「○○君を励ます会」などと銘打って華やかに開かれる国会議員の政治資金パーティー。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて大規模なものは自粛の流れが続いていたが、飲食物を提供しないなどの対策を前提に開催の動きが戻りつつある。
ただ、パーティー券の主な購入者となる企業はコロナ禍で依然厳しい経営環境が続き、券を売りさばくのは一苦労のようだ。政治家の重要な収入源である政治資金パーティーとはどんなものか。ある自民党中堅の例を通じ、内情に迫った。(時事通信政治部 中司将史)
パー券相場は1枚2万円
政治資金パーティーは政治資金規正法8条の2で、政治団体が開く「対価を徴収して行われる催し物」と規定されている。パーティー券の販売収入から会場代や飲食代などの経費を差し引いた分が政治家側の「もうけ」となる。
規正法は企業・団体が議員個人に献金することを禁じているが、パーティーは「事業」として位置付けられ、パーティー券購入は企業・団体や外国人でも可能だ。
永田町のベテラン秘書によると、パーティー券の相場は1枚2万円となかなかのお値段だ。議員や秘書は日頃から付き合いのある企業や支援者を回るなどして、これを売りさばく。選挙はもちろん地元事務所の経費や秘書の人件費など、政治活動には何かとお金がかかる。政治家は、まとまった資金を調達するためパーティーを開くわけだ。
手土産はホテルカレー
「議員が登壇します。盛大な拍手でお出迎えください」。今月6日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニ。大宴会場「芙蓉」で開かれていたのは自民党岸田派(宏池会)に所属する盛山正仁衆院議員(比例代表近畿ブロック)の政治資金パーティーだ。
会場には長机と椅子がずらりと並べられ、約280人の来場者が席を埋めた。壇上にはスポットライトが注ぐ。
政治家のパーティーといえば、飲食代を極力抑える工夫として立食のビュッフェ形式とするのが主流だ。ただ、今回は感染対策のため飲食物は提供されず、全員が着席するセミナー形式の開催となった。
後援会長のあいさつに続き、岸田派の根本匠事務総長、細田博之衆院議長、金子恭之総務相ら駆け付けた国会議員が次々と登壇。党国対副委員長や衆院議院運営委員会与党筆頭理事を務める盛山氏の仕事ぶりや人柄をテンポよく語った。派閥会長の岸田文雄首相(党総裁)は出席しなかったものの、祝電が披露された。
その後、盛山氏本人が直近の活動などを報告し、全体で1時間ほどで終了。来場者にはニューオータニのビーフカレーとコーンクリームスープの詰め合わせが手土産として配られた。
経費に半額以上
こうしたパーティーでどの程度の利益が出るのだろうか。
使用する会場や開催方法によっても異なるようだが、盛山氏に尋ねると、具体的な金額は避けつつ「パー券収入の5割以上がホテルへの支払いで消えています」と明かした。飲食が伴わない分、利益率は上がるようにも思えるが、コロナ禍でホテル側が値上げしたという事情があり、「かえって高くついた」という。
案内状の印刷や郵送にも費用はかかる。さらに盛山氏のパーティーは感染リスクを考慮し、オンライン中継を併用した。その経費として数十万円。「だから手元にはあまり残りません」と渋い表情だ。
ノルマはつらいよ
議員個人の政治資金パーティーとは別に、自民党の各派閥も例年パーティーを開催している。14日には麻生派(志公会)が先陣を切って「志公会と語る夕べ」をやはりニューオータニで開き、岸田首相も駆け付けた。麻生派は政策集発表の場として年に1回催している。
派閥のパーティーは所属議員にとっては試練でもある。というのも、各派とも当選回数や閣僚経験の有無などに応じ、パーティー券の販売ノルマを課しているからだ。
岸田派の盛山氏は「毎回ぎりぎり。過去にはさばき切れなくて怒られたこともある」と苦笑いで明かす。ある麻生派議員の秘書は「売り切れなければ、こちらで負担しなければならないので大変だ」と話した。
ベテラン議員ともなると業界を抑え、そこで大量に売りさばく。多い人は数百万円分を売るという。
終わりなきパー券販売
ノルマがある一方、コロナのあおりで近年はパーティー券の売れ行きが不調という。盛山氏の場合、大きな打撃を受けている運輸や観光業界が主な支持基盤だ。「どこも青息吐息。赤字の企業はそうそう簡単には買えない」。
当然ながら、複数の議員から購入を依頼される企業・団体もある。1枚2万円という金額を踏まえれば、苦しい台所事情が想像できる。
高市早苗政調会長は2011年、所属していた清和政策研究会(当時町村派、現安倍派)を離脱した。これについて「パーティー券の販売が嫌で抜けたという話もある」と、先の永田町ベテラン秘書が教えてくれた。
コロナの影響で規模縮小を余儀なくされたとはいえ、20年の政治資金収支報告書を見ると、二階派や麻生派はパーティーで2億円以上の収入を得ている。
夏の参院選を控えて各派とも資金集めに動いており、5月にかけて開催ラッシュとなる。各議員の事務所は今ごろパーティー券の販売に追われているかもしれない。