京都丹後鉄道は京都府北部の宮津駅(宮津市)を中心に東は西舞鶴駅(舞鶴市)までの宮舞線、西は兵庫県の豊岡駅(豊岡市)までを結ぶ宮豊線、南は福知山駅(京都府福知山市)までを結ぶ宮福線と、三つの路線を展開するローカル線です。アルファベットの「T」の文字をイメージしていただくと良いかと思います。
沿線には見どころがたくさんあり、京都からは直通の特急「丹後の海」も運行していてたくさんのお客さんを運んでいます。今回は私が京都丹後鉄道の魅力を独断と偏見で表彰する形でご紹介していきたいと思います。
【天橋立=何と言っても日本三景で賞】
宮城県の松島、広島県・安芸の宮島と並ぶ日本三景の一つ、天橋立。砂州と松林の風景は絶景です。
観光のお客様もたくさんいらっしゃいます。お土産物屋さんや飲食店が多いという印象です。レンタサイクルもあり、砂州を自転車で渡る方もいらっしゃるのでしょうか。渡ったところの展望台に行ったことがあります。15分ぐらい歩いたでしょうか。ちょうどいい散歩になりました。展望台ではもちろん股のぞきをやってみました。ジグザグ続く砂州はまさに天に続く道のようでした。
【宮福線=ナイスバイパス賞】
かつて国鉄宮津線として戦前から営業してきた宮豊線、宮舞線とは異なり、宮福線は1988年に開業した新しい路線です。福知山と宮津・天橋立を結ぶ鉄道の計画は昔からあったものの、戦争や乗用車の普及で計画が中断したこともありましたが、昭和末期にようやく完成となりました。
トンネルや線路が新しく、スピードが出せて天橋立がうんと近くなりました。開業前は西舞鶴経由、豊岡経由でしたがかなりのショートカットになりました。その後電化されて電車も走るように。この区間を快走する特急に乗っていると、宮福線の偉大さを感じます。
【観光列車=バリーション豊かで賞】
京都丹後鉄道にはいろんな観光列車が走っています。
車内で食事を楽しむレストラン列車「丹後くろまつ号」は「『海の京都』を走るレストラン」と言われています。午前中の「モーニングコース」、午後の「海の幸堪能コース」、夕方の「地酒飲み比べコース」「スイーツお楽しみコース」と、時間帯を活かした食事メニューを展開しているところが特徴で、いずれも地元の食材を使った本格的な料理です。
カフェ列車「丹後あかまつ号」車内にはソファ席やカウンター席など、さまざまなタイプの座席があります。自由席ですが予約定員制なので車窓からゆったりと景観を楽しむことができます。
「丹後あおまつ号」も、ソファ席、カウンター席など、さまざまなタイプの座席と共にサービスカウンターもあって、アテンダントの方による沿線案内放送や車内販売もあります。予約不要で普通運賃のみで毎日運行されているのがうれしいですね。各駅停車で気軽に観光も楽しめます。
特急用車両「KTR8000」系を使った「丹後の海」も忘れてはいけません。リクライニングシートを装備し、特急車両としての誇りも感じる車内です。蛍光灯ではなく白熱灯色の優しい照明で非常に落ち着きます。車端部にはロビーが設けられていてくつろげる雰囲気。朝と夜には普通列車としても運行しており、同社ホームページの運行スケジュールでチェックしてみてください。
これら列車のデザインを手掛けたのは工業デザイナーの水戸岡鋭治氏。木をふんだんに使った落ち着いた雰囲気は格別で安らぎを感じます。こんな車両のような家に住みたい!
【もうひとつの京都 周遊パス 海の京都エリア=超お得で賞】
京都丹後鉄道にはいろんな企画切符がありますが、私のおすすめはこの周遊パス。全線乗れるだけでなく特急「たんごリレー」にも特急券なし(指定席利用の際は指定席特急料金が必要)で乗れたり、路線バスにも乗れたり、観光列車内や宮津駅の「丹鉄珈琲~114kmCafe」で販売している「丹鉄珈琲」が一杯無料でもらえたりと、特典がいっぱいです。「丹後あおまつ号」の車内で「丹鉄珈琲」をいただきましたが、アテンダントさんがドリップしてくれた入れたてのコーヒーの味はほろ苦く気持ちがスッキリする風味でした。
でもこの周遊パスお高いんでしょう? いいえ、なんと大人2200円! 有人駅や京都丹後鉄道のホームページで購入できます。ただし有人駅でしか切符の引き換えをしていないのと、全車指定席の「特急はしだて」や「特急たんごリレー」の指定席を利用する際には指定席特急券が必要なので要注意です。
他にも用途に合わせた企画切符が販売されているのでとてもうれしく、しっかり使いたいです。
【丹後由良駅=散策にいいで賞】
丹後由良駅(宮津市)は鉄道ファンなら一度は聞いたことがあるかもしれません。かの有名な由良川橋梁の最寄り駅です。駅は列車の行き違いができる駅で、駅舎もしっかりしています。駅と一体化したカフェも営業。私が行った時はお休みでしたが地元の方が、集まって雑談をしていました。駅で人が集まっている光景はどこか心が温まりますね。ホームには花壇もあって、椿の花が私たちをお出迎えしてくれているようでした。
由良川橋梁までは歩いて10分ほど。広く穏やかな河口に架かる橋梁は水面からの高さがとても低く、かつ長く、かつ大きな壁が設けられていないなど、鉄道写真を撮るには最高の環境なのです。列車の本数が少ないのでチャンスは限られていますが、まずは訪れたいポジションかと思います。列車に乗っても水面がすぐ近くにあるので、まるで水面を走ってるような印象を受け、これもとても楽しいですよ。
近くには海水浴場もあります。駅から真っすぐ伸びる道を行くと、海に出ます。砂浜がとてもきれいで、夏はたくさんの人でにぎわうそう。ここから西側に進むとまたまた撮影スポット! 砂浜と入江を挟んで山肌を行く京都丹後鉄道の列車がよく見えます。
ハクレイ酒造もオススメです。1832年に創業した老舗の蔵元です。日本酒好きな方からすると酒蔵で試飲したり、お土産を買ったり、とても楽しいと聞きます。銘柄もいくつかあってたくさんのお酒が並んでいました。しかし、私の目当ては「蔵スイーツ」。今回は甘酒プリンをご紹介したいです。ミルクプリンのような柔らかい舌触りなのですが、風味が完全に甘酒で、これはこれまで出会ったことがない味でした。
他にも由良神社など行ってみたい場所がいくつもありますが、いずれも丹後由良駅から徒歩10分圏内にあり、散策にちょうどいいので、この賞にしました。
【与謝野駅=歴史を感じるで賞】
与謝野駅(与謝野町)構内には「丹後山田駅資料室」があります。
同駅は国鉄・JR西日本時代、「丹後山田」駅という名称でした。1985年までは南西部の加悦駅まで結び、大江山鉱山で採掘されたニッケルを運んだ加悦鉄道も出ていました。資料室には、かつてたくさん列車が行き交った姿を表現したジオラマや当時の時刻表などが展示されています。加悦鉄道は少し変わったデッキ付きの車両が往来していたこともあり鉄道ファンには有名です。
加悦鉄道のホームがあった場所に行ってみると、現在は駐輪場と道路になっていて、それ以外の場所は更地で植樹されていました。ところどころにある石は、当時、線路に敷かれていいたバラストでしょうか。案内看板があって写真で紹介されています。
想像の中で列車の姿を走らせてみます。うん確かに走っています。駅より伸びていた線路跡はサイクリングロードとして舗装されていて、地元の学生さんが使っていました。このサイクリングロードの先には加悦鉄道博物館があり、さらに歴史に触れられます。自転車があればぜひ走破したいと思います。
【夕日ケ浦木津温泉駅=トレインビュー・足湯でリラックス賞】
宮豊線の夕日ヶ浦木津温泉駅(京丹後市)の周辺には温泉施設がたくさんあります。ただ、少し駅から離れていて駅前で自転車をレンタルするのも一方法なのですが、時間がない方は駅ホームにある足湯、天然温泉「しらさぎの湯」を利用してみてはいかがでしょうか。
ここの足湯からは当然のことながら列車が見放題。特急列車も停まる駅なので、少しだけ下車して足湯でくつろいで一息入れてみるのも乙なものです。
【宮津駅=腹ごしらえをしま賞】
宮津駅前にある富田屋は圧倒的な存在感があります。伝統を感じさせる店構えと活気あふれる店内。夕方でも待ち客の列ができていました。
店内は観光客だけでなく、仕事中やその帰りに来ているらしい方もいて、食事をわいわい楽しんでいます。わたしは刺身定食とホルモン焼きを注文しました。混んでいたから結構待つかなと思っていましたが、比較的早く提供されました。
お刺身は新鮮でおいしく、なによりホルモン焼きが絶品。しっかりとたれの染みたホルモンと歯ごたえのあるキャベツ―ごはんが進みます。他にも天ぷらや、350円のカレーなどおいしそうな料理がたくさんありましたし、当日のおすすめメニューがホワイトボードにびっしり書かれていました。何度も訪れたいですね。
少し宮津の街を散歩してみました。喫茶店もあり、教会もあり、昔ながらのおもちゃ屋さんあり。もうすこし奥に行くと宮津温泉もあるとのこと。電車の待ち時間を利用してまたじっくり巡りたいものです。
【鉄印=こだわり詰まったで賞】
天橋立駅で鉄印をゲットしました。書置き印の台紙には、1300年の歴史があり、宮津藩に年貢として納められていた丹後二俣紙(たんごふたまたがみ)が使われています。宮福線の丹後二股駅近くの田中製紙工業所が制作しているとのこと。紙の目が細かいという特徴があり、沿線に和紙の名産地があるということを学びました。
特急車両「丹後の海」の朱印も押されています。文字はアテンダントさんによる筆で、なかかなエレガントで味があります。
このデザインは2021年1月からということで、また時期がくればデザイン変わるのでしょうか。そう考えると鉄印も一期一会というか、「一期一印」ですね。
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以上9個の賞をラインアップさせていただきました。
他にも織物の「丹後ちりめん」や、海藻の「あかもく」、一般車両のライト下の正方形は何のためにある?―など、まだまだ表彰したいものはたくさんありますし、まだ私が発見していない魅力もたくさんあると思います。これを読んでくださった方、いちど京都丹後鉄道に旅に行かれて、よかったと思うものに賞をあげて感謝の意を表してみるのはいかがでしょうか。
(2022年6月11日掲載)