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特集
イラク戦争開戦20年
インタビューに応じるアブドル・カアブ駐日イラク大使=17日、東京都渋谷区
イラク戦争から20年が過ぎ、戦禍と混乱で悪化したイラクの治安情勢は落ち着きを取り戻しつつある。だが、荒廃した経済の復興と民主化は道半ば。イラクのアブドル・カアブ駐日大使は時事通信とのインタビューで、日本の支援に感謝しつつ「日本からの直接投資が必要だ」と訴えた。主なやりとりは次の通り。
祖国での思い出を語るイラク難民のカラールさん=14日、カイロ
【カイロ時事】2003年のイラク戦争から20年が過ぎた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、イラクを逃れた難民は世界で約35万人に上る。「戦争がなかったら、人生はどうなっていただろう」。自問したまま、多くは今も帰国を果たせていない。
米軍によって倒されるフセイン元イラク大統領の像=2003年4月、バグダッド(AFP時事)
【カイロ時事】米国が主導した2003年のイラク戦争開始から、20日で20年になる。フセイン独裁政権が崩壊し、イラクは民主化へ向かったが、政情は今も不安定だ。反米闘争や宗派対立、過激派台頭などで悪化した治安も再建は遠く、イラクはなお秩序を立て直す途上にある。
2003年3月19日、ホワイトハウスで国民向け演説を行い、イラク戦争開戦を発表するブッシュ(子)米大統領(当時)(AFP時事)
【ワシントン時事】米国主導のイラク開戦から20年。「中東の民主化」を掲げた介入は泥沼化し、米国が中東への軍事的関与を後退させる結果となった。間隙(かんげき)を突いた中国が影響力を増し、中東は米中競争の「舞台の一つ」(米専門家)になりつつある。米国は安全保障面だけではない新たな関係の構築を迫られている。
イラクのスダニ首相=13日、バグダッド(AFP時事)
【カイロ時事】イラクでは2003年の戦争後、米国主導でもたらされた民主主義体制の下、汚職文化が根付いた。スダニ首相は昨年10月の就任に先立つ演説で「生活のあらゆる面に影響する汚職のまん延は、新型コロナウイルスより致命的だ」と強調。しかし、国民の政治不信は深く、汚職撲滅への期待は低い。
国連安全保障理事会で発言するドビルパン仏外相(右)=2003年2月5日、米ニューヨーク(AFP時事)
【パリ時事】欧州はイラク戦争への対応が二つに割れた。英国やポーランドが早々と参戦を決めた一方、フランスとドイツは断固反対し、西側陣営に深刻な亀裂が生じた。関係修復に長い時間はかからなかったものの、軍事行動に消極的な仏独の姿勢は、20年たった今も基本的に変わっていないという見方もある。
オンラインでインタビューに応じる米シンクタンク「大西洋評議会」のトーマス・ウォーリック非常勤上級研究員=16日
米シンクタンク「大西洋評議会」のトーマス・ウォーリック非常勤上級研究員の話 イラク戦争は、侵攻開始後の出来事と戦闘終了後のことを分けて評価する必要がある。軍事作戦は成功だった。至らない部分があったのは戦後処理だ。
2003年8月29日、パリのエリゼ宮で演説するシラク仏大統領(AFP時事)
シンクタンク「フランス国際関係研究所(IFRI)」のマルク・エケル氏の話 フランスは「米国の最も古い同盟国」と言われるが、ドゴール仏政権時代は東西冷戦で西側に属しつつも、米国と完全に足並みをそろえることは拒否した。フランスは1960年に核保有国となり、66年には北大西洋条約機構(NATO)の「統合軍事機構」から脱退し…
バグダッドで警戒に当たる米兵=2003年6月(EPA時事)
【ワシントン時事】米上院は29日、イラクとの開戦を認めた過去の決議を撤廃する法案を賛成多数で可決した。成立すれば、2003年のイラク戦争から20年の節目に正式に区切りを迎えることになる。
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