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「時間」で切る中田日本のW杯 女子バレー

五輪なら手遅れだった修正

 バレーボールのワールドカップ女子大会(9月14~29日)の日本は、6勝5敗の12チーム中5位で大会を終えた。世界との差を痛感させられつつ、終盤の3連戦で得たものもあった東京五輪前年の世界大会。中田久美監督は、東京五輪でメダルを狙える状態を100としたチームづくりの進捗度を「68%」と表現した。五輪まで300日を切り、その差を詰めることはできるのか。「時間」をキーワードに考えてみる。

 追い詰められた状態から立ち直ったことは、収穫だった。石井優希(久光製薬)は「今までと比べても、タフに戦えたと思います。負けて心も折れかけたけど、しっかりやることはやれたし、成長できたシーズンでした」と話す。石井自身についてのコメントだが、チーム全体にも当てはまる。

 メダルを目指して臨みながら、序盤から大苦戦。第2戦でロシアに2-1から逆転負けすると、翌日の韓国戦にも引きずった。初の外国人監督の下で、エース金軟景に頼らないバレーを目指す相手に強打を浴びて完敗。その後も格下に勝って連敗を止めても、女王中国や米国、ブラジルに屈し、メダルの可能性は第8戦の時点で消えていた。

 どん底脱出のきっかけをつかんだのは、第9戦のセルビア戦だった。相手は昨秋の世界選手権優勝チームとは違う顔ぶれだったが、こうすれば自分たちのバレーの流れが良くなるものが見えた。続く2試合もそのリズムで勝って3連勝。相手がベストの状態ではなかったとはいえ、自陣内でパスやトスの修正ができて、選手たちの顔に明るさが戻った。

 就任以来「心は折れるもの。そこからどう立ち直るか」と言ってきた中田監督は、「大会中、切れそうな、崩れそうな場面でもみんな下を向かずにチャレンジしてくれたことは大きい」と、選手の復元力を心強く思ったようだ。

 ただ、セッターの佐藤美弥(日立)が言うように「もっと早く修正を効かせて、最後の3連戦のようなバレーが最低限できていれば」との思いは、みんなが同じだった。

 2012年ロンドン五輪は、1次リーグでロシアとイタリアに負け、3勝2敗のA組3位でベスト8入り。準々決勝で中国に3-2で勝ち、準決勝でブラジルにストレート負けして3位決定戦で韓国に勝っている。通算5勝3敗で同格以上の相手には2勝3敗。それでも銅メダルを取れたのは、中国戦と韓国戦に勝てたから。今大会のように修正が9戦目までかかったのでは、立ち直る前に終わってしまう。

 東京でも、つまずいた時の修正までの時間が大きなカギになるが、見方を変えると、修正が早ければ五輪ではロンドンのようなことが起きる。バレーに限らず多くの競技は、大会のシステムだけ見れば、単一の世界大会より五輪の方がメダルに届きやすいからだ。

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