政治ジャーナリスト・泉 宏
サッカー・ワールドカップ(W杯)での日本代表の熱闘に列島が沸く中、師走を迎えた政局は混迷の度が深まるばかりだ。岸田文雄首相の側近閣僚の「辞任ドミノ」のあおりで、最優先課題の今年度第2次補正予算の成立は12月にずれ込んだ。これと並行し、続落する内閣支持率が複数の調査で「危険水域」に落ち込み、与党内から首相の「統治能力」への疑問が噴出。そうした中、永田町では「八方ふさがりの首相がイチかバチかの賭けとして、早期の衆院解散や内閣改造・自民党役員人事の断行を模索している」(同党幹部)との揣摩(しま)臆測が飛び交う状況となっている。
【点描・永田町】前回は⇒「統一選」にらむ維新に吹く〝逆風〟
これに対し首相は11月24日、年末年始の内閣・党人事について「全く考えていない」と否定し、「さまざまな政治課題に専念する」と語った。周辺も「首相はもともと解散など考えず、内閣・党人事にも慎重に対応し、当面はこつこつと実績を積み上げて支持率回復を待つというのが本音だ」(最側近)と強調。まことしやかに流布される「首相の賭け」についても、「求心力維持のための手練手管の類い」(同)と解説する。
しかし、首相を支える立場の自民執行部内に「このまま自滅の道をたどるより、臨時国会後に大幅な内閣・党人事で人心を一新し、その上で年明けの解散断行でイチかバチかの勝負に出るべきだ」との声があるのは事実だ。しかも「勝負のタイミング」について、内閣・党人事が「年末」「通常国会召集前」「来年度予算成立後」、衆院解散が「年末から年明け」「4月の統一地方選と同時」といった具体案が取り沙汰されており、与野党国会議員の間に「ひょっとしたら・・・」(立憲民主党の若手)との疑心暗鬼が広がる。
首相、弱音吐露も自信は失わず
もともと首相は、大方の予想を覆す形で8月のお盆前に内閣・党人事を断行した時点で、①次の人事は1年後の2023年夏②解散権は環境が整わない限り、24年9月の次期自民総裁選まで行使しない──との戦略を固めていたとされる。ただ「党内の反岸田勢力を取り込み、総理・総裁としての求心力を維持することによる政権運営の安定化」(岸田派幹部)がその大前提だっただけに、「臨時国会召集前後からの人事や政策を判断する際の迷走で、党内的にも『宰相の資質』が問われる事態は想定外」(同)となったことは間違いない。
首相自身もここに来て、自民党の麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、萩生田光一政調会長、公明党の山口那津男代表ら与党最高幹部と「密談」を繰り返す一方、反岸田勢力の旗頭とされる菅義偉前首相、二階俊博元幹事長への「協力要請」に腐心している。その中で、腹心である寺田稔氏の総務相更迭直後の11月21日夜、母校の早稲田大出身の国会議員らとの会合では「今はちょっと孤独で、つらいときもある」と弱音を吐露し、同席した森喜朗元首相から「首相は孤独な立場だ」と激励される一幕もあったという。