なベテランや勢いのある若手、走塁のスペシャリストなどが加わる見込みだ。
栗山監督は世界一になるためにチーム全体のバランスを重視した選手選考を続け、最終メンバーを固める。メジャーに移籍したばかりの吉田正尚(レッドソックス)や母が日本人の大リーガー、ラース・ヌートバー(カージナルス)のメンバー入りも決まっている。
栗山監督は世界一になるためのチーム全体のバランスを重視した選手選考を続け、最終メンバーを固める。
―WBCへの抱負を。
栗山監督「野球界の先輩方が日本野球をつくってきた。必ず日本の野球をやり切って、勝ち切るという戦いをしたい。元気や勇気を届けられるように、子どもたちに夢を持ってもらえるように、頑張ったらいいということではなく必ず世界一になって喜んでもらいたい」
―まず12人を選考した。どんなチームにしたいか。
栗山監督「日の丸の魂を持った選手が集まり、その動きを見ているだけで元気になるというようなチームが理想。今回選んだメンバーはもちろん、多くの候補選手もみんな力はある。バランスを考えながら、こういう形であれば世界一に近づくのではないかと考えて選んだ。選考は、できればぎりぎりまで引っ張りたいのが本音。(今回の発表によりチームの)真ん中の部分ができていくが、最終的に決まっていないところもある。コーチの皆さんと会議を重ねながらしっかり形をつくっていきたい」
―大谷が「優勝だけを目指す」と言った。
栗山監督「とにかく選手たちが勝ちたがって、絶対勝つんだという思いを持って戦うしかない。そういう思いをみんなが持ってくれているはず」
◇ ◇ ◇
WBC日本代表(1月6日の先行発表メンバー)
【投手兼指名打者】
大谷翔平(エンゼルス)
【投手】
ダルビッシュ有(パドレス)
戸郷翔征(巨人)
佐々木朗希(ロッテ)
山本由伸(オリックス)
今永昇太(DeNA)
【捕手】
甲斐拓也(ソフトバンク)
【内野手】
源田壮亮(西武)
牧秀悟(DeNA)
村上宗隆(ヤクルト)
【外野手】
近藤健介(ソフトバンク)
鈴木誠也(カブス)
(2023年1月12日掲載)