会員限定記事会員限定記事

いよいよ始まる大谷翔平の2022年 どうなる「大谷ルール」「新球」

初の開幕投手、指名打者でも

 米大リーグは4月7日(日本時間8日)、いよいよ開幕を迎える。昨年12月に労使協定が失効して以降、オーナー側と選手会側の交渉は難航し、両者が合意した後に始まった春季キャンプは約1カ月遅れの3月中旬から。シーズン開幕も当初の予定より1週間遅れたが、例年通りの162試合を実施する。昨季のア・リーグ最優秀選手(MVP)で、初の開幕投手に指名されているエンゼルスの大谷翔平選手(27)は今年、どんな活躍を見せてくれるのだろうか。新ルールにより先発投手、指名打者(DH)の同時出場が可能となり、「リアル二刀流」での出場にも注目が集まる。(時事通信ロサンゼルス特派員 峯岸弘行)

◇ ◇ ◇

 アリゾナの強い日差しを浴び、投打でグラウンドに立ち続ける大谷の表情は、充実感に満ちているようだった。3月31日のブルワーズとのオープン戦(米アリゾナ州メリーベール)に先発投手兼1番指名打者で出場。「(オープン戦)最後の登板をしっかり、予定通りにこなせたのはまず一番よかった。スムーズにシーズンに入れるかなと思う」とうなずいた。

練習も試合も慌ただしく

 投打同時出場を前にした大谷は、慌ただしく動いていた。キャンプ地のアリゾナ州テンピで打撃練習をしてから、試合が行われる敵地に移動。開始10分前まではブルペンで投球練習を行った。試合が始まれば、一回表の先頭打者で打席に立ち、その裏は投手として腕を振った。

 四回2死後の第3打席で右前打。2番トラウトが凡退して攻守交代となると、三塁ベース経由で走ってベンチに戻り、グラブを持って、すぐにマウンドへ。その後はこの日最速タイの99マイル(約159キロ)の直球を投げ込み、球場をどよめかせた。

投げて打てる「大谷ルール」

 31日には、大リーグ機構と選手会から新ルールが正式に発表された。その中で注目されたのが、二刀流の選手に先発投手兼DHでの出場を可能とさせる項目。実際にシーズンを通じて活用する選手は大リーグでも大谷だけと言われ、「大谷ルール」と呼ばれる。

 例えば1番DHでスタメンに名を連ね、先発投手としてマウンドに上がれる。そして、降板後はDHのまま試合に出続けることが可能。昨年のオールスター戦で同様の特別ルールが適用され、先発した大谷は降板後もDHで試合に残り、打席に立った。今季からこのルールが採用されるため、大谷の打席の増加が見込まれる。

「取り返すチャンス」

 「より積極的に攻めていけると思う。(昨季までの)DHを解除する試合は、最低でも5~6回はしっかり投げないとチームとして厳しくなる。そういうプレッシャーはもちろんあった。まず一つ、そこがないというのが大きい」と説明。「たとえ自分が打たれても、その後の打席で取り返すチャンスがあるのは新鮮」と感じている。

 大リーグ機構と選手会がルール変更で合意したことを歓迎。「柔軟な対応をしてもらえている。すごいありがたいなという気持ちはあるし、今は僕しかいないけど、カジュアルな形での出場にもつながると思うので、それは全体で考えてもプラスが多いと思う」

アナウンスめぐり打ち合わせも

 投打同時出場という異例の状況に、場内アナウンスの担当者と球団職員の間では、試合直前に打ち合わせをする姿もあった。

 「打順を発表する時、どうやって呼べばいいんだ?」

 「『1番指名打者、大谷』から始まって9番まで発表して、最後に『先発投手、大谷』と言えばいいと思う」

 「大谷ルール」の導入によって、グラウンドの外でも変化が生まれている。

調整登板を2度に絞る

 例年より短いキャンプ、投打での出場が続くこと、などを考慮し、オープン戦での登板を予定の3度から2度に絞った。「特に短かったという印象は個人的にはないけど、それでもユニホームを着て投げるというのは、ちょっと違う」。その上で、「数をこなせなかったのはみんな一緒なので、特に気負うことなく、しっかり自分のパフォーマンスを出せるように調整したい」と前向きに考えている。

 3月21日のロイヤルズ戦、31日のブルワーズ戦に投げ、4月7日のアストロズとの開幕戦(アナハイム)に向かう。5年目で初めて任される開幕投手。「光栄なこと。そこを取るか取らないかによってシーズンの始めが、変わってくると思う」と強い責任感を持って臨む。

動く「新球」にも磨き

 現状に満足することなく、「新球」にも取り組んできた。3月21日の登板後、落ちる球について聞かれると、「スプリットは投げていない。チェンジアップも投げていない。自分でもよく分かっていない球なので」と苦笑。「スプリットとチェンジアップの中間のような球」と話した。

 31日の登板後には、その球がスプリットを動かすイメージだと明かした。「スプリットはこれまでと同じものもあるし、違うものもある」と言う。「新球」は昨季終盤から投げているそうで、「曲げるという意図はある。もちろん、そういうような球なので」。思い通りに操れるようになれば、大きな武器になりそうだ。

周囲もあきれるパワー健在

 春季キャンプでは、打者としての調整も順調だった。チームメートと行うフリー打撃で、周囲があきれるほどの飛距離の柵越えを連発し、パワーは健在。オープン戦では逆方向への大谷らしい一発もあり、チームからの期待、信頼は今年も高い。

 マドン監督はオープン戦で大谷を主に1番で使い、トラウト、レンドン、ウォルシュと続く強力打線を「気に入っている」と語る。大谷が先陣を切る打線が他球団の脅威となるのは間違いない。リードオフマンを務めることについて、大谷は「後ろにトラウト選手がいるので、その前に出るというのが、やらなければならない仕事。長打を打てるのが一番いいんだけど、四球でもいいのでランナー一塁になった状態でつないでいくのが大事かなと思う」と自身の役割について話す。

チームの顔、自覚も十分

 「大谷ルール」の影響で、今季は外野守備に就く機会は減りそうだが、「どうなるかはチームとしても分からない。早めにどんどん交代するなら、いけるという選択肢があるだけでまた違う。いつでもいける準備はしたい」。あらゆる形で貢献する覚悟だ。

 昨季は投手で23試合に先発し、9勝2敗、防御率3.18。打者では2割5分7厘、46本塁打、100打点。投打で優れた成績を残してア・リーグMVPに選出され、チームの顔に成長した。おのずと期待が高まり、本人も十分に自覚。「ある程度、計算されるレベルは去年のはじめより高くなってくると思うので、そこに応えたい。そういう思いは去年より強く思う。ハードルが高くなった分、そこに対応していけるよう頑張りたい」と意気込む。

 エンゼルスは昨季、77勝85敗と負け越し、ア・リーグ西地区4位に終わった。「プレーオフに行けるという自信は、みんな持っている。例年よりもみんな健康な状態でキャンプをやれていた。シーズンを通して、自分も含めけがなくしっかりプレーできるっていうのが一番大切なのかなと思う」。大谷が本領を発揮すれば、チームも上昇気流に乗りそうだ。

(2022年4月7日掲載)

◆スポーツストーリーズ 記事一覧

話題のニュース

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ