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潜入!「しんぶん赤旗」編集局 共産党機関紙の知られざる実態に迫る【政界Web】

2022年02月11日

記者採用、条件は「入党」

 しんぶん赤旗。この名前を耳にすれば、政官界の関係者は一様に身構える。言わずと知れた共産党の機関紙だが、近年は安倍晋三元首相の後援会も関わった「桜を見る会」をめぐる問題や、菅義偉前首相が日本学術会議の会員候補の任命を拒否した問題などでスクープを連発し、存在感を示している。小木曽陽司(こぎそ・ようじ)編集局長(67)と山本豊彦(やまもと・とよひこ)日曜版編集長(59)に、知られざる実態を聞いた。(時事通信政治部 丸橋博之)

【図解】共産党党員数、機関紙「赤旗」読者数

 「何も隠すものはないからどうぞ」。柔和な山本氏の声に促されて恐る恐る足を踏み入れた。しんぶん赤旗の編集局があるのは、東京・千駄ケ谷の共産党本部に隣接する8階建てのビル。「アベ政治を許さない」「戦争法廃止、野党は共闘」といったポスターが貼られ、いささか雑然とした印象だ。

 局内ではちょうど、取材当日に行われた小池晃書記局長の代表質問を翌日の紙面でどう扱うかなどを協議する編集会議の真っ最中だった。

 創刊は1928年2月。当時は「赤旗(せっき)」の名称で月2回の刊行だった。題字を「しんぶん赤旗」に改めたのは97年4月。小木曽氏は「共産党の機関紙であるとともに、真実を求める国民共同の新聞という思いを込めた」と説明する。

 編集局には政治部、社会部、スポーツ部など計22の部署があり、本部管轄の記者は約300人。北京やワシントンなど海外5都市に特派員も置く。これとは別に、各都道府県にも記者が1~2人配置されており、地方版の編集作業などに携わっているという。

 赤旗の記者になる条件はただ一つ。党員であることだ。採用ホームページの応募資格は「日本共産党員」との記載のみ。小木曽氏は「資格も学歴も年齢も問わない」と話す。採用後は、党綱領やいわゆるマルクス主義(科学的社会主義)を学ぶ研修を受け、赤旗の記者としての第一歩が始まる。

 現在発行しているのは、日刊紙(月額3497円)と日曜版(同930円)、電子版(同3497円)の3種類で、部数は計約100万部という。日曜版はタブロイド版で、調査報道や企画記事が特徴だ。

ライバルは文春砲?

 「政党機関紙だが、うちの特徴は週刊文春にも負けないスクープ力だ」。小木曽、山本両氏は、あくまでも一般紙や週刊誌がライバルだと強調する。

 実際、しんぶん赤旗の活躍は目覚ましい。2020年に、桜を見る会の問題をめぐる報道で日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞を受賞。翌21年も、日本学術会議会員の任命拒否問題でJCJ賞に選ばれた。

 桜を見る会の問題をスクープできた理由について、山本氏は「安倍氏の前夜祭も含め、全て公開の場で起きたことで、各社ともある程度知っている話だったが、私たちは国政の私物化問題ではないかと捉えた」と指摘。「常に権力に対して問題点をきちんと批判する。そういう姿勢を取り続けることが大事だ」と力を込める。

 赤旗の取材は、全国各地の共産党所属の地方議員や支持者のネットワークが、重要な基盤になっているという。

 その紙面には、中央省庁の「機密書類」がたびたび掲載され、時の政権を揺さぶってきた。大臣秘書官を経験したある省庁幹部は「秘書官時代は赤旗を読んでいた。何かあったときに即時に対応できないからね」と振り返る。

 こうした話を向けると、山本氏は「省庁内に『共産党の秘密党員』がいると言う人がいるが、そんなことはあり得ない」と笑う。その一方で「政府内の心ある人がこれはどうしても許せない。共産党や赤旗だったら公にしてくれるのではと思って託してくれる」とも明かす。

赤旗の名、堅持し続ける

 赤旗は共産党の一機関だ。報道の中立性や政治的な公平性などが担保されているのか、疑問に感じる向きは根強い。しかも、小木曽氏は党の常任幹部会メンバーでもある。

 これに対し、小木曽氏は「商業メディアの方が広告主との関係などタブーが多いのではないか」と指摘。「むしろ、赤旗はものすごく自由度が高い新聞だ」と反論する。

 ただ、国民の間で「共産党」や「赤旗」という言葉に抵抗感を持つ層が一定程度いるのも事実だ。読者を増やすために名称を変える考えはないのか。両氏の答えは「NO」。小木曽氏は「間違ったことはしていない。この名前に誇りがある」と断言。山本氏も「この名前で信頼を勝ち得ている」と自信を示す。

 最後に、一般メディアの評価も尋ねた。山本氏は「プロの仕事は真実は何かを調べることだ。これをやらずに、各自の言い分を並べるだけではプロの仕事ではない」と手厳しい。小木曽氏も「権力から独立しなければいけない、真実を報道しなければいけないという、メディアとしての役割を果たしているのか」と疑問視。その上で「メディアにしっかりしてもらわないと、この国は本当に良くならない。そこは声を大にして叫びたい」と強調した。

(2022年2月11日掲載)

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