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【今月の映画】
1960年代の終盤といえば、大規模な野外音楽フェスティバルが次々と開催された時代。ベトナム戦争の泥沼化など混沌とした社会情勢を背景に、「愛と平和」を求める若者が音楽という絆によって結び付いた。中でも69年8月の「ウッドストック・フェスティバル」は米ニューヨーク州の農場に3日間で40万人以上の聴衆が集まったことで名高いが、その1カ月後、小ぶりながら「歴史的」と呼ぶにふさわしいコンサートがカナダで開かれている。
ビートルズが事実上の解散を迎えたのは1970年。半世紀が過ぎた今でも各種メディアが彼らの特集を頻繁に組むほど特別な存在であり続けるが、60年代末、負けじとヒットチャートをにぎわしたバンドがあった。クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)だ。全米一の人気バンドとなりながら、わずか4年ほどで解散。そんな彼らの姿を追ったフィルムが50年ぶりに発見され、ドキュメンタリー映画として構成された。
名門パリ・オペラ座バレエ団で主役を踊るバレリーナであるエリーズ(マリオン・バルボー)は、恋人の浮気を目撃したことで心乱れて『ラ・バヤデール』の舞台上で転倒し、大けがをしてしまう。医師からはバレエを踊れなくなる可能性を告げられ、キャリアを断たれてしまったと途方に暮れた矢先のこと。
これは究極のSDGs(持続可能な開発目標)映画だ!―作品を見終わった時、そう確信した。『ザ・フライ』(1986年)や『クラッシュ』(96年)など、数多くの問題作を世に問うてきたカナダの鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督の最新作。強烈な映像と奇想天外な展開に振り回されそうになるが、その根底にはクローネンバーグ監督の崇高な人間愛、そして地球愛がしっかり刻まれている。
芸と命の継承、息苦しい時代の深呼吸
芸能界の人気者をスターと呼ぶなら、昭和のある時期までは浪曲師がそれに当たる存在だったらしい。浪曲は歌と啖呵(たんか)と三味線で物語をする芸。当時の最新メディアだったレコードやラジオと相性が良く、絶大な人気を誇った。
「史上最高のギタリスト」とも称されるエリック・クラプトンの映画が新たに作られた。デビュー60周年に合わせた作品だが、キャリアを振り返るような形ではなく、1990年と91年に英国のロイヤル・アルバート・ホールで行われた公演から17曲を選んで編集。脂の乗り切った名演がそろい、まぶしい輝きを放っている。
凡人は、天才を一つの肩書に押し込めがちだ。しかしボウイの多才ぶりは、決して一つの言葉でまとめられるものではない。あえて言うなら「20世紀のレオナルド・ダ・ヴィンチ」とでもしておこうか。この映画を見れば、彼が単なるミュージシャンにもファッションリーダーにもとどまらず、ある種の哲学、宇宙観をもって時代を切り開き、誰にも手の届かないカリスマとなっていった理由が分かる。
1959年7月17日、ビリー・ホリデイはわずか44年の短い生涯を閉じた。ジャズ史上最高といわれる女性シンガー。彼女はなぜそう呼ばれるのか。そしてあまりにも早く命が燃え尽きた理由は。ニューヨーク・ブロードウェーの大スター、オードラ・マクドナルドがビリーを演じ、その生涯を表現した舞台の様子がスクリーンで上映される。
陳腐な表現であることは承知の上だが、「大人のための純愛映画」だ。主人公は、不眠症を抱える生真面目な刑事と登山中の事故で夫を亡くした女の二人。刑事は夫の死に妻が関与しているのではと疑うが、女の毅然(きぜん)とした姿勢と真っすぐな視線に惹かれていく。
親友だと思っていた飲み仲間から突然拒絶された男の絶望―。孤島という小さなコミュニティーで起きたささいな「仲たがい」は、折り合いを見つけられずエスカレートしていく。出口のないいさかいの果てにたどり着いた地平とは?
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