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陸上最優秀選手ワーホルムが東京五輪で樹立した驚異的世界新記録 ボルト氏も語った共通点とは?

本人も「間違い?」

 45秒94―。陸上競技のどの種目の記録か、ピンとくるだろうか。今夏の東京五輪男子400メートル障害決勝で、カルステン・ワーホルム(25)=ノルウェー=が樹立した世界新記録。自身が7月に29年ぶりに塗り替えたばかりの世界記録をさらに0秒74も短縮し、金メダルに輝いた。世界陸連が各種目の記録を得点化するスコアリングテーブルでは、男子100メートルの9秒62、1万メートルの25分50秒26、マラソンの2時間0分20秒に相当する驚異的なタイムだ。12月1日に世界陸連の今年の男子最優秀選手「アスリート・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたワーホルム。受賞後、オンラインによる合同取材に応じ、自身の記録や今後の目標について語った。(時事通信ロンドン特派員 青木貴紀)

◇ ◇ ◇

 ―東京五輪男子マラソン2連覇のエリウド・キプチョゲ(ケニア)、同棒高跳び世界記録保持者で五輪金メダルのアルマント・デュプランティス(スウェーデン)ら他の候補を抑えて初めて受賞しました。
 「間違いなく、かつてないほどレベルが高くなっています。特にオリンピックイヤーでもあった。その中で受賞できてとてもうれしいし、誇りに思います。世界最高の男子選手であることは何だかクールに感じます」

 ―五輪決勝はレースのどの時点で、勝つだけではなく世界記録を更新できると思いましたか。
 「最初に記録(45秒94)を見た時、『これは何かの間違いだろう』と思いました。フィニッシュラインを越える前は勝利が訪れるか分からなかった。ベンジャミン(米国)、ドスサントス(ブラジル)をはじめ他の選手が追いかけてきて、とても激しいレースだった。ゴールまでひたすら全力で戦いました」
※ベンジャミンは46秒17で銀、ドスサントスは46秒72で銅。

 ―来年もまた同じことが起きますか。
 「44秒? いやいや。私は常により良くなるために一生懸命努力をするが、限界を非常に高く押し上げたのでどんどん難しくなっています。それでも、私たちは常に新しい挑戦をしていきます」

全ての条件がかみ合った東京

 ―次の目標は何ですか。この世界記録を更新する自信はありますか。
 「世界記録を更新することは、私にとっても誰にとっても非常に難しいでしょう。この種目の全く新しいレベルです。自慢したいわけではありませんが。東京はあの日、全てが適切な場所でした。素晴らしい競技場、国、気候。私のフォームも素晴らしかった。そして、五輪だった。全ての星が私に向いていました。45秒94を出せてとてもラッキーでした」

 「ウサイン・ボルト氏(ジャマイカ)に会った時にもその話をしたんですけど、同じ意見でした。アジアには素晴らしいトラックがたくさんある。彼は北京が非常に高速トラックだったことを覚えていたし、私は東京だった。今後どうなるかは誰にも分かりませんが、記録というのはある時、返さなければなりません。そういうものなのです」
※ボルト氏は08年北京五輪で男子100メートルは9秒69、200メートルは19秒30と両種目で当時の世界記録を塗り替えて2冠。

 ―来年7月には米オレゴン州ユージンで世界選手権が開催されます。
 「前回の世界選手権で優勝し、もちろんタイトルを維持したいと思っていますが、おそらくこれまで以上に厳しいものになるでしょう。私のライバルたちは今、私の座を狙っています。ユージンで金メダルを目指して戦いたいのであれば、私はとても良い状態でなければなりません。他の選手たちは、おそらくこれまで以上にやる気になっているでしょうから」

 ―今後3年間は世界選手権2大会、五輪と世界大会が続く。5年後、10年後にまだ競技を続けていると思いますか。
 「明らかなことは、私は可能な限り走っているということです。自分の愛するものであり、やり方を知っているものです。私にとってビジネスにもなっているので問題ありません。このスポーツは何が起きるか分かりません。けがをしたり、モチベーションが下がったりするリスクは常にあります。しかし今は、そのようには感じていません。実際、私にはとても意欲があり、できる限り長く続けたいと思っています。5年後は走っている可能性が高いでしょう。10年後のことは分かりませんが、次の五輪があるので、常にモチベーションを保つことができます」

◇ ◇ ◇

 カルステン・ワーホルム(ノルウェー) 1996年2月28日生まれの25歳。10代の頃は混成種目が本職で、2015年欧州ジュニア選手権の十種競技で7764点をマークして2位。16年から400メートル障害をメインに転向し、同年のリオデジャネイロ五輪で準決勝進出。17年と19年の世界選手権連覇。16歳頃まで陸上と並行して続けていたサッカーは今でも大好き。

(2021年12月17日掲載)

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