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パンダ、愛され続け半世紀 コロナ禍、多くの人癒やす

2022年05月01日12時00分

 ずんぐりむっくりで、垂れ目に見える丸顔が特徴のパンダ。今年10月には、初来日から半世紀の節目を迎える。新型コロナウイルスの流行が社会に暗い影を落とす中、愛くるしい姿に多くの人が癒やされている。その魅力を探ってみた。(時事通信社会部 今井直樹)

【写真特集】上野動物園のパンダ

高地に生息、難しい繁殖

 「本物だ」「こっち向いて」。2021年10月、日本最多の7頭が暮らすアドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)。3歳の彩浜(さいひん)が竹を食べると、歓声が響いた。家族4人で来園した小柴健ちゃん(2)=大阪府泉佐野市=は「ご飯を食べる姿が好き。大きくて、とってもかわいい」と満面の笑みだ。

 そもそも、パンダとはどんな生き物なのか。正式な名称は「ジャイアントパンダ」。食肉目クマ科に属し、中国南西部の標高1300~3500メートルの高地に生息する。中国政府の調査(15年公表)では野生の推定生息数は約1860頭で、世界では計約600頭が飼育されている。

 体が大きい、というイメージがあるパンダ。大人の体長は120~150センチで体重は85~150キロ。1歳くらいで竹を食べ始め、1歳半くらいで母親から離れる。寿命は15~20年ほどだが、飼育下では30年超生きた例もある。ただ、妊娠のチャンスは非常に少なく、一般的には2~5月の数日間しかない。繁殖が難しく、絶滅の恐れがあるとして希少動物を保護するワシントン条約で商業取引が原則禁止される。

 パンダの初来日は、今からちょうど50年前の1972年にさかのぼる。同年9月の日中国交正常化で来日が決まり、同10月28日には雄のカンカンと雌のランランが上野動物園(東京都台東区)に到着して飼育がスタートした。中国側から借りる形での来日は続き、現在は神戸市立王子動物園(1頭)を含め、3施設で計13頭が暮らす。5頭が暮らす上野動物園では今年1月、生後6カ月(当時)の双子のシャオシャオとレイレイの一般公開が始まり、抽選に当たった人たちがそのかわいさに歓声を上げた。

 白黒の赤ちゃん体形、座りながら器用に竹を食べるしぐさ、その愛くるしさ、描きやすさから世代を超えた人気を誇り、多くのCMやイメージキャラクターに採用される。見る人の数だけ魅力があるが、アドベンチャーワールドで飼育を10年以上担当する吉田倫子さん(35)のお薦めは「目」という。「甘いものが好きで、リンゴやニンジンなどのおやつが欲しい時は飼育員を見詰めて訴えてくる。ぜひ目にも注目して」と話す。

SNSで魅力発信

 「人寄せパンダ」という言葉が示す通り、絶大な集客効果と経済効果を持つパンダ。ただ、そんなパンダを抱える動物園も、新型コロナへの対応には苦慮した。パンダを見てもらおうにも、臨時休園などの対応を取らざるを得なかったからだ。そのため各地の飼育施設では、インターネット交流サイト(SNS)による魅力発信に力を入れた。

 上野動物園は20年12月末~昨年6月の臨時休園中、ツイッターで「#STAYHOMEでシャンシャン」のハッシュタグを付けるなどし、上野動物園生まれの女の子、シャンシャンの日常の姿をほぼ毎日投稿。教育普及課の大橋直哉課長(48)は「パンダは寝ている時間が長い。オンラインなら、竹を食べ、子育てする姿をいつでも、どこでも楽しめる」と話す。

 アドベンチャーワールドは、コロナ禍の20年11月に生まれた楓浜(ふうひん)の元気な姿をユーチューブで毎日配信する。「日々の成長が楽しめる」と好評という。広報担当の大本拓輝さん(24)は「来園が難しくても、パンダを入り口にいろんな動物に興味を持って」と訴える。神戸市立王子動物園は、心疾患と闘う高齢のタンタンの隠れた日常をツイッターで紹介。飼育展示係長の谷口祥介さん(39)は「検査を受け、苦い薬を頑張って飲む姿は来園しても見られない。治療を懸命に受ける姿も知って」と話す。

 新型コロナの流行が続く中、私たちに癒やしを与えてくれるパンダ。日本パンダ保護協会(東京都中央区)の土居利光会長(70)は「当初はかわいさや親近感が話題になったが、その後は固有の生態を持つ動物として認識されてきた」と指摘。「生息地が限られる希少なパンダが、環境問題や自然保護に関心を広げるきっかけになってくれれば」と期待を寄せている。

(2022年5月1日掲載)

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