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【江上剛コラム】作家・江上剛
思い起こせば、私がかつて勤務していた銀行業界も談合の巣窟だった。今ではあり得ないことだが、預金金利、各種手数料、新商品開発、果ては行員の給料までありとあらゆることを談合、すなわち仲間内で決めていた。かつて銀行は「護送船団方式」といわれ、大蔵省銀行局の下部組織のようなものだった。公定歩合はもちろん、ありとあらゆることを銀行局にお伺いを立て、その指示に従っていた。
今、私たちはインフレにおびえている。特に日本は、給料が増えないから、他国より深刻かもしれない。給料を増やせと政府は、大きな声で経済界に叫んでいるが、給料が上がるということは人件費、コストが上がるということだから、もっとインフレになるに違いない。人々の不満はどこに行くのだろうか。
個人的に残念に思うのは、稲盛さんの評価が想像していたほど高くないのではないかということだ。確かに経済紙や経済雑誌などでは特集も組まれているが、私的な基準で言えば日本を救ったくらいの偉大な経営者であるから、もう少し政府から弔意を示されてもいいような気がする。もちろん、これは私の誤解かもしれない。
乗客数減少により、各地で廃線が進んでいたところに2020年に最悪の事態が発生した。新型コロナウイルスのパンデミックである。新型コロナは人々から移動の自由を奪ってしまった。国内外を問わず人々は移動を制限され、海外旅行や国内旅行は激減してしまった。
1989年当時、時価総額の世界トップ60のうち、日本企業が32社も占め、圧倒的である。米国は14社である。それが2022年になると、トップ60に入る日本企業は1社(トヨタ自動車が31位)のみとなり、米国が34社を占めるに至る。完全な大逆転である。
永守氏、柳井氏、鈴木氏は「カリスマ」と呼ばれる経営者である。特集はカリスマ経営者を次のように批判する。「カリスマと呼ばれる経営者は、必ずジレンマに陥る。俺の会社がもっているのは、俺の圧倒的な『個』の力のおかげだ。他の奴なんて危なっかしくて任せられない。だから辞められない」。そのため、彼らはやがて必ず来る「個」の終わりを受け入れられない。そしていつしか「老害」と呼ばれるようになると…。
ある時、福澤桃介は電力の鬼と呼ばれた松永安左エ門から社員のリストラの相談を受けた。松永は会社再建のために社員のクビ切りをしたいのである。その相談だった。「クビ切りはしない方がいい。しかし、どうしてもせざるを得ないのなら、優秀な社員のクビを切れ」。桃介は言った。「優秀な社員のクビを切ったら会社がもたない」。松永は桃介の意表をつくアドバイスに戸惑った。
ある支店で、業績の上がらない部下を副支店長が机に座らせた。膝の下にはそろばん。彼の周りを支店の営業マンが囲んでいる。そろばんの珠が膝に食い込んで痛がる彼の頭を、副支店長が手に持ったそろばんでぶっ叩いた。そろばんが壊れ、珠が床に飛び散る。彼の頭からは血が噴き出した。副支店長は、彼に「そろばんの珠を拾え!」と命じた。彼は、その後、完全に精神を病んでしまった。
なかなかドイツとの戦いに参戦しなかった米国大統領のルーズベルトは、日本が真珠湾攻撃をした結果、チャーチルに「いまや、われわれは同じ船に乗ったわけだ」と電話する。この電話でチャーチルは戦争に勝ったと確信し「ヒトラーの運命は決まったのだ。ムッソリーニの運命も決まったのだ」と喜びを爆発させる。
国際情勢はきな臭い。ロシアがウクライナへ侵攻した。中国と台湾の関係も不穏だ。西側世界の批判を斟酌しない中国が、ロシアの動向次第では、台湾侵攻を開始するかもしれない。こうなると、その機に乗じて、北朝鮮が38度線を破って、南側の韓国へ侵攻するかもしれない。まるで世界は、第3次世界大戦の様相を呈している。
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