愛されて35年 明かされた「ピーポくん」誕生の秘話【news深掘り】

2022年04月17日09時00分

 大きな目や耳がかわいい警視庁のシンボルマスコット「ピーポくん」。今でこそ珍しくない官公庁マスコットの先駆け的な存在は誕生から35年となった。その名は首都東京にとどまらず広まり、ある警視庁幹部は「47都道府県警のマスコットで最も成功した」と自負する。警察署や交番、パトカーに張られたステッカーなど、都内の多くの場所で見掛ける愛らしい人気者の誕生秘話を「生みの親」に聞いた。(時事通信社会部 片岡ひかる)

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  ピーポくんが誕生したのは、国鉄民営化でJR東日本などが発足した直後の1987年4月17日。発案者は当時の鎌倉節警視総監=故人=で、「警察は堅いというイメージがある。もっと身近な存在に感じてもらいたい」との思いが込もった制作計画は極秘で進められた。

  デザインは当時、広告制作会社に勤務していた武蔵野美術大教授の上原幸子さん(62)が担当した。東京電力の電力館(閉館)のマスコットキャラクター「ピピィ」や、鳥取県の「エコトリピー」などを手掛け、2009年4月から同大教授を務める。

 上原さんによると、当初、「日本固有の生物」とのテーマが与えられ、ニホンカモシカや日本犬、日本の子どもをモチーフに案を練っていたという。

 だが、途中でテーマが「架空の生物」に変更される。鎌倉警視総監らの意向だったというが、驚かなかったのだろうか。「デザイナーはクライアントの意向に従うものだし、そういうのはよくある流れ」と冷静に受け止めたという。

 上原さんは「いろいろな動物のかわいい部分」を寄せ集め、頭部に社会の動きを察知するためのアンテナを取り付けた。カラーはパトカーの赤色灯を連想させず、「パッと見て目立つ、親しみやすい色」。大きな耳は都民の声を幅広く聞くためのものだ。

 最終的に複数のデザインを提案したが、「描いた当初から一推しで、採用されそうな手応えを感じていた」といい、「(鎌倉)警視総監も見た際に『これだ!』と叫んだと聞いている」と振り返る。

 当時、警視庁の広報課長だった安藤隆春元警察庁長官(72)によると、警視庁内部には「警察の記章などをモチーフにしたオーソドックスなデザインがいいのではないか」との意見もあった。だが、重視したのは「斬新さとインパクト」。女性警察官や若手巡査部長で構成する委員会を発足させ、「革新的で、みんながかわいいと思うデザイン」を選んだという。

 名前を付けたのは安藤さんで、「子どもが発音しやすい『ぱぴぷぺぽ』を使いたい」という意見を取り入れ、英単語で人々を意味する「ピープル」と、警察を指す「ポリス」の頭文字を組み合わせた。「都民と警察の架け橋になってほしい」との気持ちを込めたといい、パトカーのサイレン音は関係ない。

 警視庁は広く世間に普及するよう、ぬいぐるみを学校の前で配布したり、少年漫画の懸賞にしたりするなどの「浸透作戦」を展開したほか、交番に置いて通行人の反応を観察するなど、都民に受け入れてもらうための試行錯誤を繰り返した。安藤さんは「世間に注目されるよう、妥協しなかった。広報課長としてのプレッシャーはすごかった」と語る。

  誕生翌年の88年には、家族もできた。まずお父さんとお母さん、妹、弟が登場。その後、おじいさんとおばあさんが増え、現在の7人家族になった。「愛称を付けてほしい」との要望も相次ぎ、89年、妹は「ピー子」、弟は「ピー太」と命名された。

 上原さんによると、最初は太ったピーポくんと痩せたピーポくんとの3人トリオや、女性警察官の彼女を登場させることも考えたが、国民的人気アニメ「サザエさん」のような家族を想定した案を出した。おじいさんとおばあさんが増えたのは、高齢者向け交通安全イベントなどでの活躍を期待した警視庁の要望だったという。

  あれから35年。「ピーポ ピーポ ピーポくん」と名前を連呼する歌詞で始まる歌もでき、いまや知名度は全国区と言われる。図柄を利用したTシャツが無断販売されたり、よく似たイラストを使った名刺が無断作成されたりした商標法違反事件は、人気の高まりが生んだ出来事だ。

 「生みの親」の2人に今の気持ちを聞いた。上原さんは「広報マスコットは作っては廃棄され、長生きできないものが多い。世代を超えて愛してもらっていることが一番うれしい」と喜び、「これからも愛してもらいたい」と願った。安藤さんは「子どものような存在。警察のイメージを刷新する大きな契機になったと思う。引き続きかわいがっていただき、さらに都民と警察の距離が近づくことを期待します」と語った。(2022年4月17日掲載)

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