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密避けゆったり「ソロキャンプ」◆芸人ヒロシさんが説く心得とは

2022年04月30日12時00分

 都会の喧騒(けんそう)や仕事を離れ、一人、自然と対話できる「ソロキャンプ」。新型コロナウイルス禍の中でも密にならない楽しみとして注目されており、「ゴールデンウイーク・デビュー」を計画している方も少なくないのではないか。でも、何を準備したらいいのか分からない。守るべきマナーは―。そんな初心者向けに「大人のソロキャンプ入門」(SB新書)を出版したお笑い芸人でキャンプ・ユーチューバーとしても知られるヒロシさんに、安全に楽しむコツや心得を教えてもらった。

 【特集】教えていただきました

芸人ヒロシさん

 まず、初めてソロキャンプに挑もうとする際、「何を買ったらいいのか?」「何を準備すればいいのか?」ということを、すごく聞かれるんです。でも、その発想が少しずれている気がします。

 鍋やフライパンって、どんなにお金のない人でも大抵持っていますし、食器も持っています。ナイフはなくても、包丁なら持っています。こういう家で使っているものを、そのまま野外に持ち出せばいいのではないでしょうか。

 僕の父親がまさにそういうキャンプをやっていました。テントも、ブルーシートと現地で調達した竹で作っていました。

家になければ「100円ショップで」

 ただ、「家のものを持ち出すのは、なんだか恥ずかしい」と思う方だったり、足りないものがあったりするということであれば、取りあえず100円ショップで道具を買い足せばいいと思います。

 例えば、小さな鉄板や鋳物のプレート、スキレット(鋳鉄製フライパン)は100円ショップで売っています。それを買って、家にあるカセットコンロを持っていけば、それで調理ができます。

 あと、たき火をしたければ、土の上でじかにたき火をやることを禁止しているキャンプ場が多いので、まきを置くためのたき火台が必要になります。たき火台はさすがに100円では手に入らないと思いますが、たき火台の下に敷く延焼防止シートや、たき火のまきをいじるステンレス製の火ばさみは100円で手に入ります。

 その他にも、たまごを割らないで持っていくための専用容器や、水を持ち運べるソフトタンクといった、ソロキャンプにあったらちょっと便利なものも、100円ショップで売っているんです。

◇お薦めアイテムは

 そして、100円ショップで手に入らず、自分のソロキャンプに必要なものがあったら、専用の道具を買い足していけばいいのではないでしょうか。例えば、「初めてのソロキャンプで一泊したい」と思ったら、テントが必要になります。本でもテントについてはいろいろ書きましたが、基本的に最初に買うのは、特別なこだわりがなければ、ドームテントと呼ばれるものでいいと思います。骨組みとなるポールを組んでドーム状になるテントのことです。

 あとは、寒い時期にソロキャンプをするならば、防寒力が高いマミー型の寝袋も必要になりますが、ちょっと値段が高くなります。一方、春・夏であれば、薄い封筒型の安い寝袋でもいいですし、家からタオルケットを持ってそれを掛けて寝ても構いません。

 寝る時には、寝袋の下に敷くマットも必要になります。折りたたみ式のクローズドセルマットというタイプのものがお薦めです。昼間は折りたたんだ状態のままちょっとした椅子代わりに使えますし、火の粉や傷による穴開きの心配も不要なので、気軽に使えると思います。

 そして、夜中の明かりになる懐中電灯(LEDランタン)です。トイレに行く時、明かりがないと危ないですし、夜中にテント内に明かりがないと、何かと不便ですから。

 今挙げたものは、ソロキャンプで買うものの一例です。ただ、泊まりじゃなくて、日帰りのデイキャンプであれば、別にテントも寝袋も必要ありません。必要なものは人それぞれで異なってきます。

 ソロキャンプは、「自分のキャンプには何が必要なのか」を想像することや、それらを実際買ってみることも楽しみなんです。ギア(用具)を初めてキャンプで使うことを「初おろし」というのですが、とてもウキウキする気持ちになります。

守るべきこと

 それと守るべきことは、まず、キャンプ場のルールです。

 例えば、たき火。たき火をやる場所が決められているキャンプ場もあります。そういうところでは、テントを張り、その前でたき火をする、といったことができないこともある。また、先にも書きましたが、土の上でじかにたき火をすることを「直火」というのですが、それを禁止しているキャンプ場は多いです。そもそも、たき火自体を禁止しているキャンプ場もあります。

 それと、たき火に使うまきについてのルールもあります。僕はよく、キャンプ場内に落ちている枯れ木を拾ってたき火をしますが、まきを拾ってはいけないキャンプ場もあるんです。そういうところでは、まきを事前に買うか、現地のキャンプ場で売っているまきを買うことになります。もちろん、まきを拾っていいキャンプ場でも、他のキャンパーにまきを拾われて、なくなっていることもしばしばです。まきの情報は、事前にキャンプ場に聞いてから行ったほうがいいと思います。

 他に、使用済みのまきにもルールがあります。帰る時に、そのままにしておくことをお願いしているキャンプ場もあれば(そのあとの清掃がラクといった理由のようです)、まきを捨てる場所が決まっているところもあります。それらは、それぞれのキャンプ場のルールに従わなければなりません。

◇火事、けがにも注意

 また、基本的なことですが、火事に気を付けることとけがをしないことが大事です。例えばたき火の際、地面に落ち葉が落ちていたら、火の粉が飛んで延焼する危険があります。だから、周りの枯れ葉をどかしてから、たき火をしなければなりません。

 それに、準備や知識不足なのに、いきなり冬のソロキャンプに挑戦したら、凍傷・凍死の危険もあります。誤ったストーブの使い方をして、一酸化炭素中毒になる危険もあります。

 そこで、初めてのソロキャンプでは、春や秋など、キャンプのしやすい季節に行って、徐々にレベルアップをしていく、というやり方でいいと思います。今回刊行した「大人のソロキャンプ入門」では、そういったソロキャンプのレベルアップのやり方も紹介しているので、興味がある方はぜひ読んでみてください。

ソロキャンパーのマナー

 あと、こういった守るべきことと別に、ソロキャンパーとしてのマナーもあると思っています。

 ソロキャンプに少し慣れてくるとやりがちなのが、他のソロキャンパーにちょっかいを出すことです。特に自分よりも初心者の人を見ると、余計なおせっかいを焼きたい気になる人がいます。

 キャンプ場でのソロキャンパー同士の出会いを否定するわけではありませんが、ソロキャンプをする人は、一人でキャンプすることの面白さにハマっている人、もしくはハマろうとしている人です。だから、他人がその世界を邪魔してはいけない、と僕自身は考えています。

 初心者の人を見ても、困りながら試行錯誤をしていたら、声も掛けずに、知らんぷりして、温かく見守る。もし、相手が声を掛けてきたら、求められたことだけに答えてあげればいい。相手から求められてもいないのに、ソロの楽しみを奪ってしまうようなことは、僕はしたくないですし、されたくもないです。これがソロキャンパーの最低限のマナーではないでしょうか。

 実は、僕、これ、釣りで経験しているんです。神奈川県の田舎町に住んでいた時、近くの川に釣りに行ったら、そこのベテランの釣り師みたいな人に「その仕掛けだと、ここじゃ釣れないよ」と言われました。こういうの言われると、腹が立ったり、恥ずかしくなったりして、せっかく始めたのに「もうやらない!」と投げ出したくなりますよね。こういう__“マナー違反__”なことは、本当にやめていただきたいです。

 ただ、守るべきルールやマナーはあるものの、ソロキャンプは、圧倒的な自由が魅力。何を食べてもいいし、いつ寝てもいい。違法なこと、周りに迷惑を掛けないことを守れば、基本は何をしてもいいんです。ルールやマナー違反に気を付けながら、ぜひソロキャンプで自由を味わってほしいですね。

ヒロシ 1972年生まれ、熊本県出身。ピン芸人として「ヒロシです。」のフレーズではじまる自虐ネタで大ブレーク。 2015年3月よりYouTuberとして「ヒロシちゃんねる」を配信。20年にオリジナルアウトドアブランド「NO.164」を立ち上げる。TVレギュラーでは「ヒロシのぼっちキャンプ」(BSーTBS)、「ヒロシのひとりキャンプのすすめ」(熊本朝日放送)などに出演中。(2022年4月30日掲載)

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