会員限定記事会員限定記事

日米頂上決戦第6戦をめぐるお話

歴史に残る逆転劇

 2011年の米大リーグ王者を決めるワールドシリーズの第6戦は、すさまじい死闘になった。米大リーグ史上最高の試合と評した解説者もいたほどだ。

 球団創設51年目で初の王座を目指すレンジャーズが3勝2敗と王手をかけて敵地セントルイスに乗り込み、7回を終えて7-4とリードした。

 しかし、本拠地で戦うカージナルスがここから驚異的な粘りを発揮する。8回に1点を返すと、2点を追う9回2死一、二塁、絶体絶命の状況から、伏兵のデービッド・フリースが右翼フェンスを直撃する三塁打を放ち、2者を迎え入れて同点に持ち込んだ。

 だが、一度は気落ちしたであろうレンジャーズに延長10回表、主砲ジョシュ・ハミルトンの2ラン本塁打が飛び出す。9回2死からの同点劇で盛り上がっていた球場が、再び沈黙してしまった。さすがに、これで決着か。カージナルスのファンも、多くがそう観念したことだろう。

 ところが、またまた「奇跡」が起きた。10回裏、カージナルスは内野ゴロの間に1点差とすると、2死から4番ランス・バークマンがしぶとく中前に落とし、試合を振り出しに戻したのである。負ければ相手の優勝が決まる状況で、いずれも2点を追う9、10回に2死から追いつく。勝敗は最後の最後まで分からないという真剣勝負の醍醐味を、ワールドシリーズの大舞台で世界中の野球ファンにアピールした。

 悲願の初優勝まであと1死と迫りながら、2度までもチャンスを逃したレンジャーズの精神的なダメージは、あまりに大きいものだったろう。11回裏、9回に起死回生の2点三塁打を放ったフリースが、中堅バックスクリーン前の芝生にサヨナラ弾を打ち込み、カージナルスが3勝3敗のタイに持ち込んだ。

 ワールドシリーズの試合の9、10回に、いずれも2点差を追いついたのは今回のカージナルスが初めて。8、9、10、11回に連続得点を記録したのも、これが初めてのケースだった。崖っぷちの状況で、「史上初」の大逆転劇が演じられたわけだ。この日の試合の観衆は、孫子の代にまで自慢できる死闘の目撃者となった。

 レンジャーズ 11011030020=9
 カージナルス 20010101221X=10
 (延長11回)

話題のニュース

会員限定

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ