会員限定記事会員限定記事

【中国ウオッチ】中国の台湾侵攻「2027年の可能性」 外交部長が異例の予測

2023年01月26日15時00分

 台湾の呉釗燮外交部長(外相)は、習近平政権が4期目に入るとみられる2027年に中国が台湾侵攻に踏み切る可能性が大きいとの見方を示した。台湾高官が中国による攻撃の具体的時期を予測するのは極めて珍しい。(時事通信解説委員・西村哲也)

レガシーが欲しい習氏

 呉氏は英スカイニューズ・テレビが1月18日報じた単独インタビューで、中国の台湾政策に対する見解を詳述した。主な発言は以下の通り。

 一、昨年の(台湾海峡の)状況はその前の2年間よりはるかに悪かった。しかし、われわれが警戒すべき年は2027年だ。

 一、2027年に習近平氏は(共産党総書記として)4期目に入るだろう。もし、それまでの3期に取り立てて言うほどの業績がなければ、彼は何かの業績もしくはレガシーをつくることを考える必要が出てくるかもしれない。

 一、中国の経済は落ち込み、国民は幸せではなく、不動産ビジネスは崩壊しつつあるように見える。習氏が国内の状況を変えられない場合、注意をそらすため、または、何かを成し遂げたことを示すために、武力を行使したり、対外的危機をつくり出したりしたくなる可能性がある。そして、台湾がスケープゴートになるのではないかとわれわれは憂慮している。

 一、今、最悪のシナリオが過去の数年よりも起こりやすくなっている。(台湾近くの空域での)中国機の台湾機への接近を見れば分かる。小さなアクシデントも、多発すれば、大きな戦争のきっかけになる恐れがある。われわれはそれを懸念している。

 中国の支配下にないが、独立は宣言していない台湾の状況について、呉氏は「現状維持政策は永遠には続かないかもしれない」と語ったが、現状がどう変わることを想定しているのかは明言しなかった。

総統選絡みの駆け引き

 台湾周辺で中国の軍用機や艦艇による挑発的行動が続いているのは事実だが、オースティン米国防長官は1月11日の記者会見で「それが侵略の切迫を意味するかどうか、私は深く疑っている」と述べた。

 台湾国防部もこれまで、中国軍は渡海・上陸や補給の能力が不十分で台湾攻略は難しいとの分析結果を明らかにしており、呉氏の発言は唐突な印象を与える。中台双方の政界と交流がある香港親中派の消息筋は「頼清徳副総統が次の総統になって独立を宣言するといった事態にでもならない限り、侵攻はあり得ない」とコメントした。

 昨年11月の統一地方選で大敗した民進党政権が党指導部や行政院の人事を刷新して、1年後の総統選に向けて体制を立て直す時期に、呉氏の危機説が出てきたのは偶然ではないだろう。

 総統選は地方選より対中関係の影響が大きい。中国脅威論が高まれば、親中的な国民党に不利になる。2018年11月の統一地方選で民進党が敗れた後、翌19年1月に習氏が台湾を露骨に威嚇する演説をして反発を招き、蔡英文総統が立ち直るきっかけになったのは、その典型的な一例だ。その後、中国が強引な国家安全維持法(国安法)制定で香港の「高度な自治」を事実上廃止したことも、民進党にとって追い風になった。

 4年前の失敗を教訓にしているのか、中国側の発言はこのところ、ややソフトになっている。習氏は昨年12月31日、新年メッセージの台湾に関する部分で、前年と違って「祖国の完全統一」に触れず、海峡両岸(中国本土と台湾)を家族に例えた上で、「両岸の同胞が歩み寄り、手を携えて共に進み、中華民族の末永い幸福を共に築くことを心から望んでいる」と語った。

民進党の名指し批判せず

 国務院(内閣)台湾事務弁公室の宋濤主任は1月2日発表した新年メッセージで「台独(台湾独立)分裂勢力」を非難し、祖国統一の重要性を強調したが、前年のような「民進党当局」に対する名指しの批判はしなかった。否定的存在として名前を挙げたのは、昨年8月に訪台したペロシ米下院議長(当時)だけだった。

 ただ、習政権は、対日関係が改善された時期も海警に尖閣諸島海域への侵犯を続けさせ、インドとの関係修復に乗り出してからも中印国境地帯で部隊間の衝突を起こすといった言行不一致が珍しくない。

 習政権は今後も、中国と距離を置く民進党政権に圧力をかけ続けるとみられるが、その一方で、圧力が過大になって総統選でまた敵に塩を送るような事態は避けるという微妙な舵取りが必要になるだろう。

(2023年1月26日掲載)

中国ウオッチ バックナンバー

話題のニュース

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ