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「自公国連立」説流布に疑心暗鬼【点描・永田町】

2022年12月26日

政治ジャーナリスト・泉 宏

 サッカー・ワールドカップ(W杯)での日本代表の健闘に列島が熱狂する中、臨時国会会期末の〝与野党合作〟による世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を受けた被害者救済新法の成立に先立ち、自民、公明両党に国民民主党を加えた「自公国連立」説が流布されたことが、永田町に複雑な波紋を広げた。内閣支持率の低迷による政権危機に焦る岸田文雄首相や自民執行部が「野党分断と公明へのけん制を狙った反転攻勢の秘策」(閣僚経験者)として模索中とされるが、「岸田政権にとって〝もろ刃の剣〟にもなる、真偽不明の怪情報の類い」(岸田派幹部)との見方が少なくない。

【点描・永田町】前回は⇒「改造」「解散」・・・飛び交う揣摩臆測

 「自民が連立政権に国民を加えることを検討している」──。そんな情報が飛び交ったのは、臨時国会で2022年度第2次補正予算が成立した2日夕。時事通信が「複数の自民関係者によると、国民の玉木雄一郎代表が年明けにも入閣する案が浮上」などとする観測記事を配信したのがきっかけだった。

 同記事は①自民、国民両党の幹部が水面下で接触、調整が付けば連立協議に入る②内閣支持率低迷で危機が続く岸田政権が、国民の連立参加で局面転換を狙う③首相や自民の麻生太郎副総裁も了承している──といった内容で、自民関係者の言葉として「今の政権はこれぐらいのカンフル剤を打たないと良くならない」、同党内の見方として「公明に配慮する場面が少なくなる」なども紹介した。

 しかし首相だけでなく、公明・山口那津男、国民・玉木の両代表もそろって「聞いたこともない話」と即座に全面否定。公明幹部が「わが党には全くメリットがない」と反発する一方、国民内でも異論が相次ぎ、同党を支援する連合は「組織が分裂する」と苦言を呈した。永田町でも「混迷政局に乗じた手の込んだガセネタ」(閣僚経験者)との見方が多いが、「火のないところに煙は立たない」(同)ため、与野党双方になお疑心暗鬼が消えない。

「玉木氏は将来、岸田派入り」とのうわさも

 今回の騒ぎは岸田政権の発足以来、与党寄りが際立つ国民の動きが原因だ。先の通常国会で22年度の当初予算と1次補正予算に、臨時国会では2次補正に賛成し、被害者救済新法についても早々に賛成を決めたあたりは「まさに与党そのもの」(日本維新の会幹部)と見える。国民は旧国民が旧立憲民主と合流する際、玉木氏を中心に合流不参加議員が20年9月に結党し、現在の所属議員は衆参各10人。昨秋の衆院選では公示前から3議席増の11議席を獲得したが、今年7月の参院選では改選数を維持できず、5議席に終わった「勢力も立ち位置も中途半端な政党」(立民幹部)だ。

 もともと玉木氏は、首相を支える宏池会(現岸田派)の中興の祖・故大平正芳元首相の「後継者」として政界入りを目指した経緯がある。岸田首相の懐刀である木原誠二官房副長官とは、東京大法学部・大蔵省(現財務省)入省の同期生で親しい間柄とされることもあり、岸田政権発足後は「玉木氏はいずれ自民入りし、岸田派に入会する」(閣僚経験者)とのうわさが流れたほどだ。一方で、こうした真偽不明の情報がまことしやかに流布されること自体が、政権危機の根深さを物語る。ただ、ここに来ての自民内での反岸田勢力を中心とした「岸田離れ」の広がりが、直ちに「岸田降ろし」につながる状況にないのも事実だ。それだけに〝辞任ドミノ〟に苦しみながらも何とか臨時国会を乗り切り、反転攻勢の糸口をつかんだかに見える首相にとって、政権弱体化を招きかねない国民の連立取り込みは「秘策どころか愚策」(同)とみる向きが多い。

(2022年12月26日掲載)

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