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〝先祖返り〟の立民新執行部【点描・永田町】

2022年09月12日

政治ジャーナリスト・泉 宏

 野党第1党の維持にも不安が増す立憲民主党が8月26日の両院議員総会で、泉健太代表を支える新執行部の人事を決定した。7月の参院選敗北を踏まえた態勢立て直しのための人事で、幹事長に岡田克也元副総理、政調会長に長妻昭元厚生労働相、国対委員長に安住淳元財務相を起用。代表代行は逢坂誠二氏を留任させ、幹事長だった西村智奈美氏との2人体制に。選対委員長には大串博志衆院議員を充てた。

【点描・永田町】前回の記事はこちら⇒「無策無敵」「決断実行」の選択ミス

 泉氏は総会で「体制強化に努めたい。政権との対決軸をより明確にする」と、岸田文雄内閣との対決姿勢を鮮明に打ち出す方針を表明。表向きは全会一致の体裁を整えたが、参院選の投開票から1カ月半余が経過しての新体制発足に、会場にはしらけムードが漂い、盛り上がりにも欠けていた。

 永田町では8月のお盆以降、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題での岸田内閣の悪戦苦闘と、それに絡む故安倍晋三元首相の「9・27国葬」の是非などに話題が集中。野党陣営も、参院選比例代表の得票で立民を上回った日本維新の会が実施した初の代表選(8月14日告示、同27日投開票)に注目が集まり、立民の存在感は薄れるばかりだった。最新の各種世論調査でも、岸田内閣と自民党の支持率が下落する中、立民の支持率は低迷したままで上向く気配がみえず、新体制発足にも「国民は誰も注目していない。このままでは次期衆院選で野党第 1党から転落しかねない」(若手)との危機感が同党を覆っている。

「昔の名前」では「明日はない」

 大方の予想を裏切る形でお盆前の内閣改造・自民党役員人事を断行した岸田首相は、党内実力者を要所に配置し、〝ポスト岸田〟をうかがう有力者も新体制に組み込んで「挙党態勢」の評価を得た。これも踏まえ、泉氏は党幹部に岡田氏ら重鎮を起用したが、政界での反応は「将来を担う人材の不在を露呈した」(自民幹部)と厳しい。

 岡田氏は新旧民主党と旧民進党で代表を務め、3年で挫折した旧民主党政権の中核を担った人物で、維新の馬場伸幸・新代表は「大失敗した方を幹事長に据えて何をしようとしているのか」とあからさまに批判。長妻、安住両氏も同政権の重要閣僚だっただけに「まさに先祖返りで、『昔の名前で出ています』と言われても仕方がない」とやゆする声が広がる。

 立民幹部によると、泉氏は弁の立つ重鎮の要職起用で政府・与党への追及姿勢を強めたい意向だ。ただ岡田、安住両氏の旧統一教会との関わりが判明し、「この問題などを国会論戦でどれだけ追及できるか」(若手)を疑問視する声も。野党第1党として閉会中審査や次期臨時国会で存在感を発揮できなければ「来春の統一地方選での党勢回復もおぼつかない」(同)とみる向きが多い。

 そもそも泉氏が参院選敗北でも責任を取らずに続投したのは「わずか7カ月余で代表を代えれば、選んだ議員も責任を問われる」からだ。このため泉氏は、党内に影響力を持つ岡田氏らに頼らざるを得なかったのが実態だが、昨秋の衆院選落選を受けて今回、参院比例トップで政界復帰を果たした辻元清美氏や、旧民進党代表を経験した蓮舫氏は中核人事から外れ、代表就任時に掲げた女性活躍も空文化。泉氏は政権交代に備え、ネクストキャビネット(次の内閣)設置を明言したが、有望な若手や女性によるフレッシュな顔触れは期待できないとの見方が多い。

 口さがない向きが「名作映画のタイトル『俺たちに明日はない』のようだ」と皮肉るように、新体制の前途は〝いばらの道〟となるのは間違いない。

(2022年9月12日掲載)

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