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【今月の一冊】
2023年5月、新型コロナは5類扱いとなり、2020年春から社会を大きく変えたコロナ禍は一つの区切りを迎えた。しかし、コロナ禍の混乱がもたらした水商売への影響は壊滅的で、その回復が疑われるほどだ。本書はコロナ禍における水商売人、特にスナックでの奮闘を記録し、夜の街が果たしてきた役割や規制による社会への影響に触れつつ、営業規制という形で彼らの自由を抑制した国家・メディアを批評する。
まるでファンブックのように「熱い」本だ。
韓国出身のボーイズグループBTSの爆発的な人気を受け、彼らの活動が研究対象となることが増えている。既にBTSをテーマにした国際学会も開かれ、本書によると、それらをBTS学(BTSology)と呼ぶのだという。
安田峰俊は「突撃」と「青春」のルポライターである。『和僑』(2012年、角川書店。後に同名で文庫化)では、「2ちゃんねる」の書き込みを頼りに中国奥地の農村まで、現地に住むという日本人を探しに突撃する。
5年に1度の共産党大会を終え、習近平総書記(国家主席)の3期目政権が始動した中国。一党独裁の下で政権に都合の悪い歴史は葬り去られ、異論の封じ込めは近年さらに進んでいる。対外的にも覇権的な動きを強める中、各国は対中戦略の見直しを迫られている。日本も例外ではなく、超大国となった隣国の政権にどう向き合うべきか、その立ち位置が問われている。
人工妊娠中絶を主たるテーマにした一般書は、本書が多分初めてだろう。日本の中絶件数は、年間約14万5千件(2020年度)もあるが、ほとんどの経験者がそれを隠し、信頼できる医療情報も絶対的に不足している。
「誰も断らない」。このルポルタージュの表題は生活困窮者支援の理想の姿を示しているが、実際の支援現場では必ずしも実現されているとは言い難い。生活保護の申請に訪れた人を自治体が窓口で追い返すいわゆる「水際作戦」が疑われる事例は各地の民間支援団体からいまだに報告され続けている。
近年、台湾のソフトパワーが世界的に注目されている。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)では、ITを駆使した感染症対策を矢継ぎ早に講じ、抑え込みに成功したことは記憶に新しい。本書は、その台湾が2019年に、アジアで初めての同性婚法を実現するまでの長い道のりを記録したこん身の1冊だ。
本書の原題「A Libertarian Walks into a Bear」は、英語にあるbar joke(”A man walks into a bar and…”と続き、その後に様々な可笑しなことが起こるという冗談の定型文)のもじりではないかと思うが、そうでなくとも、それ自体が冗談みたいな題名である。
在日韓国人として歴史の記憶をたどる作家の姜信子さん、社会学者として震災後の東北で、もうひとつの社会を模索する山内明美さん。二人の女性が共に近代の闇を超える道を求め交わした往復書簡集である。
新型コロナウイルスのパンデミック下で急速に進んだデジタル社会化の「メディアリテラシー2.0」を示す待望のテキスト、それが坂本旬・山脇岳志編『メディアリテラシー 吟味思考を育む』である。
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