岩間の元湯から先は、整備された林道を外れ、山の斜面に一人がようやく通れるほどの幅しかない登山道を進みます。噴泉塔は、そう簡単に行くことのできない「秘境」にあるのです。進むにつれて道はどんどん険しくなり、山歩きに慣れたべにこさんもへばるほどでした。
山道は途中まで登りでしたが、噴泉塔は谷底の川のそばにありますので、峠を越えると、急な下りの道になります。標高差で100メートル以上を下ると、谷川の水の音が聞こえ、温泉の硫黄臭がしてきました。べにこさんはこのにおいをかぐと、急に元気になります。「ふろ~、ふろ~」とうわごとのようにつぶやきながら、ガイド役の松本さん、夏至さんが切り開いてくれる道を一気に下りました。
いよいよ噴泉塔と対面です。噴泉塔は谷川の河原と山の斜面の境界線に位置していました。湧出する温泉の成分が固化して、噴泉塔の表面は鮮やかな赤、グリーンやオレンジから白までが混じり合った不思議な色合いをしています。べにこさんは「ドレープ(ひだのある洋服のたるみ)のよう」と女性らしい表現をしましたが、幻想的な景観であることは間違いありません。噴泉塔は長い年月をかけて育ってきたものだけに、まるで生き物のように次々と表情を変えていきます。
噴泉塔からは、こんこんとお湯が湧き出しています。べにこさんが持参の温度計で測ると、湯温は81度とかなり高めでした。PH値は7.4と、ほぼ中性です。
噴泉塔から湧出したお湯は、そのまま谷川へ流れ込んでいます。入浴できる湯壺はなく、お湯に入りたければ、自分で湯壺を掘るしかありません。しかも、原泉はかなり高温ですから、そのまま入るのはちょっと無理のようです。さて、べにこさんはどうするのでしょう。
べにこさんは、噴泉塔から流れ出るお湯を追って、谷川沿いに少し下ってみました。すると、谷川の水際のくぼみに、温泉と水が混ざり合って、ちょうど適温になっている場所がありました。
実はべにこさん、山奥の原泉の場合、湯壺に漬からなくても、掛け湯できる状況ができれば、「入浴した」と考えることにしています。そこで、今回も河原でタオル着に着替えると、くぼみに座って、少しぬるめのお湯を洗面器にくんで、全身に掛け湯をして、入浴達成です。周囲は絶壁、天は高く、開放感は抜群の状況に、べにこさんの口からはため息が漏れます。頑張って山道を上り下りした達成感を、十分に味わえる旅になりました。
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