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首相が「8・10電撃人事」で大勝負【点描・永田町】

2022年08月29日

政治ジャーナリスト・泉 宏

 第2次岸田改造内閣が8月10日、発足した。永田町での大方の予想を裏切る岸田文雄首相の電撃人事。故安倍晋三元首相の「国葬」の是非に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)をめぐる問題が絡むなど、「党内調整は超難題」(自民党幹部)とみられていたが、結果的には岸田流人事のしたたかさが際立った。「国難突破」を掲げて人事に臨んだ首相は、内閣・党の「骨格」は維持する一方、党内反主流勢力から重鎮らを取り込むことで挙党態勢を構築。注目された安倍派への対応も、同派幹部をバランスよく要職に配して不満を吸収し、各派幹部も多くが「合格点」と評価した。

 安倍氏死去で自民党内の権力構図が一変する中、首相は今回の人事で各派閥や実力者への配慮を重視。菅義偉前首相を旗頭とする党内反主流勢力を巧みに懐柔する一方、「あるじなき安倍派」の内部対立を見透かした人事で同派を手玉に取ったあたりは、「まさに岸田流のしたたかな手法」(岸田派幹部)によるものだ。これを受け、与党内には「当面は首相が求心力を維持する」(公明党幹部)との見方が広がる。

 今回の人事は、一部側近だけと共有した極秘シナリオに沿って断行された。ただ、経過や結果を検証すれば「練りに練った岸田流」(自民長老)に見える。5日夕に首相が突然、秘かに党執行部に早期人事断行方針を伝えたことで始まった人事工作は、週末も含めた3日間の調整を経て9日夜にすべての人事を固め、10日夕には新体制発足という手際の良さ。党役員人事では麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長、高木毅国対委員長を再任する一方、総務会長には遠藤利明選対委員長を横滑りさせ、政調会長に萩生田光一経済産業相、選対委員長に森山裕総務会長代行を起用した。ポイントは萩生田、森山両氏の党4役就任で、萩生田氏は故安倍氏の最側近、森山氏は菅氏や二階俊博元幹事長の盟友だ。しかも麻生、茂木、森山3氏は派閥の領袖(りょうしゅう)で、「超重量級の挙党態勢」(岸田派幹部)でもある。

「9・27国葬」にたどり着けるか

 新内閣は林芳正外相、鈴木俊一財務相、松野博一官房長官らを留任させる一方、閣僚19人のうち14人を交代させる大幅改造に。ただ重要閣僚とされる厚生労働、防衛の両相には経験者を配し、再入閣も5人。初入閣の9人は、ほとんどが各派の推薦リストを踏まえた「党内バランス優先」(首相官邸筋)の人事となった。首相は新内閣発足後の記者会見で「有事に対応する『政策断行内閣』で、経験と実力を兼ね備えた閣僚を起用した」と胸を張った。閣僚の顔触れを見ると「特に目玉もなく、実務優先で地味だが、要所に首相の意図がにじむ人事」(自民長老)でもある。

 その一方で、「世界で最悪」とされる新型コロナウイルス「第7波」の感染爆発は簡単に収まる気配はなく、物価高騰も含めた批判拡大で、人事直後に各メディアが実施した世論調査では、内閣支持率が政権発足後最低となるケースが目立った。しかも国民が不安視する旧統一教会問題では、安倍派議員を軸とした自民党との〝癒着〟が「底なし沼の様相」(閣僚経験者)で、既に副大臣・政務官を含めた内閣全体の4割を超える議員に何らかの「関わり」が判明している。これを受け国民の間では、旧統一教会との密接な関わりが指摘された故安倍氏の「国葬」への反対論が拡大している。

 首相は「国葬外交の成功で『外交の岸田』のアピール」(側近)を狙っているとされるが、今後の野党の攻撃も含め、強まる反対論をかわして首尾よく「9・27国葬」にたどり着けるかは、なお予断を許さない状況だ。

(2022年8月29日掲載)

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